Ubuntu 24.04 LTS 初期設定詳細ガイド

【概要】本ガイドは、Ubuntu 24.04 LTSをインストールした後に行う環境構築手順を解説する。セキュリティの向上、日本語環境の最適化、運用効率の改善を目的とした18の設定項目を、コマンドライン操作を中心に示す。

【この記事の対象読者】Ubuntu 24.04 LTSをインストールし、開発や実験に活用したい人。コマンドライン操作(CUI)を通じて、システム更新、セキュリティ設定、日本語環境の設定を行いたい技術者や学生を対象としている。

【重要概念】

目次

  1. 基本概念と準備
    1. 管理者権限(sudo)の基礎知識
    2. ダウンロード元(ミラーサーバー)の設定
    3. aptパッケージ管理の準備
  2. システム更新と時刻設定
    1. システムの更新
    2. タイムゾーンとロケールの設定
    3. NTP時刻同期の設定
  3. セキュリティ設定
    1. ファイアウォール(ufw)の設定
    2. OpenSSHサーバーの設定
  4. ハードウェアとドライバ
    1. グラフィックドライバの設定(NVIDIA)
  5. 日本語環境の構築
    1. 日本語フォントと言語サポートの導入
    2. 日本語入力の設定(IBus + Mozc)
    3. ユーザディレクトリの英語化
  6. システム管理とカスタマイズ
    1. 運用保守用ツールの導入
    2. システムログの確認方法
    3. 電源管理の設定
    4. キーボード設定(Caps Lockの変更)
  7. クリーンアップ
    1. 不要ソフトウェアの削除
    2. 不要ファイルの除去

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【外部リソース】

第1章 基本概念と準備

1. 管理者権限(sudo)の基礎知識

目的

本ガイドのコマンドの多くは管理者権限を必要とする。Ubuntuでは、システム設定の変更やソフトウェア導入にはsudoコマンドを使用するため、最初にその仕組みを理解しておく。

基本的な使い方

インストール時に作成したユーザーアカウントでログインし、コマンドの先頭にsudoを付けて実行する。ユーザー自身のパスワードを入力すると、そのコマンドが管理者権限で実行される。

# 例: パッケージリストを更新(管理者権限が必要)
sudo apt update

重要な点

よくある問題

2. ダウンロード元(ミラーサーバー)の設定

目的

メリット: パッケージのダウンロード速度が向上する。

Ubuntuのパッケージダウンロード元を、地理的に近い日本国内のミラーサーバー(公式サーバーの複製を提供するサーバー)に変更する。

実行コマンド

sedコマンドで/etc/apt/sources.listファイル内のサーバーアドレスを日本のミラー(jp.archive.ubuntu.com)に置換する。

sudo sed -i 's/\/\/archive.ubuntu.com/\/\/jp.archive.ubuntu.com/g' /etc/apt/sources.list
sudo sed -i 's/\/\/us.archive.ubuntu.com/\/\/jp.archive.ubuntu.com/g' /etc/apt/sources.list
sudo sed -i 's/\/\/fr.archive.ubuntu.com/\/\/jp.archive.ubuntu.com/g' /etc/apt/sources.list
sudo apt update

解説と注意点

sudo apt updateで、変更したサーバーから最新のパッケージリスト情報を取得する。

Ubuntu 24.04 LTSでは、一部のリポジトリ設定が/etc/apt/sources.list.d/ディレクトリ内のファイルで管理される場合がある。上記コマンドは主に/etc/apt/sources.listを対象としている。

ミラーサーバー変更後のapt update実行例

3. aptパッケージ管理の準備

目的

メリット: 外部リポジトリ(PPA等)を安全に追加できるようになる。

HTTPSリポジトリの利用やGPG署名の検証に必要な基本ツールをインストールする。

※ PPA(Personal Package Archive): Ubuntu公式以外のソフトウェア配布元

実行コマンド

sudo apt update
sudo apt install ca-certificates curl gnupg lsb-release

解説と注意点

apt関連パッケージインストール例

第2章 システム更新と時刻設定

4. システムの更新

目的

メリット: セキュリティ脆弱性の修正とバグ修正が適用され、システムの安定性・安全性が向上する。

インストールされている全パッケージを最新の状態に更新する。定期的な更新はセキュリティ維持のために重要である

実行コマンド(手動更新)

