Windows AI開発環境構築ガイド

【概要】自分のノートPCに、AIプログラミングや実験を行うための基本的な開発環境を構築する手順を解説します。Windowsの基礎知識、コマンドライン操作、PythonやCUDA、AIエディタ(Windowsurfなど)

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目次

1. はじめに:AI開発環境の全体像

このガイドは,Windows PC上でAI開発を始めたいと考えている学生や技術者を対象としています.本ガイドでは,AI開発で広く使われるプログラミング言語Python,基本的なデータ処理ライブラリ,そして開発を助けるコードエディタを中心に,シンプルかつ実践的なAI開発環境を構築することを目指します.このガイドの手順に沿って環境を構築すれば,簡単なデータ分析や機械学習モデルの実行,ディープラーニングの入門的なコードを試すことができるようになります.

対象とするPC環境はWindows 11です.NVIDIA製GPUがある場合はGPUを活用した開発環境も構築できますが,GPUがない場合でもCPUのみで多くの学習・開発を行うことは可能です.AI開発はCPUだけでも可能ですが,深層学習ではGPUを使用することで計算速度が向上します.

インストールの実行には,PCのSSD/ディスクの空き容量が約20GB必要です.事前にご確認ください.空き容量が無い人は実施しないこと.

このガイドが,Windows AI開発環境構築とその後の学習・開発活動に役立つことを期待しています.

2. ガイドが対象とするAI開発環境(入門編)

本ガイドでは,AI開発環境(入門編)として,以下のツール群の役割,メリット,そしてインストール手順を解説します.9章には,より高度なステップについても説明しています.

+-----------------------------------------------------------------+
| 開発エディタ (VS Code / Jupyter Notebook / Windsurf)            |
|  +------------------------------------------------------------+ |
|  | Git (バージョン管理)                                       | |
|  +------------------------------------------------------------+ |
|                                                                                                                |
|  +------------------------------------------------------------+ |
|  | Python + AIコアライブラリ (PyTorch, NumPy, Pandasなど)     | |
|  +------------------------------------------------------------+ |
|                                                                                                                |
+-----------------------------------------------------------------+
| 基盤 (OSとハードウェアの橋渡し)                                 |
|  +---------------------------+  <--連携-->  +-----------------+ |
|  | PyTorch内のCUDAライブラリ |              | NVIDIA CUDA     | |
|  +---------------------------+              +-----------------+ |
+-----------------------------------------------------------------+
| OS・ハードウェア (Windows, NVIDIA GPU)                          |
+-----------------------------------------------------------------+

3. 導入にあたっての推奨事項 (段階的アプローチ)

スムーズな環境構築のため,以下の段階的な手順を推奨します.

  1. 環境構築の基礎知識を学ぶ:

    まず,コマンドプロンプトの基本的な使い方など,Windowsでの環境構築に必要な基礎知識を確認します(4章参照).

  2. AI開発環境(入門編)のインストール:

    Python本体,Git,7-Zip,開発エディタ必要であればNVIDIA CUDAをPCにインストールします(5.1節参照).

  3. Pythonライブラリの導入:

    PyTorchなどのAI開発等に必要なPythonライブラリをインストールします(5.2節参照).

  4. 開発エディタ: 3つの開発エディタ(Visual Studio Code, Jupyter Notebook, Windsurf)を知り,状況に応じて活用します(5.3節参照).

4. 環境構築の前に知っておきたいWindowsの基礎

この章では,環境構築の手順を進める上で必要となるWindowsの基本的な操作や概念について解説します.ここで学ぶ知識は,続くインストール手順で頻繁に登場するため,内容を理解しておくとスムーズに進められます.

4.1. フォルダ(ディレクトリ),パス

フォルダ(ディレクトリ:ファイルを整理するための仕組み)は,複数のファイルやフォルダを格納します.そのことで,大量のファイルを整理して格納できます.

パスは,コンピュータ上でファイルやフォルダの位置を示す文字列です.例えば,「C:\Users\金子さん\Documents\研究\データ.xlsx」は,Cドライブ(コンピュータ内の記憶装置)にUsersフォルダがあり,その中に金子さんフォルダがあり,更に,その中にDocumentsフォルダがあり,その中に「データ.xlsx」があります.このファイル「データ.xlsx」のパスは「C:\Users\金子さん\Documents\研究\データ.xlsx」になります.

