Ubuntu 24.04 初期設定詳細ガイド
【概要】本ガイドは、Ubuntu 24.04 LTS をインストールした後に行う環境構築手順を解説する。セキュリティの向上、日本語環境の最適化、運用効率の改善を目的とした 18 の設定項目を、コマンドライン操作を中心に示す。
目次
- 用語解説
- 基本概念と準備
- システム更新と時刻設定
- セキュリティ設定
- ハードウェアとドライバ
- 日本語環境の構築
- システム管理とカスタマイズ
- クリーンアップ
【ステップ間の依存関係(推奨実行順)】基本的には番号順に実行する。特に注意すべき依存は次のとおりである。ステップ 7(ufw)はステップ 8(SSH)より先に行い、SSH 用ポートを許可してから ufw を有効化する。ステップ 9(NVIDIA ドライバ)の後は再起動する。ステップ 5(ロケール)と 12(ディレクトリ英語化)は再ログインまたは再起動で反映される。
【サイト内の Ubuntu 関連ページ】
- Ubuntu システムの基本操作ガイド: 別ページ »で説明
- Ubuntu 24.04 のインストールと初期設定ガイド: 別ページ »で説明
- Ubuntu 24.04 初期設定詳細ガイド: 別ページ »で説明
- Linux 基本コマンドとその活用法: 別ページ »で説明
- Ubuntu 24.04 開発・研究環境構築ガイド: 別ページ »で説明
- Ubuntu の使い方: 別ページ »で説明
- Ubuntu システムの管理と運用、各種設定: 別ページ »で説明
- Ubuntu サーバ管理・セキュリティガイド: 別ページ »で説明
【外部リソース】
- Ubuntu の公式ページ(日本語版): https://jp.ubuntu.com/
- Ubuntu 24.04 の公式リリースページ: https://releases.ubuntu.com/noble/
- Ubuntu のダウンロード公式ページ(日本語版): https://jp.ubuntu.com/download
- 公式の Ubuntu ミラーサイトのページ: https://launchpad.net/ubuntu/+cdmirrors
- fosswire.com の Unix/Linux コマンドリファレンス: https://files.fosswire.com/2007/08/fwunixref.pdf
- DistroWatch の Ubuntu のページ: https://distrowatch.com/table.php?distribution=ubuntu
用語解説
- 管理者権限(sudo): システム設定の変更やソフトウェア導入に必要な特権。Ubuntu では root による直接ログインを避け、必要時に sudo コマンドで一時的に管理者権限を行使する。
- APT(パッケージ管理): ソフトウェアの導入、更新、削除を一元管理するシステム。依存関係を自動解決し、コマンドラインからアプリケーションを管理する。
- ミラーサーバー: ソフトウェア配布元のコピーを持つサーバー。国内のサーバーに設定を変更することで、通信経路を短縮しダウンロード速度を改善する。
- ディレクトリの英語化: 「ダウンロード」等の日本語フォルダ名を英語名(Downloads 等)に変更する設定。コマンドラインでのパス入力を容易にし、文字化け等のトラブルを防ぐ。
- LTS: Long Term Support(長期サポート版)の略。通常 5 年間(Ubuntu Pro で 10 年)セキュリティ更新が提供される。長期運用に適する。
- ターミナル: コマンドを入力する画面。GNOME 環境では
Ctrl+Alt+Tで起動できる。 - CUI / GUI: それぞれ Character User Interface(文字での操作)/Graphical User Interface(画面での操作)。
- systemd / systemctl: Ubuntu 標準のシステム管理基盤と、その操作コマンド。サービス(拡張子
.service)やソケット(拡張子.socket)の起動・停止を担う。 - Wayland / X11: Linux のディスプレイサーバ方式(画面描画と入力を扱う仕組み)。Ubuntu 24.04 のデフォルトは Wayland。確認は
echo $XDG_SESSION_TYPE。 - PPA: Personal Package Archive。Ubuntu 公式以外のソフトウェア配布元。
- deb822 形式: Ubuntu 24.04 で標準化されたリポジトリ設定ファイル形式(拡張子
.sources)。1 つの設定を複数行のキー:値ペアで記述する。 - セキュアブート / MOK: UEFI による起動時の署名検証機構と、ユーザー独自の署名鍵(Machine Owner Key)。サードパーティ製ドライバ(NVIDIA 等)の導入時に MOK の登録が必要となる場合がある。
第1章 基本概念と準備
1. 管理者権限(sudo)の基礎知識
目的
本ガイドのコマンドの多くは管理者権限を必要とする。Ubuntu では、システム設定の変更やソフトウェア導入に sudo コマンドを使用するため、最初にその仕組みを理解しておく。
基本的な使い方
