AlmaLinux OS 10 のインストールと設定
AlmaLinux OS は,Red Hat Enterprise Linux (RHEL) のソースコードから作られる,RHEL 互換のオペレーティングシステムである. かつて同じ位置付けにあった CentOS Linux は開発が終了し,CentOS Linux 7 は 2024年6月30日にサポート終了 (EOL) となった.AlmaLinux OS は,その後継として利用できるディストリビューションの一つである.
AlmaLinux OS 10 は,2030年5月31日まで active support,2035年5月31日まで security support が予定されている. 本ページ執筆時点の最新のマイナーバージョンは AlmaLinux OS 10.2「Lavender Lion」(2026年5月公開,カーネル 6.12 系)である. マイナーバージョンは,次のマイナーバージョンの公開時に個別のサポートが終了するため,公開後は更新して最新のマイナーバージョンを使用する.
AlmaLinux OS 10 は,x86_64,x86_64_v2,aarch64,ppc64le,s390x に対応する. RHEL 10 が x86-64-v3 以上を要求するのに対し,AlmaLinux OS 10 は x86_64_v2 向けのビルドを提供しており,2013年前後までの古い x86 マシンでも動作する.
【同等の選択肢】
- Rocky Linux 10(RHEL 互換): https://rockylinux.org/
- CentOS Stream 10(RHEL の開発上流。RHEL より先行して更新される): https://www.centos.org/centos-stream/
【目次】
- AlmaLinux OS 10 のダウンロード
- AlmaLinux OS 10 のインストール
- システム更新とリポジトリの追加
- (オプション)NVIDIA ドライバ
- 不要なサービスの停止
- 名前解決とファイアウォールの設定
【サイト内の関連ページ】 「Linux のインストール」 の Web ページ
公式サイト: https://almalinux.org/
DistroWatch の Web ページ: https://distrowatch.com/table.php?distribution=almalinux
準備
システム設定項目(事前に決めておく事項/調べておく事項)
| 設定項目 | データ型 | 本 Web ページでの設定値 |
| OS の種類 | 文字列 | AlmaLinux OS 10.2 (x86_64) |
| ホスト名(コンピュータの名前) | 文字列 | alma10 |
| ドメイン名 | 文字列 | kunihikokaneko.com |
| ネットワークアドレスは固定 IP アドレスか DHCP か | ブール値 | true または false ※ 1) |
| ホスト IP アドレス | IP アドレス | |
| ネットマスク(プレフィックス長) | 文字列 | |
| デフォルトルータ(ゲートウエイ) | IP アドレスまたは完全修飾形式のホスト名 | |
| DNS サーバ(ネームサーバ) | IP アドレスまたは完全修飾形式のホスト名 | |
| 初期ユーザのフルネーム | 文字列 | kunihiko kaneko |
| 初期ユーザのユーザ名 | 文字列 | kaneko |
| 初期ユーザのユーザ ID | 正の整数 | 8010 |
| 初期ユーザのパスワード | 文字列 | <秘密の文字列> |
| 特権ユーザのパスワード (root のパスワード) | 文字列 | <秘密の文字列> |
| タイムゾーン | 文字列 | Asia/Tokyo |
| システムコンソールのキーマップ | 文字列 | 日本語 (Japanese) または 英語 (U.S. English) |
※ 1) ネットワークアドレスは固定 IP アドレスか DHCP か
- 固定 IP アドレス: サーバマシンとして使うなど,IP アドレスを固定的に割り当てる場合に選ぶ.
- DHCP: DHCP クライアントとして設定する場合に選ぶ.
上記の設定は,インストール後にも変更できる.
ハードウェアの条件
- x86_64 の CPU.x86-64-v3 以降に対応する CPU では標準の x86_64 版を使用する.それ以前の CPU では x86_64_v2 版を使用する.
- メモリは 2 GB 以上.デスクトップ環境を使用する場合は 4 GB 以上を用意する.
