ISO イメージファイルからライブ USB メモリの作成 (Ventoy を使用)

【概要】この記事では、Ventoy を使用して、LinuxディストリビューションのISOイメージファイルから起動可能なライブUSBメモリを作成する手順を解説する。Ventoy は USB メモリに一度インストールすれば、以後は ISO ファイルをコピーするだけで起動メニューに追加される方式のツールである。1本の USB メモリに複数の ISO ファイルを置ける。第1パーティションは exFAT で作成されるため、Ubuntu 24.04 LTS や Ubuntu 26.04 LTS のように4GBを超える ISO ファイルも扱える。最新版は 1.1.17(2026年7月24日公開)である。

【目次】

  1. Ventoy のダウンロード
  2. USB メモリへの Ventoy のインストール手順
  3. ISO イメージファイルのコピー
  4. ライブUSBからの起動
  5. 永続的保存領域(Persistence)の設定
  6. Ventoy の更新
  7. 起動しない場合のトラブルシューティング
ライブUSBメモリとは、USBメモリをパソコンに接続して起動することで、オペレーティングシステムを直接起動できるようにしたものである。内蔵ハードディスクへのインストールが不要で、OSの試用やトラブルシューティングに利用できる。また、このライブUSBメモリを使用して、パソコンの内蔵ディスクへLinuxをインストールできる。

この記事では、Ventoy を使用したライブUSBメモリの作成手順を解説する。

Ventoy の特徴:

他の選択肢: 1つの ISO を書き込むだけでよい場合は、Ubuntu 公式の Startup Disk Creator (usb-creator-gtk)、Windows 用の Rufus、クロスプラットフォームの balenaEtcher も使用できる。

Ventoy のダウンロード

  1. 公式サイトへのアクセス: Webブラウザで、Ventoy の公式サイトのダウンロードページにアクセスする。

    https://www.ventoy.net/en/download.html

    公式サイトの配信が混雑している場合は、SourceForge のファイル置き場からダウンロードする。

    https://sourceforge.net/projects/ventoy/files

  2. パッケージの選択: Ventoy を実行するパソコンの OS に対応するパッケージをダウンロードする。
    • Windows で実行する場合: ventoy-x.x.xx-windows.zip
    • Linux(Ubuntu を含む)で実行する場合: ventoy-x.x.xx-linux.tar.gz

    (注意: ここで選択するのは Ventoy を実行するパソコンの OS であり、ライブUSBに入れる Linux ディストリビューションではない。)

  3. チェックサムの確認: ダウンロードしたファイルの SHA-256 値を、公式サイトが公開している値と照合し、ファイルが破損していないことを確認する。

    Ubuntu の端末での確認例

    cd ~/Downloads
    sha256sum ventoy-1.1.17-linux.tar.gz
    

    Windows のコマンドプロンプトでの確認例

    cd %USERPROFILE%\Downloads
    certutil -hashfile ventoy-1.1.17-windows.zip SHA256
    

USB メモリへの Ventoy のインストール手順

【作業開始前の確認事項】

  1. 事前準備
    • USBメモリの用意: ライブUSBとして使用するUSBメモリを用意する。置く ISO ファイルの合計サイズ+永続領域(設定する場合)+αの容量が必要である。Ubuntu 26.04 LTS の ISO を1つ置く場合でも、16GB 以上のものを推奨する。
    • フォーマット: Ventoy のインストール時に USB メモリ全体が再構成されるため、事前のフォーマットは不要である。
    • ISOイメージのダウンロード: 使用したい Linux ディストリビューションの公式サイトから、ISO イメージファイルをダウンロードしておく。Ubuntu の場合は https://jp.ubuntu.com/download から入手する。ダウンロード後、公式サイトが公開しているチェックサム(SHA256)と照合して破損がないことを確認する。
  2. Windows での Ventoy のインストール手順
    1. ダウンロードした ventoy-x.x.xx-windows.zip を展開する。
    2. USB メモリをパソコンに接続する。
    3. 展開したフォルダ内の Ventoy2Disk.exe を実行する。管理者権限を要求される場合がある。
    4. 「Device」欄に、対象の USB メモリが表示されていることを確認する。表示されているドライブレターと容量を、エクスプローラの表示と照合して確認する。
    5. 「Option」メニューで、パーティション形式(MBR または GPT)と Secure Boot 対応の有無を必要に応じて設定する。既定は MBR であり、多くのパソコンではそのままでよい。
    6. Install」をクリックする。確認のダイアログが表示されるので、内容を確認して実行する。
    7. 完了のメッセージが表示されたら、Ventoy2Disk.exe を終了する。
  3. Ubuntu での Ventoy のインストール手順(GUI 版)
    1. USB メモリをパソコンに接続する。
    2. 端末を開き、ダウンロードしたファイルを展開して、展開先のディレクトリに移動する。
      cd ~/Downloads
      tar zxf ventoy-1.1.17-linux.tar.gz
      cd ventoy-1.1.17
      