インストール時に作成したユーザーアカウントでログインし、コマンドの先頭に sudo を付けて実行する。ユーザー自身のパスワードを入力すると、そのコマンドが管理者権限で実行される。
# 例: パッケージリストを更新(管理者権限が必要)
sudo apt update
重要な点
- root アカウントの無効化: Ubuntu では root による直接ログインはデフォルトで無効である。管理者作業は
sudoを介して行う。 - パスワード入力:
sudoを初めて使用する際や、一定時間経過後に再度使用する際にパスワードが求められる。入力中は画面に文字が表示されないが、正しく入力して Enter キーを押す。
よくある問題
- 「ユーザーは sudoers ファイル内にありません」エラー: インストール時に作成したユーザーでログインしているか確認する。
- パスワードを何度入力しても認証されない: Caps Lock がオンになっていないか、キーボードレイアウトが正しいか確認する。
2. ダウンロード元(ミラーサーバー)の設定
目的
Ubuntu のパッケージダウンロード元を、地理的に近い日本国内のミラーサーバーに変更する。これによりパッケージのダウンロード速度が改善する。
Ubuntu 24.04 でのリポジトリ設定
Ubuntu 24.04 LTS では、リポジトリ設定ファイルの形式が変更された。従来の /etc/apt/sources.list ではなく、deb822 形式の /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources ファイルが使用される。1 つのリポジトリ設定を複数行のキー:値ペアで記述するため、可読性と機械処理性が向上している。
設定ファイルの構造
ubuntu.sources ファイルは以下のような構造を持つ。実際のファイルには通常、メインリポジトリ用ブロックとセキュリティリポジトリ用ブロックの 2 つが含まれる。
Types: deb
URIs: http://archive.ubuntu.com/ubuntu/
Suites: noble noble-updates noble-backports
Components: main restricted universe multiverse
Signed-By: /usr/share/keyrings/ubuntu-archive-keyring.gpg
- Types: パッケージの種類(deb: バイナリ、deb-src: ソースコード)
- URIs: ミラーサーバーの URL
- Suites: リリース名とチャンネル(noble、noble-updates、noble-backports)
- Components: リポジトリセクション(main、restricted、universe、multiverse)
- Signed-By: GPG 鍵ファイルのパス
実行コマンド
sed コマンド(テキスト置換コマンド)で ubuntu.sources ファイル内のサーバーアドレスを日本のミラーに置換する。
# バックアップを作成
sudo cp /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources.backup
# ミラーサーバーを日本に変更(メインリポジトリ)
sudo sed -i 's|http://archive.ubuntu.com/ubuntu/|http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/|g' /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources
sudo sed -i 's|http://us.archive.ubuntu.com/ubuntu/|http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/|g' /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources
# セキュリティリポジトリも日本ミラーに変更(任意)
sudo sed -i 's|http://security.ubuntu.com/ubuntu/|http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/|g' /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources
# パッケージリストを更新
sudo apt update
手動で編集する場合
テキストエディタで直接編集することもできる。
sudo nano /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources
URIs: 行の URL を http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ に変更し、保存後に sudo apt update を実行する。
解説と注意点
sudo apt update で、変更したサーバーから最新のパッケージリスト情報を取得する。エラーが発生した場合は、バックアップファイルから次のように復元できる。