# 1. パッケージリストを更新
sudo apt update

# 2. パッケージを包括的に更新(依存関係の変更も考慮)
sudo apt full-upgrade

# 3. 不要になったパッケージを削除
sudo apt autoremove

# 4. 古いパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean

# 5. システムを再起動(カーネル更新時に推奨)
sudo shutdown -r now

各コマンドの説明

注意: full-upgradeはシステムに大きな変更を加える可能性がある。重要なシステムでは、実行前にバックアップを取得すること。

自動更新機能(unattended-upgrades)

Ubuntuには、セキュリティ更新を自動的にインストールするunattended-upgrades機能がある。多くの場合、デフォルトで有効である。

自動更新が有効でも全パッケージが対象ではないため、定期的に手動でsudo apt update && sudo apt full-upgradeを実行することを推奨する。

apt update実行例
apt full-upgrade実行例
apt autoremove実行例
apt autoclean実行例

5. タイムゾーンとロケールの設定

目的

メリット: 時刻表示とアプリケーションの表示言語が日本仕様になる。

タイムゾーンを日本標準時(Asia/Tokyo)に、ロケールを日本語UTF-8(ja_JP.UTF-8)に設定する。

実行コマンド

# タイムゾーンを日本標準時に設定
sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo

# 日本語ロケールを有効化
sudo sed -i 's/^# \(ja_JP.UTF-8 UTF-8\)/\1/' /etc/locale.gen

# ロケール定義を生成
sudo locale-gen

# システム全体のデフォルトロケールを設定
sudo update-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LC_ALL=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja:en"

解説と注意点

LANGUAGE="ja:en"は、日本語リソースがない場合に英語をフォールバックとして使用する設定である。

端末でexport LANG=ja_JP.UTF-8を実行しても、そのセッションでのみ有効である。システム全体への永続的な設定は上記のupdate-localeで行う。設定後、再ログインまたは再起動で反映される。

timedatectl実行例
locale-gen実行例
update-locale実行後の確認例

6. NTP時刻同期の設定

目的

メリット: システム時刻が常に正確に保たれ、ログのタイムスタンプやスケジュール実行、SSL証明書の検証が正常に動作する。

ネットワーク上のNTPサーバーと時刻を同期する。Ubuntu 24.04 LTSではsystemd-timesyncdサービスがこの役割を担う。

実行コマンド(確認と設定)

# 現在の時刻同期状態を確認
timedatectl status

# NTP同期が無効な場合は有効化する(通常はデフォルトで有効)
# sudo timedatectl set-ntp true

解説と注意点

第3章 セキュリティ設定

7. ファイアウォール(ufw)の設定

目的

メリット: 外部からの不正アクセスを防ぎ、システムを保護する。

Ubuntuの標準ファイアウォール管理ツールufw(Uncomplicated Firewall)を設定する。インターネット接続環境では不可欠な設定である

実行コマンド

# ufwをインストール(通常はインストール済み)
sudo apt update
sudo apt install ufw

# SSH接続を許可(リモート接続を使う場合、有効化の前に必須)
sudo ufw allow ssh

# ufwを有効化
sudo ufw enable

# 現在の設定を確認
sudo ufw status numbered

オプション: 追加のポート開放

# Webサーバー(HTTP/HTTPS)を許可する場合
# sudo ufw allow http
# sudo ufw allow https

解説と注意点

8. OpenSSHサーバーの設定

目的

メリット: ネットワーク経由で安全にリモート接続できるようになる。

OpenSSHサーバーをインストールし、基本的なセキュリティ設定を行う。

実行コマンド(インストール)

sudo apt update
sudo apt install openssh-server

実行コマンド(セキュリティ強化)