- DVD ISO は 10 GB 前後になるため,16 GB 以上の USB メモリを用意する.
- インストール先のディスクには 20 GB 以上の空き領域を用意する.
AlmaLinux OS 10 のダウンロード手順
- AlmaLinux の Web ページを開く.
- アーキテクチャとして x86_64(古い CPU の場合は x86_64_v2)を選ぶ.
- ISO イメージファイルの種類を選ぶ.
- DVD ISO: オフラインでもインストールできる.デスクトップ環境や開発ツールを含む.
- Minimal ISO: 最小構成でインストールする.パッケージは後からネットワーク経由で追加する.
- Boot ISO: 起動のみを行い,パッケージはすべてネットワーク経由で取得する.
- ミラーサイトのリストが表示されるので,国内のミラーサイトからダウンロードする.
- ダウンロードしたファイルの検証を行う.
ISO イメージファイルと同じディレクトリにある CHECKSUM ファイルをダウンロードし,次のコマンドを実行する.表示された値が CHECKSUM ファイルに記載された値と一致することを確認する.
sha256sum AlmaLinux-10.2-x86_64-dvd.isoWindows 上では,コマンドプロンプトで次のコマンドを実行し,表示された値が CHECKSUM ファイルに記載された値と一致することを確認する.
certutil -hashfile AlmaLinux-10.2-x86_64-dvd.iso SHA256 - ISO イメージファイルを USB メモリに書き込む.
Windows 上では Rufus または balenaEtcher を使用する. Linux 上では,書き込み先のデバイス名(例: /dev/sdb)を lsblk コマンドで確認した上で,次のコマンドを実行する.
lsblk sudo dd if=AlmaLinux-10.2-x86_64-dvd.iso of=/dev/sdb bs=4M status=progress oflag=sync指定したデバイスのデータは全て消える.デバイス名を取り違えないよう,lsblk の出力で容量とデバイス名を確認してから実行する.
AlmaLinux OS 10 のインストール手順
インストーラは Anaconda である.画面の左上から順に設定する形式ではなく,「インストール概要」の画面で各項目を選んで設定し,最後にインストールを開始する.
- インストールの開始前に,ネットワークケーブルを接続しておく.
インストール中にホスト名や IP アドレスの設定,および Boot ISO でのパッケージ取得を行うためである.
- 作成した USB メモリを接続し,マシンを起動する.
起動デバイスの選択画面(多くの機種では起動直後の F12,F11,Esc キー)で,USB メモリを選ぶ.
- 起動画面では「Install AlmaLinux 10」を選び,Enter キーを押す.
- インストールに使用する言語の選択
日本語 (Japanese) または English (English) を選び, 続行 (Continue) をクリックする.
- インストール概要の画面が表示される.以下,この画面の各項目を設定する.
- 「ソフトウェアの選択」をクリックする.
ベース環境と,選択した環境用のアドオンを選び,「完了」をクリックする.
設定例:デスクトップ環境で開発を行う場合
ベース環境 ワークステーション 選択した環境用のアドオン 開発ツール グラフィカル管理ツール ヘッドレス管理 システムツール設定例:サーバとして使用する場合
ベース環境 最小限のインストール 選択した環境用のアドオン 標準参考: インストール後も,dnf コマンドでパッケージを追加できる.インストール時にすべてを選択する必要はない. 利用できるパッケージグループの一覧は次のコマンドで確認する.dnf group list sudo dnf group install "Development Tools" - 「インストール先」をクリックする.
インストール先のデバイスを選ぶ. 選択したデバイスのデータは全て消えるため,必要なファイルは事前にバックアップしておく.
パーティションは「自動構成」を選ぶ.手動で設定する場合は「カスタム」を選ぶ.ファイルシステムは xfs が既定である.
設定が終わったら「完了」をクリックする.
- 「ネットワークとホスト名」をクリックする.