# バックアップから復元
sudo cp /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources.backup /etc/apt/sources.list.d/ubuntu.sources
sudo apt update
3. apt パッケージ管理の準備
目的
HTTPS リポジトリの利用や GPG 署名の検証に必要な基本ツールをインストールする。これにより、公式以外の HTTPS 経由のリポジトリを安全に追加・利用できる前提が整う。
※ PPA(Personal Package Archive:Ubuntu 公式以外のソフトウェア配布元)を扱う場合は、別途 software-properties-common パッケージが必要となる(sudo apt install software-properties-common)。
実行コマンド
sudo apt update
sudo apt install ca-certificates curl gnupg lsb-release
解説と注意点
apt installの前にはsudo apt updateでパッケージリストを最新化するのが基本手順である。本ガイドでは、各ステップの独立性を保つため、必要に応じてapt updateを実行する。- 確認プロンプトを省略したい場合は
-yオプションを追加する(例:sudo apt -y install ...)。 - Ubuntu 24.04 LTS では
aptが標準で HTTPS に対応しており、apt-transport-httpsパッケージは不要である。
第2章 システム更新と時刻設定
4. システムの更新
目的
インストールされている全パッケージを最新の状態に更新する。これによりセキュリティ脆弱性の修正とバグ修正が適用される。定期的な更新はセキュリティ維持のために必要である。
実行コマンド(手動更新)
# 1. パッケージリストを更新
sudo apt update
# 2. パッケージを包括的に更新(依存関係の変更も考慮)
sudo apt full-upgrade
# 3. 不要になったパッケージを削除
sudo apt autoremove
# 4. 古いパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean
# 5. システムを再起動(カーネル更新時に推奨)
sudo shutdown -r now
各コマンドの説明
sudo apt update: パッケージリスト情報を最新化する。sudo apt full-upgrade: 依存関係の変更を含めて包括的に更新する。カーネル更新も対象となる。通常はsudo apt update && sudo apt full-upgradeを定期的に実行する。sudo apt autoremove: 依存されなくなったパッケージを削除し、ディスクスペースを節約する。sudo apt autoclean: 古いパッケージファイル(拡張子.deb)を削除する。sudo shutdown -r now: 更新内容をシステムに適用するため再起動する。
注意: full-upgrade はシステムに大きな変更を加える可能性がある。重要なシステムでは、実行前にバックアップを取得すること。
自動更新機能(unattended-upgrades)
Ubuntu には、セキュリティ更新を自動的にインストールする unattended-upgrades 機能がある。多くの場合、デフォルトで有効である。
対象範囲: 既定では、セキュリティリポジトリ(noble-security)からの更新のみが自動適用される。一般のバグ修正や機能更新(noble-updates)、カーネルメジャーアップデート、新規パッケージ追加は対象外である。したがって、自動更新が有効でも、定期的に手動で sudo apt update && sudo apt full-upgrade を実行することが推奨される。
- 確認方法(GUI): 「ソフトウェアとアップデート」→「アップデート」タブ
- 確認方法(CUI):
/etc/apt/apt.conf.d/20auto-upgradesファイルを確認
5. タイムゾーンとロケールの設定
目的
タイムゾーンを日本標準時(Asia/Tokyo)に、ロケール(地域・言語の設定)を日本語 UTF-8(ja_JP.UTF-8)に設定する。これにより時刻表示とアプリケーションの表示言語が日本仕様になる。
実行コマンド
# タイムゾーンを日本標準時に設定
sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo
# 日本語ロケールを有効化
sudo sed -i 's/^# \(ja_JP.UTF-8 UTF-8\)/\1/' /etc/locale.gen
# ロケール定義を生成
sudo locale-gen
# システム全体のデフォルトロケールを設定(LANG のみ設定)
sudo update-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja:en"
解説と注意点
LANGUAGE="ja:en" は、日本語リソースがない場合に英語をフォールバック(代替)として使用する設定である。
