rinna/Japanese GPT-1B によるテキスト生成 Colab プログラム
【概要】rinnaの日本語GPT-1Bモデルを使用した自動テキスト生成プログラムの解説。入力文の続きを自動生成し、top_kやtop_pなどのパラメータで生成の多様性を制御できる。Google Colabで実行可能で、実験計画から結果検証までの研究プロセスを学べる実践的な教材。
Colab のページ(ソースコードと説明): https://colab.research.google.com/drive/1sn1FccLOSJ8JMqNvZZiIvMdUjzho-y0b?usp=sharing
【目次】
プログラム利用ガイド
1. このプログラムの利用シーン
日本語の文章を入力すると、その続きを自動生成するプログラムである。文章作成の支援、創作活動、言語モデルの動作確認などに利用できる。
2. 主な機能
- 日本語テキストの自動生成
入力文の続きを自動的に生成する。
- 生成パラメータの制御
トップKサンプリング(top_k=500)とトップPサンプリング(top_p=0.95)により、生成されるテキストの多様性を制御する。
- 固定長出力
常に100トークンのテキストを生成する。
3. 基本的な使い方
- Colab のページを開く
Colab のページ(ソースコードと説明): https://colab.research.google.com/drive/1sn1FccLOSJ8JMqNvZZiIvMdUjzho-y0b?usp=sharing
- セルを実行する
モデルが自動的にダウンロードされ、指定した入力文の続きが生成される。
- 入力文の変更
text変数の値を変更することで、任意の入力文に対する続きを生成できる。
- 結果の確認
生成されたテキストは、入力文を含む完全な文章として出力される。
4. 便利な機能
- 自動モデルダウンロード
初回実行時にモデルが自動的にダウンロードされ、2回目以降はキャッシュから読み込まれる。
プログラムの説明
概要
このプログラムは、rinnaの日本語GPT-1Bモデルを使用した自動テキスト生成プログラムである。入力文の続きを自動生成する[1]。
主要技術
Transformersライブラリ(Hugging Face)
Hugging Faceが開発したオープンソースのライブラリである[2]。事前学習済みモデルを簡単に利用できるようにし、自然言語処理タスクに対応する統一的なAPIを提供する。PyTorchやTensorFlowと統合され、100万以上の事前学習済みモデルを利用できる。
GPT(Generative Pre-trained Transformer)
Transformerアーキテクチャに基づく自己回帰型言語モデルである[4]。大規模なテキストデータで事前学習を行い、入力文脈から次のトークンを予測することでテキストを生成する。
技術的特徴
- トップKサンプリング
各ステップで確率の高い上位K個のトークンから次のトークンを選択する手法である。本プログラムではK=500に設定されている。
- トップPサンプリング(Nucleus Sampling)
累積確率がP(本プログラムではp=0.95)に達する最小のトークン集合から次のトークンを選択する手法である[3]。トップKサンプリングと併用することで、文脈に応じた動的なトークン選択を実現する。
- 確率的テキスト生成
do_sample=Trueにより、決定論的な生成ではなく確率分布に基づくサンプリングを行う。これによりテキスト生成に多様性が生まれる。
- 勾配計算の無効化
torch.no_grad()コンテキストを使用し、推論時の勾配計算を無効化してメモリ使用量を削減する。
実装の特色
- 固定長生成
max_lengthとmin_lengthを100に設定し、常に100トークンのテキストを生成する。
- 特殊トークン制御
pad_token_id(パディング)、bos_token_id(文頭)、eos_token_id(文末)、bad_words_ids(未知語)を明示的に指定し、生成品質を制御する。
参考文献
[1] Sawada, K., Zhao, T., Shing, M., Mitsui, K., Kaga, A., Hono, Y., Wakatsuki, T., & Mitsuda, K. (2024). Release of Pre-Trained Models for the Japanese Language. In Proceedings of the 2024 Joint International Conference on Computational Linguistics, Language Resources and Evaluation (LREC-COLING 2024) (pp. 13898-13905). https://aclanthology.org/2024.lrec-main.1213
[2] Wolf, T., et al. (2020). HuggingFace's Transformers: State-of-the-art Natural Language Processing. arXiv:1910.03771. https://arxiv.org/abs/1910.03771
[3] Holtzman, A., Buys, J., Du, L., Forbes, M., & Choi, Y. (2020). The Curious Case of Neural Text Degeneration. In ICLR 2020.