4.2. 環境変数とユーザープロファイル

環境変数はシステム全体で共有される設定値を格納するものです.ユーザープロファイルは各ユーザーアカウントに割り当てられる専用ディレクトリ(C:\Users\ユーザー名)であり,個人データと設定が格納されます.

4.2.1. 環境変数

環境変数は,システム全体で共有される設定値を保存する変数です.例えば,環境変数%USERPROFILE%には現在のユーザーのプロファイルディレクトリ名(例:C:\Users\金子さん)が格納されています.コマンドプロンプトなどで「%USERPROFILE%\Desktop」と記述することで,そのユーザーのデスクトップフォルダを参照できます.

4.2.2. ユーザープロファイル

ユーザープロファイルは,個人専用のフォルダ領域であり,Windowsの各ユーザーアカウント(コンピュータを使用する個人の登録情報)に対して個別に割り当てられる専用ディレクトリです.ユーザープロファイルにはユーザー固有のデータと設定が格納されます.

4.3. コマンドプロンプトの基本

コマンドプロンプトはコマンドでシステムを操作するツールです.システム管理,ファイル操作,設定変更,インストール作業などの様々な作業をコマンドで実行でき,GUI(グラフィカルインターフェース)では手順が多くなる操作や,自動化したい操作の実行に便利です.通常起動と管理者権限起動が可能で,cdコマンドで作業ディレクトリを変更できます.ワイルドカード(*.tmp等)でファイルを一括指定し,dir,copy,del等のコマンドでファイル操作を実行できます.

4.3.1. コマンドプロンプトとは

4.3.2. 一般ユーザーと管理者

一般ユーザー権限では自分のプロファイル内操作が可能であり,管理者権限ではシステム全体を制御できます.このように,一般ユーザー権限であるか,管理者権限であるかによって,Windowsにおけるアクセス制御(誰が何を操作できるかを管理する仕組み)が行われます.つまり,実行できる操作が異なります.アクセス制御は,重要なシステムファイルが誤って変更されることを防ぐのに役立ちます.

4.3.3. コマンドプロンプトの起動

4.3.4. コマンド実行のパラメータ(オプション)

パラメータオプション(コマンドの動作を細かく制御するための追加指示)により,コマンドに条件や設定を追加できます.例えば「dir /a」コマンドにおいて,dir(dir:ディレクトリの内容を表示するコマンド)は「ディレクトリ内容の表示」という指示であり,/a/a:すべてのファイルを「隠しファイルも含めて全て表示する」という追加指示)です.

4.3.5. ワイルドカード

コマンド実行では,ワイルドカードと呼ばれる「何でも当てはまる」という意味を持つ特殊文字を用いて,複数のファイルを一度に指定できます.例えば,「*.tmp」は「拡張子が.tmpであるすべてのファイル」を意味し,テスト.tmp,12345.tmp などのファイル名とマッチします.別の例としては「data_*.xlsx」は「data_で始まるすべてのExcelファイル」を指定します.これは,ファイル名の一部について,任意の文字列にマッチするパターンマッチング(条件に合致するものを探す仕組み)を行うものです.

4.3.6. コマンドプロンプトによるファイル操作

コマンド入力後,Enterキーで実行が開始されます.プロンプトには現在の作業ディレクトリ(現在操作対象となっているフォルダ)のパスが表示されます.コマンドプロンプトでは,現在作業しているフォルダを「カレントディレクトリ」と呼びます.

基本的なファイル操作コマンド

ファイル内容の表示

ファイルとフォルダーの操作

実行例

  1. コマンドプロンプトを管理者として実行(手順:Windowsキーまたはスタートメニュー,「cmd」と入力,「管理者として実行」を選択)
  2. 次のコマンドを実行.notepad はテキストエディタ(メモ帳)を起動するコマンド.
    dir
    cd ..
    mkdir test_folder
    cd test_folder
    notepad
    

4.4. エラーメッセージとの付き合い方

エラーメッセージは「失敗」ではなく,「問題解決へのヒント」です.エラーメッセージには,どのファイル(File)の何行目(line)で,どのような種類のエラー(例: ModuleNotFoundError)が起きたかなどが記載されています.エラーメッセージの一部や全体をコピーしてインターネットで検索したり,AIアシスタントで調査すると,解決策が見つかることが多いです.

5. Windows でのAI開発環境(入門編)インストール手順

注意:

5.1. AI開発環境(入門編)のインストールと設定

5.1.1. AI開発環境(入門編)の一括インストール

PythonはAI開発で広く使われる言語です.wingetはWindowsのコマンドラインからアプリをインストールできるツールです.