    3. GUI 版のプログラムを実行する。x86_64 の Ubuntu では次のコマンドを実行する。
      sudo ./VentoyGUI.x86_64
      

      GTK 版と QT 版のどちらを使うかは自動的に選択される。QT 版を使いたい場合は sudo ./VentoyGUI.x86_64 --qt5 を実行する。

    4. 「Device」欄で対象の USB メモリを選択し、「Install」をクリックする。
  4. Ubuntu での Ventoy のインストール手順(コマンドライン版)

    GUI 版が起動しない場合は、コマンドライン版を使用する。

    1. USB メモリをパソコンに接続する。
    2. 端末を開き、次のコマンドを実行して、USB メモリのデバイス名を確認する。
      lsblk -o NAME,SIZE,MODEL,TRAN,MOUNTPOINT
      

      「TRAN」列が usb となっている行のデバイス名(/dev/sdb など)と、容量が対象の USB メモリと一致することを確認する。デバイス名を間違えると、そのディスクのデータがすべて失われる

    3. 端末で、展開先のディレクトリに移動する。
      cd ~/Downloads/ventoy-1.1.17
      
    4. 次のコマンドを実行して、Ventoy を USB メモリにインストールする。/dev/sdX の部分は、手順2で確認したデバイス名(パーティション番号を付けない、ディスク全体を指す名前)に置き換える。
      sudo sh Ventoy2Disk.sh -i -s /dev/sdX
      

      主なオプションは次のとおりである。

      • -i: Ventoy をインストールする(既にインストール済みの場合は中止される)
      • -I: 強制的にインストールする
      • -u: インストール済みの Ventoy を更新する
      • -l: インストール済みの Ventoy の情報を表示する
      • -s: Secure Boot 対応を有効にする
      • -g: GPT パーティション形式を使用する(既定は MBR)

ISO イメージファイルのコピー

Ventoy のインストールが完了すると、USB メモリは2つのパーティションに分割される。第1パーティション(既定では exFAT、ラベルは Ventoy)に ISO ファイルをコピーする。

  1. USB メモリを接続し直すと、第1パーティションがファイルマネージャに表示される。
  2. ダウンロードした ISO ファイルを、第1パーティションにコピーする。ルートディレクトリでもサブディレクトリでもよい。Ventoy は起動時に全てのディレクトリを再帰的に検索し、見つかった ISO ファイルをアルファベット順にメニューへ表示する。

    Ubuntu の端末でコピーする場合の例(マウント先のパスは環境により異なる)

    cp ~/Downloads/ubuntu-26.04-desktop-amd64.iso /media/$USER/Ventoy/
    sync
    

    sync コマンドは、書き込みバッファの内容をディスクへ確実に書き出すために実行する。

  3. コピーが完了したら、USB メモリを安全に取り外す。

ライブUSBからの起動

  1. 作成したライブUSBをパソコンに接続したまま、パソコンを再起動する。
  2. パソコンの起動直後(メーカーロゴ表示中など)に、特定のキー(例: F2、F10、F12、Del、Esc など。パソコンのメーカーや機種により異なる)を押して、BIOS/UEFI設定画面またはブートメニューを呼び出す。
  3. ブート順序(Boot Order)の設定で、USBメモリを最優先の起動デバイスに設定する。あるいは、ブートメニューから USB メモリを直接選択する。
  4. 設定を保存して再起動すると、Ventoy の起動メニューが表示される。コピーした ISO ファイルの一覧から、起動したいものをカーソルキーで選び、Enter キーを押す。
  5. ISO ごとの起動方式を選ぶ画面が表示された場合は、「Boot in normal mode」を選ぶ。この方式で起動しない ISO については、「Boot in grub2 mode」など他の方式を試す。

