Pythonプログラミングスタートガイド
1. はじめに:Windowsのメモ帳で始めるプログラム作成と実行
1.1 プログラミングへの第一歩:準備は簡単です
プログラミング(コンピュータへの命令を記述すること)を始めようと思ったとき,「どのように操作したらよいのだろう」「専用のツールが必要なのでは?」と心配になることがあります.しかし,心配は不要です.Windowsに標準で搭載されているメモ帳(テキストエディタ:文字入力用ソフトウェア)と,無料でダウンロードできるPython(プログラミング言語)があれば十分です.
この方法は本格的なPythonプログラミングの第一歩となります.メモ帳でプログラムを書き保存し実行する,この基本的な手順を説明していきます.
まずは簡単なプログラムから始めます.「Hello, World!」(プログラミング学習で使用される基本的なプログラム)と表示するだけの簡単なプログラムを動かしたり,他の人が作成したプログラムを実行したりできます.ここで学ぶメモ帳の使い方とプログラムの実行方法は,プログラミングの基礎となる重要な知識です.
1.2 プログラミングの準備:PythonとWindowsメモ帳を使えるようにしよう
まずはプログラムを動かすための準備をします.Python(プログラミング言語)をインストールする方法は2つあります.
Pythonのインストール手順
【方法1:winget(Windowsパッケージマネージャー)を使用したインストール】
- Windowsで,コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)
- winget(Windowsパッケージマネージャー)が利用可能か確認する:
winget --version
- Pythonのインストール(下のコマンドにより Python 3.12 がインストールされる).
【方法2:インストーラーを使う方法】
- Pythonの公式サイト(https://www.python.org)にアクセスし,画面上部の「Downloads」(ダウンロード)をクリック
- メニューから「Windows」を選ぶ
- 表示される「Python 3.12.X (Xは数字)」の中から,「Windows installer (64-bit)」(64ビット版)を選択.「X」は数が大きいものを選ぶ.
- 「64-bit」は,最近のWindowsパソコンで標準的に使用されている方式です
- 「32-bit」は,古いパソコンのためのものです
- ダウンロードしたファイル(python-3.12.X-amd64.exe)をダブルクリック
- 「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」と表示されたら「はい」をクリック
- インストーラーが開いたら,以下の3つの重要な設定を確認します:
- 「Add python.exe to PATH」(必須):チェックを入れる
- これにより,どのフォルダからでもPythonを実行できるようになります
- 「Use admin privileges when installing py.exe」(推奨):チェックを入れる
- これにより,Pythonをより安全に実行できるようになります
- 「Customize installation」(推奨):チェックを入れる
- これにより,追加の設定画面が表示されます
- 「Add python.exe to PATH」(必須):チェックを入れる
- 「Next」をクリックすると,「Optional Features」(追加機能)の画面が表示されます
- すべての項目にチェックが入っていることを確認
- 「Next」をクリック
- 「Advanced Options」(詳細設定)の画面が表示されます
- 「Install Python 3.12 for all users」(すべてのユーザー用にインストール):チェックを入れる
- これにより,このパソコンを使う全員がPythonを使えるようになります
- 「Install for all users」を選択すると,自動的にインストール先が「C:\Program Files\Python312」に変更されます
- これは推奨される設定です.変更しないでください
- その他の項目はデフォルト(最初から入っているチェック)のままで問題ありません
- 「Install Python 3.12 for all users」(すべてのユーザー用にインストール):チェックを入れる
- 「Install」をクリックしてインストール開始
- インストールには数分かかることがあります
- インストール中はパソコンの操作を控えめにしてください
- 「Setup was successful」(セットアップ成功)と表示されたら「Close」をクリック
インストールの確認方法(どちらの方法でインストールした場合も,必ず確認してください)
- 新しくコマンドプロンプトを開く:
- 「Windowsキー」+「R」を押す
- 「cmd」と入力して「OK」をクリック
- 以下のコマンドを入力してEnterキーを押す:
python --version
- 「Python 3.12.2」のように表示されればインストール成功です
作業用フォルダの作成手順
- キーボードの「Windowsキー」+「D」を押してデスクトップ(作業画面)を表示
- デスクトップの何もないところで右クリック
- 表示されるメニューから「新規作成」→「フォルダ」を選択
- フォルダ名を「python_programs」と入力してEnterキーを押す
メモ帳の使い方とプログラムの保存