Pythonバージョンについて: 2025年6月現在,Python 3.13.4が最新安定版です.ただし,AI開発の入門としてはPython 3.12系列の利用を推奨します.これは多くのAIライブラリがPython 3.12での動作確認が行われており,安定性が確保されているためです. AnacondaやMinicondaなど,他の配布版もありますが,このガイドでは,wingetを用いてPythonを本体をインストールします.

インストールは,ソフトウェアをコンピュータで実行可能な状態にするための処理のことです.プログラムファイルの配置,システムへの登録,設定などを行います.

winget(Windows Package Manager:Microsoft公式のソフトウェア管理ツール)は,ソフトウェアのインストールや管理を行うためのコマンドラインツール(文字コマンドで操作するプログラム)です.インストール作業を簡単なコマンドで実行可能になります.

インストールスコープは,ソフトウェアインストール時の対象ユーザーの範囲の指定です.wingetを用いたインストールにおいても,重要な設定です. 例えば,winget では,「--scope machine オプション(コマンドの動作を変更するための追加設定)」を指定してPythonをインストールすると,そのコンピュータのすべてのユーザーがPythonを使用できます.このオプションを指定しない場合,インストールを実行したユーザーのみがPythonを使用可能となります.

以下のコマンドで,AI開発環境(入門編)を一括でインストールします。

AI開発環境(入門編)の一括インストール

  1. コマンドプロンプトを管理者として実行(手順:Windowsキーまたはスタートメニュー,「cmd」と入力,「管理者として実行」を選択)
  2. 次のコマンドを1つずつ実行(長いコマンドは,表示が複数行に分かれていますが,1つのコマンドとして実行してください)
REM Windows のパス長制限を緩和
reg add "HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\FileSystem" /v LongPathsEnabled /t REG_DWORD /d 1 /f
reg query "HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\FileSystem" /v LongPathsEnabled

REM winget コマンドは必ず1つずつ実行すること.(実行完了を待つため)
REM Nvidia CUDA 12.6 をシステム領域にインストール
winget install --scope machine --id Nvidia.CUDA --version 12.6 -e

REM Python, Git, 7zip, Visual Studio Code, Windsurf をシステム領域にインストール
winget install --scope machine --id Python.Python.3.12 --id Python.Launcher --id Git.Git --id 7zip.7zip --id Microsoft.VisualStudioCode --id Codeium.Windsurf -e --silent

コマンドの説明:

よくある間違いの回避策

次に,パスを通す設定,環境変数の設定,Python開発に必要なVS Code拡張機能のインストールを行います.最初に必ず新しいコマンドプロンプトを管理者として実行します.

AI開発環境(入門編)の各種設定

  1. コマンドプロンプトを管理者として実行(手順:Windowsキーまたはスタートメニュー,「cmd」と入力,「管理者として実行」を選択)
  2. 次のコマンドを実行
set "INSTALL_PATH=C:\Program Files\Python312"
echo %PATH% | find /i "%INSTALL_PATH%" >nul
if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%INSTALL_PATH%" /M >nul
echo %PATH% | find /i "%INSTALL_PATH%\Scripts" >nul
if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%INSTALL_PATH%\Scripts" /M >nul

set "CUDA_PATH=C:\Program Files\NVIDIA GPU Computing Toolkit\CUDA\v12.6"
if exist "%CUDA_PATH%" setx CUDA_PATH "%CUDA_PATH%" /M >nul
if exist "%CUDA_PATH%" setx CUDNN_PATH "%CUDA_PATH%" /M >nul

set "NEW_PATH=C:\Program Files\Git\cmd"
if exist "%NEW_PATH%" echo %PATH% | find /i "%NEW_PATH%" >nul
if exist "%NEW_PATH%" if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%NEW_PATH%" /M >nul

set "NEW_PATH=C:\Program Files\7-Zip"
if exist "%NEW_PATH%" echo %PATH% | find /i "%NEW_PATH%" >nul
if exist "%NEW_PATH%" if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%NEW_PATH%" /M >nul

set "NEW_PATH=C:\Program Files\Microsoft VS Code"
if exist "%NEW_PATH%" echo %PATH% | find /i "%NEW_PATH%" >nul
if exist "%NEW_PATH%" if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%NEW_PATH%" /M >nul

set "NEW_PATH=C:\Program Files\Windsurf"
if exist "%NEW_PATH%" echo %PATH% | find /i "%NEW_PATH%" >nul
if exist "%NEW_PATH%" if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%NEW_PATH%" /M >nul

if exist "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin" cd "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin"
if exist "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin" code --install-extension ms-python.python
if exist "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin" code --install-extension ms-python.vscode-pylance
if exist "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin" code --install-extension MS-CEINTL.vscode-language-pack-ja
if exist "C:\Program Files\Microsoft VS Code\bin" code --install-extension dongli.python-preview

