OpenALPR 英語ナンバープレート検出・認識 Colab プログラムによる実験・研究スキルの基礎
【概要】このプログラムは、OpenALPRライブラリを使用してナンバープレートを自動検出・認識するシステムである。Google Colab環境で動作し、画像からナンバープレートの位置を特定して文字列を読み取る。実験計画、データ収集、結果の検証といった研究の基礎スキルを学ぶことができる。
Colabのページ(ソースコードと説明): https://colab.research.google.com/drive/1ETW9seqqInEhK5k9_BdoEaLozluHncro?usp=sharing
【目次】
プログラム利用ガイド
1. このプログラムの利用シーン
このプログラムは、自動車のナンバープレートが写っている画像から、プレートの位置を特定し、記載されている文字列を自動的に読み取るツールである。駐車場管理、交通監視、車両認証など、ナンバープレート情報を画像から取得する必要がある場合に活用できる。
2. 主な機能
- 自動環境構築: Google Colaboratory上で必要なライブラリとOpenALPRエンジンを自動的にインストールし、ビルドする。
- サンプル画像処理: アメリカとヨーロッパのナンバープレートを含む公式サンプル画像を自動的にダウンロードし、認識結果を表示する。
- ユーザー画像処理: 任意の画像ファイルをアップロードし、ナンバープレート認識を実行できる。
- 可視化機能: 検出されたプレートを緑色の枠で囲み、認識された文字列と信頼度を画像上に表示する。
3. 基本的な使い方
- プログラムの実行:
Google Colaboratoryでノートブックを開き、セルを実行する。インストールとビルドには数分かかる。
- サンプル画像の確認:
アメリカとヨーロッパのサンプル画像が自動的にダウンロードされ、認識結果が表示される。各画像について、検出されたプレートの位置、認識候補、信頼度が表示される。
- ユーザー画像のアップロード:
「ファイルを選択」ボタンが表示されるので、ナンバープレートが写っている画像ファイルを選択してアップロードする。
- 結果の確認:
アップロードした画像の認識結果が表示される。検出されたプレートには緑色の枠が表示され、認識された文字列と信頼度が画像上に示される。
Colabのページ(ソースコードと説明): https://colab.research.google.com/drive/1ETW9seqqInEhK5k9_BdoEaLozluHncro?usp=sharing
4. 便利な機能
- 複数候補の表示: 各プレートについて、最も信頼度の高い候補だけでなく、次点以降の候補も信頼度とともに表示される。認識の曖昧さを確認できる。
- 検証データの出力: 画像サイズ、検出領域サイズ、検出信頼度などの詳細情報がテキストで出力される。認識品質の評価に活用できる。
- 国別認識: サンプル画像では国別設定(アメリカ、ヨーロッパ)を使用する。ユーザー画像はアメリカ設定で処理されるが、コードを修正すれば他の国設定に変更できる。
- 日本語表示対応: matplotlibにjapanize-matplotlibを適用しているため、グラフのタイトルや軸ラベルが日本語で表示される。
プログラムの説明
1. 概要
このプログラムは、画像からナンバープレートを自動検出し、文字を認識するシステムである。OpenALPRライブラリをGoogle Colab環境上でソースからビルドし、公式サンプル画像とユーザー提供画像に対してナンバープレートの検出と文字認識を行う。
2. 主要技術
OpenALPR
OpenALPRは、画像や動画ストリームからナンバープレートを識別するためのオープンソースライブラリである[1]。C++で実装され、C#、Java、Node.js、Go、Pythonのバインディングを提供する。
Tesseract OCR
Tesseract OCRは、画像から文字を認識する光学文字認識エンジンである[2]。1985年にヒューレット・パッカード社で開発が始まり、2005年にオープンソース化され、2006年以降はGoogleが開発を支援した。100以上の言語に対応し、LSTMニューラルネットワークベースのエンジンを搭載する。
3. 技術的特徴
- 信頼度スコアによる複数候補の提示