LC_ALL を恒久的に設定しない理由: LC_ALL は他のロケール変数を強制的に上書きする変数であり、Debian / Ubuntu の慣習では恒久設定は推奨されない。これを固定すると、ステップ 12 で行う LANG=C LC_ALL=C xdg-user-dirs-gtk-update のような一時的なロケール切替が効きにくくなる。個別コマンド単位で必要なときだけ LC_ALL=... を前置する方式が安全である。
端末で export LANG=ja_JP.UTF-8 を実行しても、そのセッションでのみ有効である。システム全体への永続的な設定は上記の update-locale で行う。設定後、再ログインまたは再起動で反映される。
6. NTP 時刻同期の設定
目的
ネットワーク上の NTP サーバー(Network Time Protocol:時刻同期サーバー)と時刻を同期する。これによりログのタイムスタンプ、スケジュール実行、SSL 証明書の検証が正常に動作する。Ubuntu 24.04 LTS では systemd-timesyncd サービスがこの役割を担う。
実行コマンド(確認と設定)
# 現在の時刻同期状態を確認
timedatectl status
# NTP 同期が無効な場合は有効化する(通常はデフォルトで有効)
# sudo timedatectl set-ntp true
解説と注意点
timedatectl statusの出力でSystem clock synchronized: yesおよびNTP service: activeと表示されていれば、追加設定は不要である。- 日本国内の NTP サーバー(
ntp.nict.jpなど)を使用する場合は、/etc/systemd/timesyncd.confを編集後、sudo systemctl restart systemd-timesyncd.serviceで再起動する。 - 従来の
ntpやntpdateパッケージは不要である。
第3章 セキュリティ設定
7. ファイアウォール(ufw)の設定
目的
Ubuntu の標準ファイアウォール管理ツール ufw(Uncomplicated Firewall)を設定する。これにより外部からの不正アクセスを防止する。インターネット接続環境では必要な設定である。
実行コマンド
# ufw をインストール(通常はインストール済み)
sudo apt update
sudo apt install ufw
# SSH 接続を許可(リモート接続を使う場合、有効化の前に必須)
sudo ufw allow ssh
# ufw を有効化
sudo ufw enable
# 現在の設定を確認
sudo ufw status numbered
オプション: 追加のポート開放
# Web サーバー(HTTP/HTTPS)を許可する場合
# sudo ufw allow http
# sudo ufw allow https
解説と注意点
- SSH 経由でリモート接続している場合、
sudo ufw allow sshを実行してからsudo ufw enableを実行すること。これを怠ると SSH 接続が切断され、再接続できなくなる。 ufwを有効にすると、デフォルトで外部からの接続(incoming)は拒否、内部からの接続(outgoing)は許可される。- 不要なポートを開放しないことがセキュリティの基本原則である。
- ルールを削除する場合:
sudo ufw status numberedで番号を確認し、sudo ufw delete [番号]を実行する。 - ステップ 8 で SSH ポートを変更する場合、変更後は標準の
ssh(22 番)ルールを削除し、新ポートのみを許可する(次節を参照)。
8. OpenSSH サーバーの設定
目的
OpenSSH サーバーをインストールし、基本的なセキュリティ設定を行う。これによりネットワーク経由でのリモート接続が可能になる。
実行コマンド(インストール)
sudo apt update
sudo apt install openssh-server
Ubuntu 24.04 での SSH 管理方式
Ubuntu 24.04 LTS では、SSH は socket-based activation 方式(接続要求が来たときに初めてデーモンを起動する方式)で管理される。ssh.service が常時起動するのではなく、ssh.socket が接続要求を待ち受け、接続時に SSH デーモンを起動する。この方式によりメモリ使用量が削減される。
Ubuntu 24.04 LTS では、Canonical の公式説明によれば、/etc/ssh/sshd_config の Port および ListenAddress 設定が systemd ジェネレータにより動的に読み取られ、ssh.socket の待ち受けに反映される。したがって、原則として sshd_config の編集だけでポート変更が可能である。ただしアップグレード環境などで設定が反映されない場合があり、その際は後述の方法で ssh.socket 側にも明示的に待ち受けポートを設定する必要がある。
実行コマンド(セキュリティ強化:基本手順)
ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)のリスクを低減するため、ポート番号の変更と root ログイン禁止を推奨する。