PATH設定コマンドの説明

Python と Git のインストール確認

新しいコマンドプロンプトを開き,以下のコマンドでバージョンが表示されれば成功です.


    python --version
    git --version

簡単なPythonの動作確認

コマンドプロンプトでpythonと入力すると,Pythonの対話モードが起動します.以下のコードを入力してエンターキーを押し,結果が表示されるか確認してみます.


    print("Hello, AI World!")

>>>と表示されている行はPythonの入力受付中であることを示します.print("Hello, AI World!")と入力してエンターキーを押すと,その下の行にHello, AI World!と表示されます.確認できたらexit()と入力してエンターキーを押すと対話モードを終了できます.もしここでエラーが出る場合は,8章のトラブルシューティングを参照してください.

5.1.2. 各ツールの概要

5.2. Pythonライブラリの一括インストール

pipを使って,PythonのAI開発でよく使うライブラリを一括でインストールします.pipとは: Pythonパッケージマネージャ(Pythonの追加機能を管理するためのツール)です.ライブラリ(プログラムで使用できる機能の集合)のインストールや管理を行うためのツールです.

pip基本コマンド

重要:pip install -U torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu126」の実行では、PyTorch公式サイト(https://pytorch.org/get-started/locally/)で,自身の環境(Windows, Pip, Python, CUDA)に合った最新のインストールコマンドを必ず確認すること.特にGPUを利用する場合は,適切なCUDAバージョンの選択が重要です(7.3節参照)

以下のコマンドで,AI開発に必要なライブラリを一括でインストールします(2025年6月版):

主要なPythonライブラリの一括インストール

  1. コマンドプロンプトを管理者として実行(手順:Windowsキーまたはスタートメニュー,「cmd」と入力,「管理者として実行」を選択)
  2. 次のコマンドを1つずつ実行(長いコマンドは,表示が複数行に分かれていますが,1つのコマンドとして実行してください)
REM pipを最新版に更新
python -m pip install -U pip

REM PyTorchのインストール(CUDA 12.6対応版)
pip install -U torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu126

REM その他のAIライブラリを一括インストール
pip install jupyter ipykernel numpy pandas scikit-learn matplotlib japanize-matplotlib seaborn scipy opencv-python pillow timm pygame streamlit

注意: 上記のコマンドはCUDA 12.6を使用する場合の例です.2025年6月現在,PyTorch 2.6.0および2.7系でCUDA 12.6が正式サポートされています.

インストールされるPythonライブラリの説明

インストール後の確認コマンド

REM GPU情報確認
wmic path win32_VideoController get name

REM Pythonバージョン確認
python --version

REM PyTorchとCUDA対応確認
python -c "import torch; print(torch.__version__, torch.cuda.is_available())"

ライブラリの動作確認

インストールしたライブラリが正しく使えるか,簡単なPythonコードで確認してみます.コマンドプロンプトでpythonと入力し,対話モードに入って以下のコードを実行します.

# PyTorchのバージョン確認とGPU利用可能性の確認
import torch
print("PyTorch Version:", torch.__version__)
print("CUDA Available:", torch.cuda.is_available()) # GPUが使えるか(TrueならOK)
if torch.cuda.is_available():
    print("CUDA Version:", torch.version.cuda) # PyTorchが対応しているCUDAのバージョン

# NumPyのバージョン確認
import numpy as np
print("NumPy Version:", np.__version__)

# Pandasのバージョン確認
import pandas as pd
print("Pandas Version:", pd.__version__)

# Matplotlibのバージョン確認
import matplotlib
print("Matplotlib Version:", matplotlib.__version__)

エラーが出ずにバージョン情報などが表示されれば成功です.特にCUDA Available: Trueと表示されていれば,PyTorchがGPUを認識しており,GPUを使った計算が可能です.Falseと表示された場合は,GPUが搭載されていないか,CUDAドライバやPyTorchのインストールに問題がある可能性があります.確認できたらexit()と入力して対話モードを終了します.動作確認でエラーが出た場合は,8節のトラブルシューティングを参照してください.