[4] Radford, A., Narasimhan, K., Salimans, T., & Sutskever, I. (2018). Improving Language Understanding by Generative Pre-Training. OpenAI. https://cdn.openai.com/research-covers/language-unsupervised/language_understanding_paper.pdf
実験・研究スキルの基礎:Google Colabで学ぶテキスト生成実験
1. 実験・研究のスキル構成要素
実験や研究を行うには、以下の5つの構成要素を理解する必要がある。
1.1 実験用データ
このプログラムでは入力テキスト(プロンプト)が実験用データである。入力テキストを起点として、その内容や長さが生成結果に影響を与える。
1.2 実験計画
何を明らかにするために実験を行うかを決める。
計画例:
- top_k値が生成テキストの多様性に与える影響を確認する
- top_p値が生成テキストの品質と多様性のバランスに与える影響を確認する
- 同じ入力に対して複数回生成を行い、再現性と変動を調べる
- 入力テキストの長さや内容が生成結果に与える影響を探る
- 生成長(max_length)が文章の完結性に与える影響を確認する
- 異なるパラメータ設定で、より自然で一貫性のある文章を生成する条件を見つける
1.3 プログラム
実験を実施するためのツールである。このプログラムはrinnaの日本語GPT-1BモデルとHugging Face Transformersライブラリを使用している。
- プログラムの機能を理解して活用することが基本である
- 基本となるプログラムを出発点として、将来、様々な機能を自分で追加することができる
1.4 プログラムの機能
このプログラムは複数のパラメータでテキスト生成を制御する。
入力パラメータ:
- text:生成の起点となる入力テキスト
- max_length / min_length:生成するトークン数(この例では100に固定)
- do_sample:確率的サンプリングの有効化(True/False)
- top_k:各ステップで考慮する上位候補数(この例では500)
- top_p:累積確率の閾値(この例では0.95)
出力情報:
- 生成されたテキスト(入力テキストを含む完全な文章)
実験における変更可能な要素:
- 入力テキストの内容と長さ
- top_k値(例:10、50、100、500)
- top_p値(例:0.5、0.7、0.9、0.95、1.0)
- 生成長(max_length)
- 同一条件での複数回実行
1.5 検証(結果の確認と考察)
プログラムの実行結果を観察し、パラメータの影響を考察する。
基本認識:
- パラメータを変えると結果が変わる。その変化を観察することが実験である
- 「良い結果」「悪い結果」は目的によって異なる
- 確率的生成のため、同じパラメータでも毎回異なる結果が得られる
観察のポイント:
- 生成されたテキストは自然な日本語になっているか
- 入力テキストとの文脈的な一貫性は保たれているか
- 文法的な誤りや不自然な表現はないか
- 同じ入力で複数回生成した場合、どの程度多様な結果が得られるか
- 生成されたテキストは意味的に完結しているか
- パラメータを変えることで、多様性と品質のバランスはどう変化するか
2. 間違いの原因と対処方法
2.1 プログラムのミス(人為的エラー)
モデルのダウンロードに時間がかかる
- 原因:初回実行時にrinna/japanese-gpt-1bモデルをダウンロードしている
- 対処方法:これは正常な動作である。ダウンロードが完了するまで待つ(数分程度)
2.2 期待と異なる結果が出る場合
生成されたテキストが不自然または意味不明
- 原因:top_k値が大きすぎる、またはtop_p値が1.0に近すぎる
- 対処方法:top_k=50程度、top_p=0.9程度に設定して再実行する。これにより低確率で不自然な単語が選択されにくくなる
生成されたテキストが毎回ほぼ同じ内容になる
- 原因:top_k値が小さすぎる、またはtop_p値が低すぎる
- 対処方法:top_k=500程度、top_p=0.95程度に設定する。これにより多様な単語を選択できるようになる
生成されたテキストが入力と全く関係ない内容になる
- 原因:入力テキストが短すぎる、またはモデルが文脈を捉えきれていない
- 対処方法:入力テキストをより具体的で長い文章にする。複数回生成して傾向を確認する
文章が途中で終わっている
- 原因:max_lengthの設定値に到達したため
- 対処方法:これは正常な動作である。max_lengthの値を150や200に増やすことで、より長い文章を生成できる
同じ単語やフレーズが繰り返される
- 原因:言語モデルの特性による反復生成
- 対処方法:これは言語モデルの既知の問題である。top_p値を少し下げる(例:0.9)ことで改善される場合がある
3. 実験レポートのサンプル
top_kパラメータが生成テキストの多様性に与える影響
実験目的:
top_kパラメータの値を変化させることで、生成されるテキストの多様性と品質がどのように変化するかを明らかにする。
実験計画:
top_p=0.95、max_length=100に固定し、top_k値を変化させて同じ入力テキストに対する生成を行う。各設定で5回ずつ生成し、多様性と品質を評価する。
実験方法:
入力テキスト「人工知能の授業を受けました。人工知能の基礎は」を使用し、プログラムを実行する。以下の基準で評価する:
- 多様性:5回の生成で異なる内容がどの程度得られるか
- 自然性:生成されたテキストが自然な日本語として読めるか
- 一貫性:入力テキストとの文脈的つながりが保たれているか
実験結果:
| top_k値 | 多様性(異なるパターン数/5回) | 自然性(平均) | 一貫性(平均) | 総合評価 |
|---|---|---|---|---|
| xxx | xxx | xxx | xxx | xxx |
| xxx | xxx | xxx | xxx | xxx |
| xxx | xxx | xxx | xxx | xxx |
| xxx | xxx | xxx | xxx | xxx |
考察:
- (例文)top_k=xxxでは、生成されるテキストがほぼ同じパターンに収束した。自然性は高いが、多様性が著しく欠けていた
- (例文)top_k=xxxでは、適度な多様性を保ちながら自然で一貫性のあるテキストが生成された。実用的な設定として最も優れていると考えられる
- (例文)top_k=xxx以上では、多様性は向上したが、文脈に合わない単語の選択や不自然な表現が増加した
- (例文)top_k=xxxでは、最も多様な結果が得られたが、意味の通らない文や文法的に誤った表現が頻繁に現れた
- (例文)top_k値を大きくするほど多様性は増すが、同時に品質が低下するというトレードオフの関係が確認できた
結論:
(例文)本実験により、top_kパラメータが生成テキストの多様性と品質に大きな影響を与えることが確認できた。top_k=xxx程度が、多様性と品質のバランスが最も優れており、実用的な設定であると結論づけられる。創造的で予測不可能な文章生成を目指す場合はtop_k=xxx程度、安定した品質を重視する場合はtop_k=xxxからxxx程度が適切である。応用目的に応じてパラメータを調整する必要性が明らかになった。