# 1. 設定ファイルを編集
sudo nano /etc/ssh/sshd_config
# 2. 以下を変更
# Port 22 → Port 10022(任意の 1024 以上の番号)
# PermitRootLogin yes → PermitRootLogin no
# 3. 保存して閉じる(nano: Ctrl+O → Enter → Ctrl+X)
# 4. 設定の反映
sudo systemctl daemon-reload
sudo systemctl restart ssh.socket
sudo systemctl restart ssh
# 5. 新ポートをファイアウォールで許可し、旧ポート(22)の許可を削除
sudo ufw allow 10022/tcp
sudo ufw delete allow ssh
# 6. 新ポートで待ち受けているか確認
sudo ss -tlnp | grep -E '(:22 |:10022 )'
ポートが変わらない場合のフォールバック
上の手順 6 で :22 のままだった場合、ssh.socket に明示的な待ち受け設定を追加する。
sudo systemctl edit ssh.socket
# エディタが開いたら以下を入力して保存:
#
# [Socket]
# ListenStream=
# ListenStream=10022
#
# 1 行目の空の ListenStream= は「既定値(22 番)をリセット」する宣言で、
# これがないと新ポートと 22 番の両方で待ち受けてしまう
sudo systemctl daemon-reload
sudo systemctl restart ssh.socket
sudo ss -tlnp | grep 10022
解説と注意点
- サービス名: Ubuntu では
sshd.serviceではなくssh.serviceを使用する。systemctl restart sshdはエラーとなる。 - ポート番号の変更: 標準の 22 番は攻撃対象になりやすい。変更後はクライアント側で
ssh user@hostname -p 10022のように指定する。 - root ログイン禁止: 一般ユーザーでログインしてから
sudoを使う運用にすることでセキュリティが向上する。 - ファイアウォールの更新: ポート変更時は新しいポートを許可し、旧ポート許可は削除する。許可忘れは接続不能、旧ポート残置は攻撃面の温存につながる。
- リモート作業時の注意: SSH 設定変更を SSH 経由で行う場合、別セッションを開いたまま新ポートでの接続確認を完了するまで現セッションを切らないこと(締め出し防止)。
パスワード認証を無効にして公開鍵認証のみを許可する方法は、本ガイドの範囲外とする。
第4章 ハードウェアとドライバ
9. グラフィックドライバの設定(NVIDIA)
目的
NVIDIA 製グラフィックカード搭載時に、プロプライエタリドライバ(製造元提供の専用ドライバ)をインストールする。デフォルトの nouveau ドライバ(オープンソース版)では機能・性能が制限される場合があり、専用ドライバの導入により NVIDIA 製グラフィックカードの性能を引き出せる。
本ガイドが想定する LLM 用途では、PyTorch・CUDA 等が NVIDIA プロプライエタリドライバを前提とするため、本ステップは事実上必須である。
※ NVIDIA 製グラフィックカードを搭載していない場合、このステップは不要である。
実行コマンド
# 利用可能なドライバを確認
sudo ubuntu-drivers list
# 推奨ドライバを自動インストール
sudo ubuntu-drivers install
# システムを再起動
sudo reboot
動作確認
nvidia-smi
よくある問題
- 画面が表示されない: セキュアブート(Secure Boot)が原因の場合がある。BIOS で無効化するか、インストール時に表示される MOK(Machine Owner Key:マシン所有者鍵)登録画面で、所有者であることを示すパスフレーズを設定して登録を行う。MOK 登録は、サードパーティ製ドライバに対する署名をユーザー自身が UEFI に承認させるための仕組みである。
- nouveau との競合:
lsmod | grep nouveauで確認し、読み込まれている場合はブラックリストに追加する。
第5章 日本語環境の構築
10. 日本語フォントと言語サポートの導入
目的
日本語フォントと翻訳データ(言語サポートパッケージ)をインストールする。これにより日本語が正しく表示され、アプリケーションのメニューが日本語化される。
実行コマンド
sudo apt update
sudo apt install language-selector-common
sudo apt install $(check-language-support)
解説
check-language-support コマンドは、現在の言語設定に基づいて必要なパッケージ(日本語フォント、翻訳データ等)を検出する。$() 構文(コマンド置換:コマンドの実行結果を別のコマンドの引数として渡す記法)でその結果を apt install に渡し、一括インストールする。