6. 開発エディタの活用

5.1でインストール・設定したVisual Studio CodeとWindsurf,および5.2でインストールしたJupyter Notebookについて,それぞれの特徴と適した用途を説明します.開発エディタにはそれぞれ特徴があり,併用も可能です.

6.1. 開発エディタの概要

① Visual Studio Code (VS Code)

特徴: Microsoftが開発するコードエディタです.「拡張機能」により,Python開発支援など様々な機能を追加してカスタマイズできます.

適した用途: プログラム開発,複数のファイルで構成されるプロジェクトの管理.

主なAI機能: GitHub CopilotClaudeなどの拡張機能を導入することで,コード補完やチャットによる質問応答,コード生成といったAI支援機能を利用できます.

5.1.1でインストールした拡張機能の説明

② Jupyter Notebook

Webブラウザ上で動作する対話的な開発環境です.「セル」と呼ばれるブロック単位でコードを書き,実行するとその結果(数値,表,グラフなど)がすぐ下に表示されます.シンプルなインターフェースになっています.より多くの機能が必要になったらJupyterLabへの移行も検討できます.

適した用途: データ分析,アルゴリズム,学習過程や結果の可視化,デモンストレーション.

主なAI機能

Windsurf

特徴: AI統合開発環境(IDE)です.エディタ機能とAIとの連携が特徴です.

主なAI機能

6.2. AIエディタ Windsurf の活用

Windsurfは、AI機能を統合したコードエディタです。VS Codeをベースにしており、VS Code と操作性が似ています。

メリットと機能

Cascade機能

Cascadeはコード生成や実行を支援するAI機能です:

無料プランの機能(2025年6月現在)

API Key要件

CursorとWindsurfの比較

Claude 3.7 Sonnetの利用回数では、Cursor無料版は月50回、Windsurf無料版は月約25回利用可能です。ただしWindsurfでは、無料で利用できる他のモデル(DeepSeek-V3-0324など)が無制限で利用できる点が特徴です。

Windsurfの起動と初回設定

  1. Windsurfを起動(スタートメニューまたは「windsurf」コマンド)
  2. Get Started をクリック
  3. VS Codeから設定を引き継ぎたいときに限り「Import from VS Code」,ふつうは「Start fresh」
  4. 設定を続行
  5. 「Log in to Windsurf」の画面で、「Sign up」 をクリックし,アカウントを新規作成。この時の登録を覚えておき、次回からは「Log in」.

    このとき、Googleアカウントを用いて、Windsurfのアカウント登録可能。以上でインストールと初期設定は完了

  6. 動作確認のため、Ctrl+L でCascadeを開き,「折れ線グラフを描くコードを出して」などと入力.

Windsurf の推奨モデル(クレジット節約のため)

  1. DeepSeek-V3-0324 (0クレジット・恒久的)
  2. SWE-1 (0クレジット・期間限定)
  3. SWE-1-lite (0クレジット・軽量版)

DeepSeek-V3-0324モデルの選択手順

  1. Cascadeパネル(Ctrl + L)を開く
  2. 入力欄上部のモデル選択ドロップダウンをクリック
  3. 「DeepSeek-V3-0324」を選択

Python コードの実行手順

① "Hello World"プログラム

  1. 新しいファイルを作成し、hello.pyという名前で保存.
  2. print("Hello World")と入力.
  3. ターミナルを開く(View > Terminal).
  4. 実行方法:
    • ターミナルで python hello.py と入力して実行.
    • または Cmd/Ctrl+I で「実行して」とリクエスト.