- スタートメニュー(画面左下のWindowsマーク)をクリック
- 「メモ帳」と入力すると上に「メモ帳」アプリが表示されます
- メモ帳をクリックして起動
- プログラムを入力(または貼り付け)
- 「ファイル」メニューから「名前を付けて保存」を選択
- 保存先を「デスクトップ」→「python_programs」フォルダに変更
- 画面下の「ファイルの種類」を「すべてのファイル(*.*)」に変更(これにより`.txt`拡張子が付かなくなります)
- ファイル名を「○○○.py」と入力(○○○は好きな名前,例:「test.py」,`.py`はPythonプログラムであることを示す拡張子)
- 「保存」をクリック
1.3 プログラムの実行:いよいよプログラムを動かしてみよう
コマンドプロンプトの開き方
- キーボードの「Windowsキー」+「R」を押す
- 表示された「ファイル名を指定して実行」に「cmd」と入力
- 「OK」をクリックすると黒い画面(コマンドプロンプト)が開きます
プログラムの実行手順
- 作業フォルダへの移動:
- 「cd デスクトップ\python_programs」と入力してEnterキーを押す(cdは「change directory:フォルダを変更する」の略)
- スペースや日本語が含まれるフォルダ名は「"」で囲む(例:「cd "デスクトップ\My Python"」)
- プログラムの実行:
- 「python プログラム名.py」と入力してEnterキーを押す
- プログラム名は作成時に付けた名前(例:「python test.py」)
- 大文字小文字は区別されるので注意(Pythonでは「Test.py」と「test.py」は異なるファイルとして扱われます)
よくあるエラーとその対処法
- 「'python' は内部コマンドまたは外部コマンド...」と表示される場合:
- Pythonのインストールをやり直し,「Add Python to PATH」にチェックを入れる
- 「No such file or directory」(そのようなファイルまたはディレクトリはありません)と表示される場合:
- cdコマンドでフォルダを正しく移動できていない
- 「dir」と入力してEnterを押すと現在のフォルダの内容が確認できます
- 「ModuleNotFoundError」(モジュールが見つかりません)と表示される場合:
- プログラムが必要としている部品(モジュール:プログラムの部品)が不足している
- エラーメッセージをメモして解決策を調べる
1.4 プログラミングの世界を広げよう:理解と改造に挑戦
プログラムの中身を見てみよう
- 保存したプログラムをメモ帳で開く:
- python_programsフォルダ内のファイルをダブルクリック
- 「プログラムを選んで開く」と表示されたら「メモ帳」を選択
- プログラムの説明を探す:
- 「#」で始まる行がプログラムの説明文(コメント:プログラムの説明や補足)
- 複数行の説明は「'''」や「"""」で囲まれている(複数行コメント)
- よく使われる命令を覚える:
- print("Hello"):「Hello」を画面に表示する命令
- input("名前:"):「名前:」と表示して入力を待つ命令
- a = 123:変数(データを一時的に保存する場所)aに123を記憶させる命令
プログラムを変更する例
- 簡単な変更:
- print("Hello")をprint("こんにちは")に変更
- 数値計算の値を変更(例:123を456に)
- 少し進んだ変更:
- 表示する内容を増やす
- 計算の種類を変える
- 入力できる項目を増やす
- python_programsフォルダ内のファイルをダブルクリック
- 「プログラムを選んで開く」と表示されたら「メモ帳」を選択
- 「#」で始まる行がプログラムの説明文(コメント:プログラムの説明や補足)
- 複数行の説明は「'''」や「"""」で囲まれている(複数行コメント)
- print("Hello"):「Hello」を画面に表示する命令
- input("名前:"):「名前:」と表示して入力を待つ命令
- a = 123:変数(データを一時的に保存する場所)aに123を記憶させる命令
- print("Hello")をprint("こんにちは")に変更
- 数値計算の値を変更(例:123を456に)
- 表示する内容を増やす
- 計算の種類を変える
- 入力できる項目を増やす
失敗を恐れる必要はありません.元のプログラムを別名で保存しておけば,いつでも元に戻すことができます.
次のステップに向けて
基本的な操作に慣れてきたら:
- プログラミングの教科書や講座で基礎を学ぶ
- Visual Studio Code(高機能なプログラム編集ツール:統合開発環境)などの開発ツールに挑戦
- 自分でプログラムを1から作成してみる
インストールでよくあるトラブル
- 「'python' は内部コマンドまたは外部コマンド...」と表示される場合:
- 方法1の場合:インストールをやり直し,「Add python.exe to PATH」にチェックを入れる
- 方法2の場合:コマンドプロンプトを開き直す
- 「アクセスが拒否されました」と表示される場合:
- コマンドプロンプトを管理者として実行(管理者権限で実行)
- スタートメニューで「cmd」を右クリック→「管理者として実行」を選択
- インストーラーがダウンロードできない場合:
- Microsoft EdgeまたはGoogle Chrome(Webブラウザ:インターネットを閲覧するソフトウェア)を使用
- ダウンロードフォルダに書き込み権限があることを確認