ゲームエンジン Unreal Engine 5:視覚効果・物理演算・アニメーション・シーン管理の実装ガイド
1. 衝突判定の基本
バウンディング球とバウンディングボックス
オブジェクトを包む単純な形状で近似する.バウンディング球(Bounding Sphere,球形の衝突判定範囲)は中心と半径,バウンディングボックス(Bounding Box,直方体の衝突判定範囲)は中心と各軸方向の長さで定義する.粗い衝突判定の第一段階で使用する.
衝突検出アルゴリズム
階層的な判定で効率化する.まずバウンディング球同士,次に詳細な形状で判定する.空間分割法(空間を区分けして判定対象を絞る手法)で検出対象を絞り込む.連続衝突検出と離散衝突検出の使い分けが重要である.
階層的衝突判定
複雑な形状を単純な形状の階層で表現する.上位階層で大まかな判定,下位階層で詳細な判定を行う.処理効率と精度のバランスが重要である.
以下のブループリントでは,衝突検出システムの基本設定を行う.コリジョン設定,オーバーラップイベントの設定,衝突応答の処理を実装している.
ブループリントのブロック構成:
Begin Play イベント → コンポーネントの取得 → コリジョン設定
- Sphere コンポーネントを取得
- Generate Overlap Events を True に設定
- コリジョンプリセットを BlockAll に設定
- On Component Begin Overlap イベントに応答関数を接続
ブロック構成の正しさの確認:
Begin Play 後に別のオブジェクトを接近させて、Print String ノードでコンソールに "Collision Detected" と表示させる
この設定が正しければ、オブジェクトが接触した際にオーバーラップイベントが発生し、デバッグメッセージが表示される。
衝突判定のポイント:
- コリジョン設定で基本的な衝突形状を定義する(例:コンポーネントタブでSphereコリジョンを追加し、半径を1.0に設定する)
- Generate Overlap Events でイベント発生を有効にする(例:コンポーネントの詳細パネルでGenerate Overlap Eventsにチェックを入れる)
- On Component Begin/End Overlap でイベントをリッスンする(例:イベントグラフでOn Component Begin Overlapノードをドラッグ&ドロップし、Print Stringノードに接続する)
2. 物理シミュレーションの基本
運動方程式の基本
F=ma(力=質量×加速度)を基本とするニュートンの運動法則である.力,質量,加速度の関係を定義する.並進運動(直線運動)と回転運動の両方を考慮する.ゲーム内の物体の動きの基礎となる.
剛体力学の基本
変形しない物体の運動を扱う.質量,慣性モーメント(回転のしにくさを表す量),重心位置が重要なパラメータである.衝突や接触による力の伝達を計算する.車両や投射物の挙動計算に利用する.
質点系と剛体の違い
質点(質量が1点に集中したモデル)は質量が1点に集中,剛体は空間的に分布する.剛体は回転運動を考慮する必要があり,慣性テンソル(方向による慣性モーメントの違い)が重要である.物理演算の複雑さが大きく異なる.
以下のブループリントでは,物理シミュレーションの基本設定を行う.Physics設定の有効化,重力の設定,剛体の質量設定を実装している.
ブループリントのブロック構成:
Construction Script イベント → 物理設定
- Static Mesh Component を取得
- Simulate Physics を True に設定
- Mass in KG を 1.0 に設定
- Set Linear Damping を 0.01 に設定
- (オプション) Set All Physics Linear Velocity を使用して初速度を設定
ブロック構成の正しさの確認:
Play モードでオブジェクトを少し持ち上げて落下させ、重力に従って落下し、他のオブジェクトと物理的に相互作用することを確認する
設定が正しければ、オブジェクトは自然な物理挙動を示し、他のオブジェクトと衝突すると反発や回転が発生する。
物理シミュレーションのポイント:
- Simulate Physics で物理演算を有効にする(例:Static Meshコンポーネントの詳細パネルでSimulate Physicsにチェックを入れる)
- Mass in KG で質量を設定する(例:詳細パネルのPhysicsセクションでMass in KGの値を1.0に設定する)
- Linear/Angular Damping で抵抗を調整する(例:Linear Dampingを0.01に設定して空気抵抗を再現する)
3. アニメーション制御の基本
キーフレームアニメーション
重要な姿勢を指定するキーフレーム(Key Frame,動作の基準となるフレーム)を設定し,中間フレームを補間する.位置,回転,スケールなどの変化を制御する.タイムライン(時間軸)ベースの直感的な制御が可能である.