② 折れ線グラフのプロットプログラム

  1. plot_graph.pyというファイルを作成し,以下のコードを入力.
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

# データの生成
x = np.linspace(0, 10, 100)
y = np.sin(x)

# グラフのプロット
plt.figure(figsize=(8, 6))
plt.plot(x, y, 'b-', linewidth=2, label='sin(x)')
plt.title('Sine Wave')
plt.xlabel('x')
plt.ylabel('sin(x)')
plt.grid(True)
plt.legend()

# グラフの保存と表示
plt.savefig('sine_wave.png')
plt.show()
  1. 実行するとグラフウィンドウが表示され,同時にプロジェクトディレクトリに画像ファイルも保存される.

7. このガイドのAI環境開発環境(入門編)のメリットと注意点

7.1. メリット

7.2. 注意点と潜在的な課題

7.3. 注意点:GPU利用時のPyTorchのバージョン互換性

  1. 使用したいPyTorchのバージョンを決める: 最新安定版が推奨されます.
  2. PyTorch公式サイトのインストールページを確認する.
    • PyTorch公式サイト(https://pytorch.org/get-started/locally/)にアクセスします.
    • 「PyTorch Build」(Stable),「Your OS」(Windows),「Package」(Pipを選択),「Language」(Python),「Compute Platform」を選択します.
    • 「Compute Platform」で,利用したいCUDAのバージョン(例: CUDA 11.8, CUDA 12.6)を選択します.
    • 選択すると,下にインストールコマンドが表示されます(例: pip install torch ... --index-url .../cu126).このコマンドの末尾(cu126など)が,PyTorchが対応するCUDAバージョンを示します.
  3. 必要なCUDAのバージョンを確認する.

    最新の互換性情報は https://docs.nvidia.com/cuda/cuda-toolkit-release-notes/ で確認してください.

8. 一般的なトラブルシューティング

〇 問題: pythonpipコマンドが認識されない

エラーメッセージ例: 'python' is not recognized as an internal or external command, operable program or batch file.

原因: wingetでのインストールに失敗したか,パス(PATH)が正しく設定されていない可能性があります.

対処法: PCを再起動してみてください.それでも解決しない場合は,Windowsの「設定」→「システム」→「バージョン情報」→「システムの詳細設定」→「環境変数」を開き,システム環境変数のPathにPythonのインストールフォルダ(例: C:\Program Files\Python312)が含まれているか確認してください.

〇 問題: ライブラリが見つからない

エラーメッセージ例: ModuleNotFoundError: No module named 'xxx'

原因: 必要なライブラリ(例: torch, numpy, pandasなど)が正しくインストールされていないか,コマンドを実行しているPython環境とは異なる環境にインストールされている可能性があります.

対処法: pip install <ライブラリ名>コマンドを再実行してみてください.また,pip listコマンドでインストール済みのライブラリ一覧を確認できます.

〇 問題: GPUが認識されない,またはGPU関連のエラーが出る

エラーメッセージ例: CUDA is not availableなど

原因: CUDA 12.6と,pipでインストールしたPyTorchのCUDAバージョンの間に互換性がないことが主な原因です(7.3節参照).その他,CUDAのインストール失敗,GPUハードウェアの問題なども考えられます.

対処法:

  1. 7.3節の手順を参考に,インストールされているCUDA 12.6と,pipでインストールしたPyTorchのCUDAバージョン(コマンドの--index-url部分やPyTorch公式サイトで確認できる)の互換性を再確認してください.必要であれば,CUDAまたはPyTorchを再インストールしてください.
  2. コマンドプロンプトでnvidia-smiを実行し,NVIDIAドライバが正しくインストールされ,GPUがシステムに認識されているか確認してください.GPUの状態やドライババージョンが表示されます.
  3. Pythonインタープリタを起動し,以下のコードを実行してPyTorchがGPU(CUDA)を認識しているかプログラムで確認してください.

    PyTorchが対応しているCUDAバージョンを表示

    import torch
    print(torch.cuda.is_available())
    print(torch.version.cuda) #
    

    Trueが返ってくればPyTorchはGPUを認識しています.Falseの場合は,バージョン不整合の可能性が高いです(7.3節参照).pip uninstall torchで一度アンインストールし,PyTorch公式サイトで確認した正しいコマンドでPyTorchを再インストールすることを検討してください.

  4. PCの再起動も試してみてください.
  5. 次の手順で,NVIDIAドライバの更新も試みてください.
    • NVIDIA公式サイトのドライバダウンロードページにアクセス.
    • GPUモデル、OS、ドライバタイプを選択.
    • 最新版をダウンロードし、インストーラーを実行(「クリーンインストール」推奨).
    • 確認 (コマンドプロンプト): nvidia-smi

9. このガイドを終えたら:次のステップへ

これで,Windows PC上にAI開発の基本的な環境が構築できました.

この後,AI開発やプログラミング学習をさらに進めるためのステップをいくつか案内します.

このガイドで構築した環境を使い,様々なコードを試すことができます.AI開発の学習が充実したものとなることを期待しています.