ブルートフォース攻撃のリスクを低減するため、ポート番号の変更とrootログイン禁止を推奨する。

# 1. 設定ファイルを編集
sudo nano /etc/ssh/sshd_config

# 2. 以下を変更
#   Port 22 → Port 10022(任意の1024以上の番号)
#   PermitRootLogin yes → PermitRootLogin no

# 3. 保存して閉じる(nano: Ctrl+O → Enter → Ctrl+X)

# 4. SSHサービスを再起動
sudo systemctl restart sshd

# 5. 新しいポートをファイアウォールで許可
sudo ufw allow 10022/tcp

解説と注意点

より安全性を高めるには、パスワード認証を無効にして公開鍵認証のみを許可する方法があるが、本ガイドの範囲外とする。

第4章 ハードウェアとドライバ

9. グラフィックドライバの設定(NVIDIA)

目的

メリット: NVIDIA製グラフィックカードの性能を引き出せる。

NVIDIA製グラフィックカード搭載時に、プロプライエタリドライバ(製造元提供の専用ドライバ)をインストールする。デフォルトのnouveauドライバ(オープンソース版)では機能・性能が制限される場合がある。

※ NVIDIA製グラフィックカードを搭載していない場合、このステップは不要である

実行コマンド

# 利用可能なドライバを確認
sudo ubuntu-drivers list

# 推奨ドライバを自動インストール
sudo ubuntu-drivers install

# システムを再起動
sudo reboot

動作確認

nvidia-smi

よくある問題

第5章 日本語環境の構築

10. 日本語フォントと言語サポートの導入

目的

メリット: 日本語が正しく表示され、アプリケーションのメニューが日本語化される。

日本語フォントと翻訳データ(言語サポートパッケージ)をインストールする。

実行コマンド

sudo apt update
sudo apt install language-selector-common
sudo apt install $(check-language-support)

解説

check-language-supportコマンドは、現在の言語設定に基づいて必要なパッケージ(日本語フォント、翻訳データ等)を自動検出する。$()構文でその結果をapt installに渡し、一括インストールする。

check-language-supportを使ったインストール例

11. 日本語入力の設定(IBus + Mozc)

目的

メリット: 日本語テキストを入力できるようになる。

日本語入力メソッド(IME)を設定する。Ubuntu 24.04 LTSではIBus(入力フレームワーク)とMozc(Google日本語入力のオープンソース版)の組み合わせが推奨される。

※ サーバー用途などGUIを使用しない環境では不要

インストール

sudo apt update
sudo apt install ibus ibus-mozc
ibus restart

設定手順(GUI)

  1. 「設定」→「キーボード」または「地域と言語」を開く
  2. 「入力ソース」の「+」ボタンをクリック
  3. 「日本語」→「日本語(Mozc)」を選択して追加

入力切り替え

半角/全角キーまたはSuper+スペースキーで日本語入力モードに切り替わる。

日本語入力テスト例

Mozc設定ツール

キーバインドや変換候補の設定を変更する場合:

/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog &

代替: Fcitx5を使用する場合

Waylandで変換候補の表示に問題がある場合など、Fcitx5が有利なことがある。

sudo apt update
sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc mozc-utils-gui
Fcitx5とMozcのインストール例

インストール後、「設定」→「システム」→「地域と言語」で「キーボード入力に使うIMシステム」を「Fcitx 5」に変更し、再ログインする。

再起動コマンド実行例

12. ユーザディレクトリの英語化

目的

メリット: コマンドライン操作時のパス入力が容易になり、一部プログラムとの互換性問題を防げる。

日本語環境でインストールすると作成される日本語名ディレクトリ(「ダウンロード」「ドキュメント」等)を英語名(Downloads、Documents等)に変更する。

実行コマンド

sudo apt update
sudo apt install xdg-user-dirs-gtk
LANG=C LC_ALL=C xdg-user-dirs-gtk-update

解説

LANG=C LC_ALL=Cを先頭に付けることで、一時的に英語ロケールでコマンドを実行し、英語のディレクトリ名を生成させる。

実行後、GUIダイアログが表示される。「Don't ask me this again」にチェックを入れ、「Update Names」をクリックする。

ユーザーディレクトリ名変更確認ダイアログ
ユーザーディレクトリ名変更後の確認例

変更後の~/.config/user-dirs.dirs:

XDG_DESKTOP_DIR="$HOME/Desktop"
XDG_DOWNLOAD_DIR="$HOME/Downloads"
XDG_TEMPLATES_DIR="$HOME/Templates"
XDG_PUBLICSHARE_DIR="$HOME/Public"
XDG_DOCUMENTS_DIR="$HOME/Documents"
XDG_MUSIC_DIR="$HOME/Music"
XDG_PICTURES_DIR="$HOME/Pictures"
XDG_VIDEOS_DIR="$HOME/Videos"

第6章 システム管理とカスタマイズ

13. 運用保守用ツールの導入

目的

メリット: トラブルシューティングやシステム監視が容易になる。

ネットワーク確認やハードウェア情報表示に役立つツールをインストールする。

実行コマンド

sudo apt update
sudo apt install net-tools pciutils

各パッケージの用途

運用保守ツールインストール例

14. システムログの確認方法

目的

メリット: 問題発生時の原因特定が容易になる。

システムの動作記録(ログ)をjournalctlコマンドで確認する方法を知っておく。ログはSystemd(システム管理デーモン)のジャーナルに記録される。

主なコマンド

# リアルタイムでログを監視(Ctrl+Cで終了)
sudo journalctl -f

# 今回の起動以降のログを表示
sudo journalctl -b

# エラー以上のログのみ表示
sudo journalctl -p err

# 特定のサービスのログを表示(例: SSH)
sudo journalctl -u sshd.service

オプション例

# 昨日からのログ
sudo journalctl --since "yesterday"

# 過去1時間のログ
sudo journalctl --since "1 hour ago"

解説

15. 電源管理の設定

目的

メリット: 意図しない画面消灯やスリープを防げる。

一定時間操作がない場合の画面ブランクやサスペンド(スリープ)を抑制する。サーバーや常時稼働デスクトップPCに適した設定である。

※ ラップトップでバッテリー駆動時間を重視する場合は、この設定は行わない

GNOME環境向け設定(Ubuntu標準)

# アイドル時の画面ブランクを無効化
gsettings set org.gnome.desktop.session idle-delay 0

# AC電源時の自動サスペンドを無効化
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type 'nothing'

XFCE環境向け設定(Xubuntuなど)

xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/dpms-enabled -s false
xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/inactivity-sleep-mode-on-ac -s 0

注意点

16. キーボード設定(Caps Lockの変更)

目的

メリット: Caps Lockの誤操作による意図しない大文字入力を防げる。

Caps Lockキーを無効化するか、追加のCtrlキーとして機能させる。

実行方法

/etc/default/keyboardファイルのXKBOPTIONSを編集する。

sudo nano /etc/default/keyboard

XKBOPTIONS行を以下のように変更(既存設定がある場合はカンマで区切って追記):

注意点

第7章 クリーンアップ

17. 不要ソフトウェアの削除

目的

メリット: ディスク容量の節約とシステムの軽量化ができる。

使用しないプリインストールアプリケーション(ゲーム、オフィススイート等)を削除する。

実行コマンド例

# LibreOffice(オフィススイート)を削除
sudo apt purge libreoffice*

# Thunderbird(メールクライアント)を削除
sudo apt purge thunderbird*

# 不要になった依存パッケージを削除
sudo apt autoremove

# 古いパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean

注意点

削除するパッケージは用途に合わせて慎重に選択すること。purgeは設定ファイルも含めて削除する。

18. 不要ファイルの除去

目的

メリット: ディスクスペースを整理できる。

パッケージキャッシュや不要ファイルを削除してクリーンアップする。

推奨コマンド(安全)

# 不要な依存パッケージを削除
sudo apt autoremove

# 古いパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean

オプション: コマンド履歴の削除

# 現在のセッションの履歴をクリア(一時的)
history -c

# 履歴ファイル自体を削除(恒久的・任意)
# rm -f ~/.bash_history

オプション: BleachBit(上級者向け)

# インストール
# sudo apt install bleachbit

# 削除可能な項目を確認
# sudo bleachbit --list

# 削除されるファイルをプレビュー
# sudo bleachbit --preview system.cache

注意点