検出されたナンバープレートに対して、認識候補を信頼度の高い順に最大10件まで生成する。各候補には0から100パーセントの信頼度スコアが付与される。
- 国別設定
ナンバープレートの形式が国によって異なるため、国コード(us、euなど)を指定することで、それぞれの国の規格に適した認識処理を実行する。
- 視覚的な結果表示
matplotlibを用いて、検出されたナンバープレートの位置を緑色の枠で表示し、認識されたナンバーと信頼度をテキストで重ねて表示する。
- 検出情報の詳細出力
画像サイズ、検出領域のサイズ、検出信頼度などの検証データを数値で出力し、認識処理の精度を評価できる情報を提供する。
4. 実装の特色
Google Colab環境でOpenALPRをソースからビルドするため、次の処理を自動化している。
- システムパッケージのインストール(OpenCV、Tesseract、ビルドツールなど)
- GitHubリポジトリからのソースコード取得
- CMakeによるビルド設定とmakeコマンドによるコンパイル
- Pythonバインディングのインストール
公式サンプル画像(アメリカとヨーロッパのナンバープレート)を自動ダウンロードして処理を実行し、その後ユーザーが画像をアップロードできる仕組みを提供する。認識結果は画像サイズや検出領域のサイズなどの検証データとともに出力される。
5. 参考文献
[1] OpenALPR. (n.d.). GitHub - openalpr/openalpr: Automatic License Plate Recognition library. https://github.com/openalpr/openalpr
[2] Smith, R. (n.d.). GitHub - tesseract-ocr/tesseract: Tesseract Open Source OCR Engine (main repository). https://github.com/tesseract-ocr/tesseract
実験・研究スキルの基礎:Google Colabで学ぶナンバープレート認識実験
1. 実験・研究のスキル構成要素
実験や研究を行うには、以下の5つの構成要素を理解する必要がある。
1.1 実験用データ
このプログラムではナンバープレートが写っている画像ファイルが実験用データである。
1.2 実験計画
何を明らかにするために実験を行うのかを定める。
計画例:
- 画像の明るさがナンバープレート検出率に与える影響を確認する
- 撮影角度が文字認識精度に与える影響を確認する
- ナンバープレートの汚れや損傷が認識精度に与える影響を確認する
- 異なる国のナンバープレート形式で認識精度がどう変化するか調べる
- 信頼度スコアと実際の認識正確性の関係を明らかにする
1.3 プログラム
実験を実施するためのツールである。このプログラムはOpenALPRライブラリとTesseract OCRエンジンを使用している。
- プログラムの機能を理解して活用することが基本である
- 基本となるプログラムを出発点として、将来、様々な機能を自分で追加することができる
1.4 プログラムの機能
このプログラムは国コードを指定してナンバープレート認識を実行する。
入力パラメータ:
- 国コード: 認識対象の国(us: アメリカ、eu: ヨーロッパ)
- 画像ファイル: ナンバープレートが写っている画像
出力情報:
- 検出されたナンバープレート数
- 各ナンバープレートの検出領域サイズと検出信頼度
- 認識候補(最大5件)とそれぞれの信頼度スコア
- 画像上での検出位置の視覚的表示(緑色の枠と認識結果)
処理の流れ:
- プログラム実行時に公式サンプル画像が自動的に処理される
- サンプル処理後、ユーザーが画像をアップロードして認識を実行できる
1.5 検証(結果の確認と考察)
プログラムの実行結果を観察し、様々な条件が認識精度に与える影響を考察する。
基本認識:
- 画像の条件を変えると認識結果が変わる。その変化を観察することが実験である
- 「良い結果」「悪い結果」は目的によって異なる
観察のポイント:
- ナンバープレートは正しく検出されているか(検出信頼度の値)
- 文字認識は正確か(認識候補の中に正解が含まれているか)
- 最も信頼度の高い候補が正解になっているか
- 認識候補間の信頼度の差はどの程度か
- どのような画像条件で認識精度が低下するか
2. 間違いの原因と対処方法