11. 日本語入力の設定(IBus + Mozc)
目的
日本語入力メソッド(IME:Input Method Editor、入力方式)を設定する。これにより日本語テキストの入力が可能になる。Ubuntu 24.04 LTS では IBus(入力フレームワーク)と Mozc(Google 日本語入力のオープンソース版)の組み合わせが標準である。
※ サーバー用途など GUI を使用しない環境では不要である。
インストール
sudo apt update
sudo apt install ibus ibus-mozc
# 注: ibus restart は GUI セッションで ibus が既に起動している場合のみ有効
# 新規インストール直後は実行せず、後述の手順で再ログインして反映させる
設定手順(GUI)
- 「設定」→「キーボード」または「地域と言語」を開く
- 「入力ソース」の「+」ボタンをクリック
- 「日本語」→「日本語(Mozc)」を選択して追加
- 設定後、いったんログアウト→再ログインする(または再起動)
入力切り替え
半角/全角 キーまたは Super+スペース キーで日本語入力モードに切り替わる。
Mozc 設定ツール
キーバインドや変換候補の設定を変更する場合に使用する。
/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog &
Wayland か X11 かの確認
Ubuntu 24.04 のデフォルトは Wayland だが、ログイン画面で X11 セッションを選ぶこともできる。現在のセッション種別は次のコマンドで確認できる。
echo $XDG_SESSION_TYPE
# 出力例: wayland もしくは x11
代替: Fcitx5 を使用する場合
Wayland 環境では、IBus + Mozc で変換候補ウィンドウの表示位置がずれる等の問題が出ることがある。その場合、Wayland 親和性の高い Fcitx5 が代替手段となる。
sudo apt update
sudo apt install fcitx5 fcitx5-mozc mozc-utils-gui
インストール後、「設定」→「システム」→「地域と言語」で「キーボード入力に使う IM システム」を「Fcitx 5」に変更し、再ログインする。
12. ユーザディレクトリの英語化
目的
日本語環境でインストールすると作成される日本語名ディレクトリ(「ダウンロード」「ドキュメント」等)を英語名(Downloads、Documents 等)に変更する。これによりコマンドライン操作時のパス入力が容易になり、一部プログラムとの互換性問題を防げる。
実行コマンド
sudo apt update
sudo apt install xdg-user-dirs-gtk
LANG=C LC_ALL=C xdg-user-dirs-gtk-update
解説
LANG=C LC_ALL=C を先頭に付けることで、一時的に英語ロケールでコマンドを実行し、英語のディレクトリ名を生成させる。
実行後、GUI ダイアログが表示される。「Don't ask me this again」にチェックを入れ、「Update Names」をクリックする。
変更後の ~/.config/user-dirs.dirs:
XDG_DESKTOP_DIR="$HOME/Desktop"
XDG_DOWNLOAD_DIR="$HOME/Downloads"
XDG_TEMPLATES_DIR="$HOME/Templates"
XDG_PUBLICSHARE_DIR="$HOME/Public"
XDG_DOCUMENTS_DIR="$HOME/Documents"
XDG_MUSIC_DIR="$HOME/Music"
XDG_PICTURES_DIR="$HOME/Pictures"
XDG_VIDEOS_DIR="$HOME/Videos"
第6章 システム管理とカスタマイズ
13. 運用保守用ツールの導入
目的
ネットワーク確認やハードウェア情報表示に役立つツールをインストールする。これによりトラブルシューティングやシステム監視が容易になる。
実行コマンド
sudo apt update
sudo apt install net-tools pciutils
各パッケージの用途
net-tools:ifconfig(ネットワーク情報表示)、netstat(接続状況表示)などを提供する。現在はipコマンドが主流だが、互換性のために有用である。pciutils:lspciコマンドを提供する。グラフィックカードやネットワークカードなど PCI デバイスの情報を表示する。
14. システムログの確認方法
目的
システムの動作記録(ログ)を journalctl コマンドで確認する方法を知っておく。これにより問題発生時の原因特定が容易になる。ログは systemd(システム管理デーモン)のジャーナル(記録の保存先)に記録される。
主なコマンド
# リアルタイムでログを監視(Ctrl+C で終了)
sudo journalctl -f
# 今回の起動以降のログを表示
sudo journalctl -b
# エラー以上のログのみ表示
sudo journalctl -p err
# 特定のサービスのログを表示(例: SSH)
sudo journalctl -u ssh.service
