Xming の X サーバソフトウェアのインストール(Windows 上)
この記事では、Windows 環境でX ServerソフトウェアであるXmingをインストールし、基本的な設定とテスト実行を行う手順を解説します。リモートのUNIX/Linux環境のGUIアプリケーションをWindows上で利用したい場合などに役立ちます。
はじめに
X Serverとは、主にUNIXやLinuxなどのOSで利用されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)システムである「X Window System」のサーバ側コンポーネントです。Windows環境でX Serverソフトウェア(Xmingなど)を利用することで、別のマシン(例:Linuxサーバー)で動作しているGUIアプリケーションの画面を、手元のWindows PC上に表示・操作することが可能になります。
Xmingは、Windows向けのX Serverソフトウェアの一つです。この記事では、そのインストールと基本的な使い方を説明します。
Xmingのバージョンと入手に関する注意:
- XmingにはSourceForgeで配布されている旧版(パブリックドメイン)と、公式サイトで提供されている最新版(寄付が必要)があります。この記事では、SourceForgeから入手可能な旧版 (6.9.0.31、2007年リリース) を例に説明します。
- 公式サイト: http://www.straightrunning.com/XmingNotes/
- SourceForge配布サイト: http://sourceforge.net/projects/xming
- 注意: Xming(特にSourceForge版)は長期間更新されていません。現在では、より活発に開発されている代替ソフトウェアも存在します。例えば、VcXsrv や、Windows 11以降で利用可能な Windows Subsystem for Linux (WSL) の標準機能である WSLg (特別な設定なしにLinux GUIアプリを利用可能) などがあります。ご自身の環境や要件に合わせて選択してください。
Xmingのインストール
Xming本体と、文字表示に必要なフォントをインストールします。
3.1. Xming本体のダウンロードとインストール
- ダウンロード:
Xmingの旧版(パブリックドメイン)はSourceForgeからダウンロードできます。
http://sourceforge.net/projects/xming を開きます。
Xming の右横の「Download」ボタンをクリックします。
ファイルリストから「Xming-6-9-0-31-setup.exe」を探し、クリックしてダウンロードします。
* 補足: 最新の寄付版は公式サイト http://www.straightrunning.com/XmingNotes/ から入手できますが、手順が異なる場合があります。
- インストーラーの起動:
ダウンロードした
Xming-6-9-0-31-setup.exe
ファイルを実行します。 - ようこそ画面:
「Next」をクリックします。
- インストール先の設定:
通常はデフォルトのままで問題ありません。「Next」をクリックします。
- コンポーネントの選択:
通常はデフォルトのままで問題ありません。SSHクライアント(PuTTY)などが不要な場合はチェックを外すことも可能ですが、迷ったらデフォルトのまま「Next」をクリックします。
- スタートメニューフォルダの設定:
デフォルトのままでよいです。「Next」をクリックします。
- 追加タスクの選択:
デスクトップやクイック起動バーにXLaunch(Xmingの設定・起動ツール)のアイコンを作成するかなどを選択します。「
Create a desktop icon for XLaunch
」にチェックを入れておくと、後で起動する際に便利です。選択後、「Next」をクリックします。 - インストールの開始:
内容を確認し、「Install」をクリックします。
- インストール完了:
「Finish」をクリックします。
インストール完了画面で「
Launch Xming
」にチェックが入っていると、「Finish」クリック後にXmingが自動的に起動します。(ただし、この時点ではフォントがインストールされていないため、設定ツール(XLaunch)を先に進める前に、次のフォントインストールを行うことを推奨します。)
3.2. Xmingフォントのダウンロードとインストール
- ダウンロード:
Xming本体をダウンロードしたSourceForgeのページ (http://sourceforge.net/projects/xming/files/) に戻り、「Xming-fonts」を探します。
Xming-fonts の右横の「Download」をクリックします。
ファイルリストから「Xming-fonts-7-4-0-3-setup.exe」を探し、クリックしてダウンロードします。
- インストーラーの起動:
ダウンロードした
Xming-fonts-7-4-0-3-setup.exe
ファイルを実行します。 - ようこそ画面:
「Next」をクリックします。
- インストール先の設定:
Xming本体と同じ場所が指定されていることを確認し、「Next」をクリックします。(通常はデフォルトのままでよいです。)
- ファイルの確認:
既に同じファイルが存在する場合、上書きを確認するメッセージが表示されることがあります。通常は「はい」をクリックして問題ありません。
- コンポーネントの選択:
インストールするフォントを選択します。通常はデフォルト(全て選択)のままで問題ありません。「Next」をクリックします。
- スタートメニューフォルダの設定:
デフォルトのままでよいです。「Next」をクリックします。
- インストールの開始:
内容を確認し、「Install」をクリックします。
- インストール完了:
「Finish」をクリックします。
XLaunchによるXmingの設定と起動
Xming X Serverの起動と設定は、XLaunch というツールを使って行います。デスクトップに作成したアイコン、またはスタートメニューからXLaunchを起動してください。
- ディスプレイ設定 (Display settings):
起動するX Serverの表示モードを選択します。「
Multiple windows
」(デフォルト、各Xアプリケーションが個別のWindowsウィンドウとして表示)が一般的です。選択後、「次へ」をクリックします。 - セッション種別 (Session type):
Xming起動時に同時にプログラムを起動するかどうかを選択します。リモートサーバーのプログラムを起動する場合は「
Start a program
」を選びます。単にX Serverだけを起動しておき、後からSSHクライアントなどで接続する場合は「Start no client
」を選びます。ここでは例として「Start no client
」を選択し、「次へ」をクリックします。(後述のテスト実行で接続方法を説明します。)*「
Start no client
」を選んだ場合は、あとで、手動でクライアント(SSH接続など)を起動することになります。「Start a program
」を選んで最初からリモートプログラムを起動することも可能です。 - 追加パラメータ (Extra Parameters):
必要に応じて、クリップボード設定や追加のコマンドラインパラメータ(例:フォントサーバーの指定
-fp tcp/localhost:7100
など)を設定します。通常はデフォルトのままで問題ありません。「次へ」をクリックします。 - 設定完了と起動:
「
Save configuration
」をクリックすると、ここまでの設定内容を.xlaunch
という拡張子のファイルに保存できます。次回以降、このファイルをダブルクリックするだけで同じ設定でXmingを起動でき便利です。最後に「完了」をクリックすると、設定に従ってXming (X Server) が起動します。* X Serverはバックグラウンドで動作するため、通常、起動しても新しいウィンドウは表示されません。Windowsのタスクトレイ(通知領域)にXmingのアイコンが表示されていれば、正常に起動しています。
テスト実行の例
Xming X Serverを起動した状態で、リモートのUNIX/LinuxマシンやローカルのCygwin環境からGUIアプリケーションを利用する例を紹介します。
- UNIX/LinuxマシンにリモートログインしてGUIアプリケーションを使う例
前提条件: この例では、接続先のUNIX/LinuxマシンにSSHでログインできること、およびWindows側にPuTTYなどのSSHクライアントがインストールされ、X11 Forwardingが有効になっていることを前提とします。(MobaXtermを使用する場合は、MobaXtermが内部でX Server機能を持っているため、通常Xmingは不要です。)
- PuTTYなどのSSHクライアントで、接続先ホストへのセッション設定を開きます。
- 「接続」->「SSH」->「X11」カテゴリで、「X11フォワーディングを有効にする」にチェックが入っていることを確認します。(X display location は空欄または `localhost:0` で通常問題ありません。)
- 設定を保存し、リモートマシンにログインします。
- ログイン後、ターミナルで `xeyes` や `xclock` などの簡単なXアプリケーションを起動してみます。
- コマンドを実行すると、Windowsのデスクトップ上にそのアプリケーションのウィンドウが表示されるはずです。表示されればXmingとの連携は成功です。
(もしXLaunchで `Start a program` と `Using PuTTY or SSH` を選んだ場合は、XLaunchがSSH接続とプログラム起動を自動で行います。)
- ローカルのCygwin環境でgnuplotを使う例
前提条件: この例を実行するには、事前にCygwin環境がセットアップされ、`gnuplot` パッケージ (`x11` カテゴリの `gnuplot` もしくは `math` カテゴリの `gnuplot`) がインストールされている必要があります。
gnuplot は、グラフ描画等の機能を持ったソフトウェアです。
- Cygwinのターミナル(例: Cygwin.bat や mintty)を開きます。
- 以下のコマンドを実行します:
# Xアプリケーションの表示先を、ローカルマシン(127.0.0.1)で動作するXmingサーバー(:0.0)に設定します。 export DISPLAY=127.0.0.1:0.0 # gnuplotを起動 gnuplot # gnuplot内でグラフを描画(新しいウィンドウが表示されるはずです) plot sin(x) # gnuplotを終了 exit
* `export DISPLAY=127.0.0.1:0.0` を毎回入力するのが面倒な場合は、Cygwinのホームディレクトリにある `.bashrc` ファイル(なければ作成)の末尾にこの行を追記しておくと、ターミナル起動時に自動で設定されます。