イーサネットが切断されている場合には,「オフ」から「オン」に変える.
- ホスト名を設定する.
ここで設定するのは,ドメイン名付きの DNS ホスト名である(NIS ドメイン名ではない).本ページの設定値では alma10.kunihikokaneko.com となる. 「適用」をクリックする.
- IP アドレスなどを設定する.
「設定」をクリックし,「IPv4 のセッティング」のタブを開く.
DHCP を使う場合は,「方式」で「自動 (DHCP)」を選ぶ.
固定 IP アドレスを使う場合は,「方式」で「手動」を選び, ホスト IP アドレス, ネットマスク, デフォルトルータ(ゲートウエイ), DNS サーバ(ネームサーバ) を設定する.
設定が終わったら「保存」をクリックし,「完了」をクリックする.
- 「時刻と日付」をクリックする.
タイムゾーンとして「アジア/東京」を選ぶ.時刻同期 (NTP) を有効にし,「完了」をクリックする.
- 「root パスワード」をクリックする.
特権ユーザのパスワード(同じものを 2 箇所に)を設定し,「完了」をクリックする.
AlmaLinux OS 10 では,root アカウントは既定で無効であり,この画面で明示的に有効にする必要がある.root で SSH ログインする場合は,同じ画面のチェックボックスで許可する.運用上は,root での SSH ログインを許可せず,一般ユーザでログインして sudo を使う.
- 「ユーザの作成」をクリックする.
初期ユーザのフルネーム,初期ユーザのユーザ名,初期ユーザのパスワードを設定する.
「このユーザを管理者にする」にチェックを入れると,このユーザは wheel グループに追加され,sudo を使用できる.設定が終わったら「完了」をクリックする.
- 「インストールの開始」をクリックする.
- インストールの終了を確認し,「システムの再起動」をクリックする.
再起動の前に USB メモリを抜く.
- ログイン画面が現れる
これで,インストールは終了である.設定した初期ユーザのユーザ名とパスワードでログインする.
- ワークステーション環境では,初回ログイン時に GNOME の初期設定が動作する場合がある.
言語,キーボードレイアウトと入力メソッド,位置情報サービス,オンラインアカウントを設定する.オンラインアカウントは「スキップ」でもよい.
- 端末を開くには,画面左上の「アクティビティ」をクリックし,「端末」または「Terminal」を検索して起動する.
AlmaLinux OS 10 のデスクトップ環境は Wayland である. RHEL 10 から Xorg サーバは削除された(Xwayland は含まれるため,X11 のアプリケーションは動作する). X11 のセッションを前提とするリモートデスクトップ製品や,画面キャプチャ・自動操作のツールは,Wayland に対応しているか確認してから導入する.
システム更新とリポジトリの追加
dnf を用いたシステム更新
端末を開き,次のコマンドを実行する.
sudo dnf check-update
sudo dnf upgrade
sudo shutdown -r now
「Is this ok [y/N]:」に対しては 「y」+ Enter キーを押す. 確認を省略する場合は,-y オプションを付ける.
EPEL リポジトリの追加
EPEL (Extra Packages for Enterprise Linux) は,RHEL 互換環境向けの追加パッケージを提供するリポジトリである.次のコマンドで追加する.
sudo dnf install epel-release
sudo dnf upgrade
EPEL のパッケージの一部は,CRB (CodeReady Builder) リポジトリのパッケージを必要とする. AlmaLinux OS 10 では CRB は既定で有効である.無効になっている場合は,次のコマンドで有効にする.
sudo dnf config-manager --set-enabled crb
dnf repolist
(オプション)NVIDIA ドライバ
NVIDIA の GPU を使用し,CUDA や OpenGL のアプリケーションを動作させる場合は,NVIDIA ドライバを導入する. NVIDIA が提供する RHEL 10 向けリポジトリを使用する手順は次の通りである.