2.1 プログラムのミス(人為的エラー)
プログラムがエラーで停止する
- 原因: ビルドに必要なシステムパッケージのインストールに失敗している
- 対処方法: エラーメッセージを確認し、ランタイムを再起動して最初から実行する
ビルドに非常に長い時間がかかる
- 原因: OpenALPRをソースからコンパイルしているため、初回実行時は時間を要する
- 対処方法: これは正常な動作である。ビルドが完了するまで待つ(数分程度)
画像のアップロードができない
- 原因: ファイル選択ダイアログが正しく表示されていない
- 対処方法: セルを再実行する。それでも解決しない場合はランタイムを再起動する
2.2 期待と異なる結果が出る場合
ナンバープレートが検出されない
- 原因: 画像内のナンバープレートが小さすぎる、またはぼやけている
- 対処方法: より高解像度の画像を使用する。ナンバープレートが画像の一定面積を占めるように撮影された画像を選ぶ
文字認識が正確でない
- 原因: 撮影角度が斜め、照明条件が悪い、ナンバープレートが汚れている、または指定した国コードが実際のナンバープレートと異なる
- 対処方法: 正面から撮影された明るい画像を使用する。アメリカのナンバープレートには"us"、ヨーロッパのナンバープレートには"eu"を指定する
認識候補に正解が含まれているが、最も信頼度の高い候補ではない
- 原因: 文字が類似している(OとD、5とS など)、または一部の文字が不鮮明である
- 対処方法: これはOCRの特性である。複数の候補を確認することで正解を見つけられる場合が多い。信頼度の差を記録して分析する
同じ画像でも実行するたびに結果が微妙に異なる
- 原因: OpenALPRの内部処理には確率的な要素が含まれている可能性がある
- 対処方法: 複数回実行して平均的な傾向を把握する。これは正常な動作である
3. 実験レポートのサンプル
撮影角度がナンバープレート認識精度に与える影響
実験目的:
ナンバープレートの撮影角度が検出率と文字認識精度に与える影響を明らかにし、実用的な撮影条件の指針を得る。
実験計画:
同一のナンバープレートを異なる角度から撮影した画像を用意し、国コードを"us"に設定して認識精度を比較する。
実験方法:
プログラムを実行し、各画像をアップロードして以下の項目を記録する:
- 検出成否: ナンバープレートが検出されたかどうか
- 検出信頼度: 検出されたナンバープレートの信頼度スコア
- 認識正確性: 最も信頼度の高い認識候補が正解かどうか
- 正解の順位: 認識候補の中で正解が何番目に表示されたか
実験結果:
| 撮影角度 | 検出成否 | 検出信頼度 | 最高信頼度候補 | 認識正確性 | 正解の順位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 正面(0度) | ○ | xx.x% | xxxxxx | ○ | 1位 |
| 斜め15度 | ○ | xx.x% | xxxxxx | ○ | 1位 |
| 斜め30度 | ○ | xx.x% | xxxxxx | × | 2位 |
| 斜め45度 | ○ | xx.x% | xxxxxx | × | 3位 |
| 斜め60度 | × | - | - | × | - |
考察:
- (例文)正面からの撮影では検出信頼度がxx%と高く、文字認識も正確であった。これがシステムの最適な使用条件である。
- (例文)撮影角度がxxx度程度までは検出と認識の両方が正常に機能したが、xxx度を超えると文字認識の精度が低下し始めた。
- (例文)斜めxxx度の画像では、正解は2位の候補として表示されており、類似文字(OとDなど)の誤認識が原因と考えられる。
- (例文)斜めxxx度ではナンバープレート自体が検出されなかった。これは角度による変形が大きすぎることが原因である。
- (例文)検出信頼度と認識精度には相関関係があり、検出信頼度が低い場合は複数の認識候補を確認する必要性が示唆された。
結論:
(例文)実用的なナンバープレート認識システムを構築するには、撮影角度を±xxx度以内に保つ必要がある。それ以上の角度では文字認識の誤りが増加し、xxx度を超えると検出自体が困難になる。複数の認識候補を提示する機能は、認識精度が低下する条件下でも正解を見つける手段として有用である。今後は照明条件やナンバープレートまでの距離が認識精度に与える影響についても調査する必要がある。