ボーンアニメーション
骨格構造(関節の階層構造)による変形制御である.各ボーン(関節)の回転でメッシュ(3D形状)の変形を実現する.スキニングウェイト(変形の影響度)で変形の影響度を調整する.キャラクターアニメーションの標準的手法である.
アニメーション補間
キーフレーム間の中間状態を計算する.線形補間(直線的な変化),エルミート補間(滑らかな変化),スプライン補間(曲線的な変化)などの手法がある.滑らかな動きの実現に不可欠である.
以下のブループリントでは,アニメーション付きキャラクターの制御を実装する.Animation Blueprintとの連携,アニメーションの切り替え,再生速度調整を示している.
ブループリントのブロック構成:
イベントグラフ内:
- キャラクターのスケルタルメッシュコンポーネントを取得
- Get Anim Instance ノードを使用
- アニメーションBPへキャスト
- Set Boolean/Float/Enum 変数を設定してアニメーション状態を制御
(例: "bIsWalking" 変数を True に設定)
ブロック構成の正しさの確認:
入力イベント(例: W キー)を接続し、キャラクターの移動と同時に歩行アニメーションが再生されることを確認する
設定が正しければ、キャラクターは適切なアニメーションを再生し、スムーズに遷移する。状態変数(走る/歩く/待機など)に応じたアニメーションが表示される。
アニメーション制御のポイント:
- Animation Blueprint でステートマシンを定義する(例:Anim GraphでStateマシンを作成し、IdleとWalkステートを追加する)
- ブループリント変数を通じてアニメーション状態を制御する(例:bIsWalking変数をtrue/falseに設定して歩行状態を切り替える)
- Event Graph でアニメーションの遷移条件を設定する(例:Speed変数が0.1以上のときにWalkステートへ遷移するルールを設定する)
4. サウンド制御の基本
音声ファイル形式
WAV(非圧縮音声形式),OGG(可逆圧縮形式),MP3(非可逆圧縮形式)などがある.サンプリングレート(音声のデジタル化頻度)とビットレート(データ量)でクオリティ調整する.効果音は高品質WAV,BGMは圧縮形式が一般的である.
3D音響の基本
音源の位置による音量と定位(音の位置感)の変化を制御する.ドップラー効果(音源の移動による音程変化)を考慮する.距離減衰と指向性(音の広がり方)を実装する.リバーブ(残響効果)による空間表現を行う.
サウンドバッファ
音声データを一時的に格納するメモリ領域である.ストリーミング再生(逐次読み込み再生)でメモリ使用を最適化する.バッファサイズとレイテンシー(遅延時間)はトレードオフの関係である.
以下のブループリントでは,効果音とBGMの基本的な制御を実装する.効果音とBGMの読み込み,音量設定,再生制御,ループ設定を示している.
ブループリントのブロック構成:
効果音の再生:
- Play Sound at Location ノード
- Sound 入力に効果音アセットを指定
- Location に再生位置を設定
- Volume Multiplier に 0.8 を設定
BGMの再生:
- Play Sound 2D ノード
- Sound 入力に音楽アセットを設定
- Looping を True に設定
- (オプション) Fade In Duration で徐々に音量を上げる
ブロック構成の正しさの確認:
特定のイベント(例: ボタンクリック)に効果音再生ノードを接続し、サウンドが正しく再生されることを確認する
設定が正しければ、効果音はイベント発生時に適切な位置から再生され、BGMは連続して再生される。
サウンド制御のポイント:
- Play Sound at Location で3D効果音を再生する(例:爆発時にPlay Sound at Locationノードで爆発位置にサウンドを配置する)
- Play Sound 2D で位置に依存しないBGMを再生する(例:レベル開始時にPlay Sound 2Dノードで背景音楽を再生する)
- Set Sound Mix で複数のサウンドの音量バランスを調整する(例:戦闘中はSet Sound Mixノードで効果音を大きく、BGMを小さくする)
5. スプライト表示の基本
テクスチャマッピング
2D画像を3D物体の表面に貼り付ける技術である.UV座標(テクスチャ座標)で画像の対応位置を指定する.ミップマップ(異なる解像度の画像群)で解像度を自動調整する.テクスチャアトラス(複数画像の統合テクスチャ)で複数画像を1枚にまとめて効率化する.