Secure Boot について: Secure Boot が有効なパソコンで Ventoy を初めて起動すると、鍵の登録画面(Enroll Key)が表示される。画面の指示に従って鍵を登録すると、以後は通常どおり起動する。この操作は、パソコンごとに初回の1回だけ必要である。機種によっては、UEFI 設定で「Allow Microsoft 3rd Party UEFI CA」を有効にする必要がある。

永続的保存領域(Persistence)の設定

ライブ起動した OS 上で行った変更(設定変更、ファイル作成、パッケージのインストールなど)は、既定では再起動するとすべて消去される。変更を保存して次回の起動時にも引き継ぐには、永続的保存領域(Persistence)を設定する。Ventoy では、保存用のデータファイルを第1パーティションに置き、設定ファイルで対応づける方式をとる。

この機能は、Ubuntu、Linux Mint、MX Linux、Arch Linux など、永続化に対応したディストリビューションで利用できる。ディストリビューションによって使用するラベル名が異なり、Ubuntu 系は casper-rw、Arch Linux 系は vtoycow である。

  1. 保存用データファイルの作成

    Ventoy 公式サイトから CreatePersistentImg.sh をダウンロードし、Linux の端末で実行する。

    https://www.ventoy.net/download/CreatePersistentImg.sh

    cd ~/Downloads
    sudo bash CreatePersistentImg.sh -s 4096 -t ext4 -l casper-rw
    

    上の例では、サイズ 4096MB(4GB)、ファイルシステム ext4、ラベル casper-rw の persistence.dat が作成される。オプションを省略した場合は、サイズ 1GB、ext4、ラベル casper-rw となる。

    作成済みのデータファイルは、https://github.com/ventoy/backend/releases からダウンロードすることもできる。

  2. データファイルの配置

    作成した persistence.dat を、USB メモリの第1パーティションにコピーする。ルートディレクトリでもサブディレクトリでもよい。

    mkdir -p /media/$USER/Ventoy/persistence
    cp persistence.dat /media/$USER/Ventoy/persistence/ubuntu.dat
    sync
    
  3. 設定ファイルの作成

    USB メモリの第1パーティションに /ventoy/ventoy.json を作成し、ISO ファイルとデータファイルの対応を記述する。

    {
        "persistence": [
            {
                "image": "/ubuntu-26.04-desktop-amd64.iso",
                "backend": "/persistence/ubuntu.dat"
            }
        ]
    }
    

    image には ISO ファイルのパスを、backend にはデータファイルのパスを、いずれも第1パーティションのルートからの絶対パスで記述する。この JSON ファイルは、GUI の設定ツール VentoyPlugson で作成することもできる。

  4. 起動時の選択

    設定した ISO を選んで起動すると、永続領域を使用するかどうかを選ぶメニューが表示される。永続領域を使用する項目を選ぶと、変更内容が persistence.dat に保存される。

永続領域の容量が不足した場合は、ExtendPersistentImg.sh でデータファイルを拡張できる(ext4 のみ対応)。

sudo bash ExtendPersistentImg.sh persistence.dat 2048

Ventoy の更新

Ventoy の新しいバージョンが公開された場合、USB メモリ上の Ventoy を更新できる。更新操作では第1パーティションのファイルは変更されないため、コピー済みの ISO ファイルはそのまま残る。

Windows の場合は、新しいバージョンの Ventoy2Disk.exe を実行し、対象の USB メモリを選択して「Update」をクリックする。

Ubuntu の場合は、新しいバージョンを展開したディレクトリで、次のコマンドを実行する。/dev/sdX の部分は、lsblk コマンドで確認した USB メモリのデバイス名に置き換える。

sudo sh Ventoy2Disk.sh -u /dev/sdX

起動しない場合のトラブルシューティング

作成したライブUSBから起動できない場合、以下の点を確認すること。

*(補足)Fedoraディストリビューションに特化したライブUSB作成ツールとして、Fedora公式の「Fedora Media Writer」がある。詳細はFedora公式サイト(https://fedoraproject.org/)を参照すること。