Ubuntu で Cubic を使用して ISO イメージファイルを作る
Cubic は,Ubuntu の ISO イメージファイルをカスタマイズするためのグラフィカルなツールです。主に以下の操作を簡単に行えます。
- 既存の Ubuntu ISO イメージを元に、カスタマイズ用のプロジェクトを作成
- chroot 環境の仮想ターミナルを通じて、パッケージの追加・削除・更新を実行
- 設定ファイルの編集や、独自のファイルの追加
- カスタマイズ後の新しい ISO イメージファイルの生成
◆ カスタマイズ ISO イメージファイルの主な用途
カスタマイズした ISO イメージファイルから 「Ubuntu でライブ USB メモリ の作成」の手順で,ライブ USB メモリ を作ることができます.このライブ USB メモリ は
- カスタマイズした Ubuntu 環境をライブ USB メモリとして起動し、利用できる
- カスタマイズ済みの Ubuntu システムを、他のマシンに容易にインストールできる(特定のツールや設定をプリインストールした状態にできる)
◆ このページでは次のことを行う.(Ubuntu 環境を想定)
- Ubuntu に Cubic をインストール
- Cubic を使用した Ubuntu ISO イメージのカスタマイズと新しい ISO イメージの作成
例: パッケージの追加・削除、設定変更
前準備 (Ubuntu 環境)
- システム更新
Cubic をインストールする前に、作業を行う Ubuntu 環境を最新の状態にしておくことを推奨します。
システム更新: 別ページ »で説明
sudo apt update sudo apt upgrade -y
- Ubuntu の ISO イメージファイルを入手しておく
カスタマイズの元となる公式の Ubuntu ISO ファイル (例: `ubuntu-24.04-desktop-amd64.iso`) をダウンロードしておきます。
Cubic のインストール (Ubuntu)
Cubic は公式リポジトリには含まれていないため、PPA (Personal Package Archive) を追加してインストールします。(この PPA は Ubuntu 24.04 に対応しています)
- Cubic の PPA を追加します。
sudo apt-add-repository ppa:cubic-wizard/release
リポジトリの追加を確認するプロンプトが表示されたら、Enter キーを押します。
- パッケージリストを更新します。
sudo apt update
- Cubic をインストールします。
sudo apt install cubic -y
これで Cubic のインストールは完了です。
使ってみる (Cubic の基本的な使い方)
(注: 以下に示す画像は古い UCK のものであり、実際の Cubic の画面とは異なります。テキストの説明に従って操作してください。)
- Cubic を起動
アプリケーションメニューから「Cubic」を検索して起動します。
- プロジェクトディレクトリの選択
Cubic は作業用にプロジェクトディレクトリを作成します。任意の空のディレクトリを選択または新規作成してください。
- 元となる ISO イメージの選択
「前準備」でダウンロードした Ubuntu の公式 ISO イメージファイル (`ubuntu-24.04-desktop-amd64.iso` など) を選択します。
Cubic が自動的にカスタマイズ後の ISO に関する情報 (ファイル名、バージョンなど) を抽出・表示します。必要に応じて編集できます。
「Next」をクリックすると、Cubic が ISO ファイルを展開し、chroot 環境の準備を開始します。これには数分かかる場合があります。
- chroot 環境でのカスタマイズ (ターミナル操作)
ISO の展開が終わると、自動的に仮想環境 (chroot) のターミナルウィンドウが開きます。ここがカスタマイズ作業の中心です。
このターミナル内での操作は、作成される ISO イメージに直接反映されます。
以下は、このターミナル内で行うカスタマイズ操作の例です。
- パッケージリストの更新とアップグレード
まず、パッケージリストを最新にし、既存のパッケージをアップグレードするのが一般的です。
apt update apt upgrade -y
- リポジトリの追加 (例: Canonical パートナーリポジトリ)
特定のソフトウェアに必要なリポジトリを追加できます。(注: リポジトリの追加・変更はシステムの安定性に影響する可能性があるため、慎重に行ってください)
(以下は `/etc/apt/sources.list` を編集してパートナーリポジトリを有効化する例です)
# nano エディタなどで /etc/apt/sources.list を開く nano /etc/apt/sources.list # 該当する行のコメント (#) を削除して有効化 (例: Ubuntu 24.04 Noble) # deb https://archive.canonical.com/ubuntu noble partner # ↓ (行頭の # を削除) # deb https://archive.canonical.com/ubuntu noble partner # Ctrl+O で保存、Ctrl+X で終了 # パッケージリストを更新 apt update
- 不要なパッケージの削除 (例: ゲーム、特定のツール)
ISO イメージから不要なソフトウェアを削除して、サイズを削減したり、特定の用途に特化させたりできます。
# 例: GNOME ゲーム関連の削除 apt remove -y gnome-games aisleriot gnome-mahjongg gnome-mines gnome-sudoku quadrapassel # 例: Thunderbird (メールクライアント) の削除 apt remove -y thunderbird
- 必要なパッケージの追加 (例: 開発ツール、特定のアプリ)
必要なソフトウェアをあらかじめ ISO イメージに含めておくことができます。