UV座標系
テクスチャ上の位置を(0,0)から(1,1)の範囲で指定する.左下原点で右方向u,上方向vである.テクスチャの繰り返しやクランプ(端部の処理方法)で境界処理を行う.タイリング(パターンの繰り返し)で広い面の表現が可能である.
アルファブレンディング
透明度による重ね合わせ処理である.前景と背景の色を透明度で混合する.加算合成(色の加算)やマルチプライ(色の乗算)など複数の合成モードがある.パーティクル(粒子効果)やUI要素の表現に重要である.
以下のブループリントでは,2D画像をスプライトとして表示する.Paper2Dコンポーネントの作成,テクスチャの適用,表示設定を実装している.
ブループリントのブロック構成:
Construction Script イベント → スプライト設定
- Paper Sprite Component を作成
- Set Sprite ノードでスプライトアセットを設定
- Set Relative Location/Rotation/Scale で位置とサイズを調整
- Set Render Custom Depth で特殊エフェクト用の設定
ブロック構成の正しさの確認:
Play モードでスプライトが正しい位置と向きで表示されることを確認する
Camera-facing スプライトであれば、カメラを動かしてもスプライトが常にカメラの方を向いていることを確認する
設定が正しければ、スプライトは指定した位置に正確に表示され、設定に応じて半透明効果やブレンドモードが適用される。
スプライト表示のポイント:
- Paper Sprite Component で2Dスプライトを3D空間に配置する(例:コンポーネントパネルでPaper Sprite Componentを追加し、Spriteプロパティにアイコン画像を設定する)
- Billboard Component で常にカメラ向きのスプライトを作成する(例:Billboard Componentを追加し、Sprite参照にテクスチャを設定してプレイヤーの頭上に表示する)
- Material のブレンドモードでアルファブレンディングを制御する(例:マテリアルのブレンドモードをTranslucentに設定して半透明効果を適用する)
6. パーティクル制御の基本
パーティクルシステム
多数の小さな粒子による視覚効果を制御する.エミッター(粒子発生装置)から粒子を生成し,物理演算で動きを制御する.炎,煙,魔法,爆発などの表現が可能である.GPU(画像処理プロセッサ)加速で大量粒子の処理を実現する.
エミッターとパーティクル
エミッター(Emitter)は粒子の発生源である.放出角度,速度,頻度を制御する.パーティクル(Particle)は位置,速度,寿命,色,サイズなどのプロパティ(属性)を持つ.乱数で自然な揺らぎを表現する.
パーティクル寿命管理
生成から消滅までの時間を制御する.フェードインアウト(徐々な出現消滅)で自然な出現消滅を実現する.アルファ値(透明度)や色,サイズの時間変化を設定する.コリジョン(衝突判定)で環境との相互作用を実装する.
以下のブループリントでは,パーティクルシステムの基本設定を行う.Niagara/Cascade システムの配置,エフェクトの開始と停止制御を実装している.
ブループリントのブロック構成:
イベントグラフ内:
- Spawn Emitter at Location ノードを使用
- Template にパーティクルシステムを設定
- Location に発生位置を指定
- 戻り値の Emitter を変数に保存
効果の制御:
- Activate エミッターを有効化
- Deactivate エミッターを無効化
- Set Float/Vector Parameter で動的にパラメータを変更
ブロック構成の正しさの確認:
特定のイベント(例: ボタンクリック)でエフェクト再生を開始し、パーティクルが正しい位置から発生して自然に消滅することを確認する
設定が正しければ、パーティクルは指定した位置から発生し、設定したパラメータに従って動き、寿命が尽きると消滅する。
パーティクル制御のポイント:
- Spawn Emitter at Location でエフェクトを特定位置に生成する(例:キャラクターがスキルを使用した位置でSpawn Emitter at Locationノードを呼び出す)
- Activate/Deactivate で制御する(例:炎のエフェクトをActivateノードで開始し、Deactivateノードで停止する)
- Parameter の動的な変更で状況に応じたエフェクトを実現する(例:Set Vector Parameterノードで炎の色を赤から青に変化させる)
7. GUI制御の基本
2D座標系
ウィンドウ上の位置を(x,y)で表現する.原点は画面中央で,x軸は右方向,y軸は上方向が正である.正規化座標系(-1から1の範囲に統一した座標系)を使用する.ピクセル座標(画素単位の座標)との変換が必要である.