オプション例
# 昨日からのログ
sudo journalctl --since "yesterday"
# 過去 1 時間のログ
sudo journalctl --since "1 hour ago"
解説
-f: リアルタイム監視。操作直後のログ確認に使用する。-b: 起動時の問題確認に使用する。-p: 優先度でフィルタする。優先度は低い順にdebug<info<notice<warning<err<crit<alert<emergとなる。-u: サービス名を指定する。サービス一覧はsystemctl list-units --type=serviceで確認できる。
15. 電源管理の設定
目的
一定時間操作がない場合の画面ブランク(画面消灯)やサスペンド(スリープ)を抑制する。これにより意図しない画面消灯やスリープを防げる。サーバーや常時稼働デスクトップ PC に適した設定である。
※ ラップトップでバッテリー駆動時間を重視する場合は、この設定は行わない。
GNOME 環境向け設定(Ubuntu 標準)
# アイドル時の画面ブランクを無効化
gsettings set org.gnome.desktop.session idle-delay 0
# AC 電源時の自動サスペンドを無効化
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type 'nothing'
XFCE 環境向け設定(Xubuntu など)
xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/dpms-enabled -s false
xfconf-query -c xfce4-power-manager -p /xfce4-power-manager/inactivity-sleep-mode-on-ac -s 0
注意点
- デスクトップ環境やバージョンによってコマンドが異なる場合がある。「そのようなスキーマやキーはありません」エラーが出た場合は、設定名が異なっている。
- GUI の「設定」→「電源」からも変更できる。
16. キーボード設定(Caps Lock の変更)
目的
Caps Lock キーを無効化するか、追加の Ctrl キーとして機能させる。これにより Caps Lock の誤操作による意図しない大文字入力を防げる。
実行方法
/etc/default/keyboard ファイルの XKBOPTIONS を編集する。
sudo nano /etc/default/keyboard
XKBOPTIONS 行を以下のように変更する(既存設定がある場合はカンマで区切って追記)。
- Caps Lock を Ctrl 化:
XKBOPTIONS="ctrl:nocaps" - Caps Lock を無効化:
XKBOPTIONS="caps:none"
注意点
- 既存の
XKBOPTIONSがある場合は上書きせず、カンマで区切って追記する(例:XKBOPTIONS="lv3:ralt_switch,ctrl:nocaps")。 - 設定反映には再ログインまたは再起動が必要である。
第7章 クリーンアップ
17. 不要ソフトウェアの削除
目的
使用しないプリインストールアプリケーション(オフィススイート、メールクライアント等)を削除する。これによりディスク容量の節約とシステムの軽量化ができる。
実行コマンド例
# LibreOffice(オフィススイート)を削除
sudo apt purge 'libreoffice*'
# Thunderbird(メールクライアント)を削除
sudo apt purge 'thunderbird*'
# 不要になった依存パッケージを削除
sudo apt autoremove
# 古いパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean
注意点
削除するパッケージは用途に合わせて選択すること。purge は設定ファイルも含めて削除する。
パッケージ名にワイルドカード(*:任意の文字列にマッチする記号)を使う際は、シングルクォート(')で囲うこと。引用符を付けずに libreoffice* と書くと、シェルがカレントディレクトリのファイル名にマッチさせてしまい、意図しないパッケージ指定や予期せぬ展開が発生する場合がある。
18. 不要ファイルの除去
目的
パッケージキャッシュや不要ファイルを削除してクリーンアップする。これによりディスクスペースを整理できる。
推奨コマンド(安全)
# 不要な依存パッケージを削除
sudo apt autoremove
# 古いパッケージキャッシュを削除
sudo apt autoclean
オプション: コマンド履歴の削除
# 現在のセッションの履歴をクリア(一時的)
history -c
# 履歴ファイル自体を削除(恒久的・任意)
# rm -f ~/.bash_history
注意点
apt autoremoveとapt autocleanは安全に実行できる。定期的な実行を推奨する。- より広範なクリーンアップを行うツールとして BleachBit があるが、誤操作でシステムに必要なファイルを削除するリスクがあるため、通常は
apt autoremoveとapt autocleanで十分である。