sudo dnf install epel-release
sudo dnf config-manager --add-repo https://developer.download.nvidia.com/compute/cuda/repos/rhel10/x86_64/cuda-rhel10.repo
sudo dnf clean all
sudo dnf module install nvidia-driver:latest-dkms
sudo shutdown -r now
再起動後,次のコマンドでドライバの動作と GPU の認識を確認する.
nvidia-smi
CUDA Toolkit を使用する場合は,次のコマンドで追加する.
sudo dnf install cuda-toolkit
不要なサービスの停止
サービスの管理は systemd で行う.自動起動が有効になっているサービスの一覧は,次のコマンドで確認する.
systemctl list-unit-files --type=service --state=enabled
使用しないサービスは,systemctl で停止し,自動起動を無効にする.次は,印刷 (cups),Bluetooth,NFS サーバを使わない場合の実行例である.
sudo systemctl disable --now cups.service cups.socket
sudo systemctl disable --now bluetooth.service
sudo systemctl disable --now nfs-server.service
systemctl list-unit-files --type=service --state=enabled
起動時間の内訳から,起動を遅くしているサービスを確認できる.
systemd-analyze blame
名前解決の設定
名前解決に使う DNS サーバや検索ドメインは /etc/resolv.conf に記述される. このファイルは NetworkManager により自動生成されるため,直接編集しても再起動や接続の再確立で上書きされる. 恒久的な設定は,接続の設定として行う.
接続の名前とデバイス名を確認する.
nmcli connection show
DNS サーバと検索ドメインを設定する(「Wired connection 1」は,確認した接続の名前に読み替える).
sudo nmcli connection modify "Wired connection 1" ipv4.dns "192.168.33.1" ipv4.dns-search "kunihikokaneko.com"
sudo nmcli connection up "Wired connection 1"
DHCP から取得した DNS サーバを使わず,設定した値のみを使う場合は,次のように指定する.
sudo nmcli connection modify "Wired connection 1" ipv4.ignore-auto-dns yes
sudo nmcli connection up "Wired connection 1"
設定の結果を確認する.
cat /etc/resolv.conf
resolvectl status
firewalld による通信の制限
外部からの接続の制限には firewalld を使用する. CentOS 7 以降,TCP Wrappers(/etc/hosts.allow,/etc/hosts.deny)は使用されておらず,RHEL 9 以降では tcp_wrappers 自体が削除されているため,アクセス制御は firewalld で行う.
firewalld の状態と,現在の設定を確認する.
sudo systemctl status firewalld
sudo firewall-cmd --list-all
次は,SSH のみを許可する実行例である. --permanent を付けた変更は,--reload を実行した時点で反映される.
sudo firewall-cmd --permanent --add-service=ssh
sudo firewall-cmd --permanent --remove-service=cockpit
sudo firewall-cmd --permanent --remove-service=dhcpv6-client
sudo firewall-cmd --reload
sudo firewall-cmd --list-all
接続元の IP アドレスで制限する場合は,rich rule を使用する. 次は,SSH の接続元を 192.168.33.0/24 に限る実行例である.
sudo firewall-cmd --permanent --remove-service=ssh
sudo firewall-cmd --permanent --add-rich-rule='rule family="ipv4" source address="192.168.33.0/24" service name="ssh" accept'
sudo firewall-cmd --reload
sudo firewall-cmd --list-all
(オプション)SELinux の状態の確認
AlmaLinux OS では SELinux が既定で enforcing になっている. サービスが想定通りに動作しない場合は,SELinux による拒否が原因であることがある.状態と,拒否の記録は次のコマンドで確認する.
getenforce
sudo ausearch -m avc -ts recent
SELinux を無効にするのではなく,semanage や setsebool でポリシーを調整する.たとえば,Web サーバが 8080 番ポートを使用する場合は次のように設定する.
sudo dnf install policycoreutils-python-utils
sudo semanage port -a -t http_port_t -p tcp 8080