アスペクト比
画面の縦横比である.16:9や4:3などの比率で表現する.GUI要素(グラフィカルユーザーインターフェース部品)の配置やテクスチャの歪み防止に重要である.解像度が変わっても見た目が維持されるよう調整する.
ウィジェットの構造
ボタン,テキスト,スライダーなどのUI部品である.階層構造で管理され,親子関係により位置や表示状態が制御される.イベントの伝播(情報の伝達)も階層に従う.
以下のブループリントでは,UMG(Unreal Motion Graphics)を使用して基本的なGUI要素を画面に配置する.ウィジェットブループリントの作成,テキストやボタンの配置,イベント処理を実装している.
ブループリントのブロック構成:
レベルブループリント内:
- Create Widget ノードを使用
- Class にウィジェットブループリントを指定
- Return Value を変数に保存
- Add to Viewport で表示
ウィジェットブループリント内(イベントデザイナー):
- TextBlock をキャンバスに配置し、テキストと位置を設定
- Button をキャンバスに配置
- Button の On Clicked イベントを関数にバインド
ブロック構成の正しさの確認:
Play モードでUIが正しく表示され、ボタンをクリックすると設定したイベントが発生することを確認する
設定が正しければ、UIは画面に適切に表示され、ボタンのクリックに応じて設定した処理が実行される。
GUI制御のポイント:
- UMG Widget Blueprint でUIデザインを作成する(例:Widget Blueprintを新規作成し、デザイナーパネルでテキストやボタンを配置する)
- Create Widget + Add to Viewport でUIを表示する(例:Begin Play時にCreate Widgetノードを使用してMain Menuウィジェットを作成し、Add to Viewportで表示する)
- イベントデザイナーでボタンなどのイベントを処理する関数を設定する(例:Buttonのイベントグラフで「On Clicked」イベントを接続し、ゲーム開始関数を呼び出す)
8. シーン遷移の基本
ゲーム状態管理
メニュー,プレイ中,ポーズなどの状態遷移を制御する.FSM(Finite State Machine,状態遷移を管理するシステム)で状態と遷移を定義する.各状態での入力処理や描画処理を管理する.ゲームの進行フローを構造化する.
リソース管理
テクスチャ,モデル,サウンドなどのアセット(素材データ)を管理する.シーン切り替え時の読み込みと解放を制御する.非同期ローディング(バックグラウンド読み込み)でロード時間を隠蔽する.メモリ使用量の最適化を行う.
メモリ管理
動的なリソースの確保と解放を制御する.メモリリーク(解放忘れによるメモリ消費)の防止とフラグメンテーション(メモリの断片化)対策を実施する.参照カウント(使用状況の計数)による自動解放を行う.ガベージコレクション(不要メモリの自動回収)のタイミング制御を行う.
以下のブループリントでは,シーン遷移の基本的な制御を実装する.レベルのロードとアンロード,トランジション効果,ゲームステートの管理を示している.
ブループリントのブロック構成:
レベル遷移の実装:
- Open Level ノードまたは Server Travel ノード
- Level Name に遷移先レベル名を指定
- (オプション) Options で追加パラメータを設定
トランジション効果:
- Get Player Controller ノードを取得
- Set View Target with Blend を使用
- New View Target にカメラアクターを指定
- Blend Time でトランジション時間を設定
ブロック構成の正しさの確認:
特定のイベント(例: ボタンクリック)にレベル遷移ノードを接続し、スムーズに新しいレベルに移行することを確認する