# 例: VLC メディアプレイヤーのインストール apt install -y vlc # 例: Git バージョン管理システムのインストール apt install -y git # 例: LibreOffice (もし最小インストール等で主要コンポーネントがない場合) apt install -y libreoffice-calc libreoffice-writer libreoffice-impress
- 設定ファイルの編集や追加
chroot 環境内で、通常通り `/etc` 以下の設定ファイルを編集したり、ホームディレクトリのテンプレート (`/etc/skel/`) に設定ファイルを追加したりできます。
例: `/etc/skel/.bashrc` を編集すると、新しいユーザー作成時にその `.bashrc` がホームディレクトリにコピーされます。
- ファイルのコピー
Cubic のウィンドウで、chroot 環境のターミナルが表示されているタブの隣に、ファイルブラウザのようなタブがあります。ホスト OS からカスタマイズ環境へファイルをドラッグ&ドロップでコピーすることも可能です (例: スクリプト、設定ファイル、壁紙など)。
- (オプション) カスタマイズ後のパッケージリストの保存
後で参照するために、インストールされているパッケージのリストを保存できます。
dpkg --get-selections > /packages.list
(このファイルは `/` (ルートディレクトリ) に作成されます。後で Cubic のファイルコピー機能を使ってホスト OS に取り出すことができます)
- 依存関係の修復 (必要に応じて)
パッケージ操作後に依存関係の問題が発生した場合に実行します。
apt -f install
カスタマイズ作業が一通り完了したら、chroot 環境のターミナルは閉じて構いません。
- パッケージリストの更新とアップグレード
- ISO 生成の準備
Cubic のメインウィンドウに戻り、「Next」をクリックします。
- カーネルの選択
通常、ISO に含まれるべき Linux カーネルが自動で選択されています。古いカーネルなどを削除するオプションがありますが、よくわからない場合はデフォルトのまま「Next」をクリックしてください。
- ISO 生成オプション
ISO ファイルの圧縮形式などを選択します。通常はデフォルト (gzip) で問題ありません。「Next」をクリックします。
- ISO イメージの生成
「Generate」ボタンをクリックすると、カスタマイズ内容を反映した新しい ISO イメージファイルの生成が開始されます。これには数分から数十分かかる場合があります。
進行状況が表示されます。
- 完了の確認
ISO イメージの生成が完了すると、作成された ISO ファイルのパスと MD5 チェックサムが表示されます。
「Finish」をクリックして Cubic を終了します。指定したプロジェクトディレクトリ内に、カスタマイズされた ISO イメージファイル (`*.iso`) が作成されています。
できた ISO イメージファイルを使ってみる
作成したカスタマイズ ISO イメージが意図通りに動作するか確認します。
◆ qemu を用いたシステム起動チェック
仮想環境で手軽に起動テストを行うことができます。
* ISO イメージファイルがうまく作成出来たかのテストを兼ねます.
(注: `/path/to/your/custom.iso` は実際に作成された ISO ファイルのパスに置き換えてください。`-m 2048` はメモリ割り当て量 (MB) の例です。環境に合わせて調整してください。)
# qemu-kvm と qemu-utils がインストールされていることを確認
sudo apt -y update
sudo apt -y install qemu-kvm qemu-utils
# 仮想ディスクイメージを作成 (テスト用、80Gは例)
qemu-img create -f qcow2 cubic_test.img 80G
# 64 ビット Linux ISO の場合
qemu-system-x86_64 -hda cubic_test.img -cdrom /path/to/your/custom.iso -boot d -m 2048 -usb
◆ ISO イメージ・ファイルを VMware Workstation Player / VirtualBox を使って起動
VMware Workstation Player (Ver 17 以上推奨) や VirtualBox (最新版推奨) などの仮想化ソフトウェアでも起動テストが可能です。仮想マシンの設定で、作成した ISO イメージファイルを CD/DVD ドライブにマウントして起動します。仮想マシンの OS タイプは「Ubuntu (64-bit)」などを選択します。
◆ Rufus や BalenaEtcher を用いてライブ USB メモリを作成し、実機で起動
仮想環境でのテスト後、実機での動作確認を行う場合は、Rufus (Windows) や BalenaEtcher (Linux, macOS, Windows) などのツールを使って、作成した ISO イメージファイルからライブ USB メモリを作成します。
- ライブ USB として使う: 作成した USB メモリから PC を起動し、Ubuntu が正常に起動するか、カスタマイズが反映されているかを確認します。
- USB を使ってインストールした場合: うまく起動できない場合があります (特にハードウェア固有のドライバなど)。
そのようなときは、まず PC 起動時に SHIFT キー (BIOS の場合) や ESC キー (UEFI の場合が多い) を押しながら起動して,起動メニュー (GRUB メニュー) を出してください。そして、「Advanced options for Ubuntu」などからリカバリモード (recovery mode) を選んで起動を試みてください.これで対処できる場合があります(一度リカバリモードで正常に起動できれば、次回以降は通常起動できる場合もあります)