Whisper のインストール,Whisper を使う Python プログラム(音声からの文字起こし,翻訳)(Python,PyTorch を使用)(Windows 上)
【要約】 Whisperは,音声からの文字起こしや翻訳に使用されるモデルである.このページで説明するWhisperのインストール(Windows)および動作確認手順に従い,Pythonプログラムを使用して実行することができる.FFmpegをインストールすることで,音声ファイルからの文字起こしを実行し,結果をテキストファイルに保存することも可能である.
【目次】
Whisper
Whisperは,音声からの文字起こし,翻訳 訓練されたモデルが既存のデータセットにゼロショットで適用可能であり、データセット固有のファインチューニングを必要とせずに高品質な結果を達成することを特徴とする.
【文献】
Alec Radford, Jong Wook Kim, Tao Xu, Greg Brockman, Christine McLeavey, Ilya Sutskever, Robust Speech Recognition via Large-Scale Weak Supervision, arXiv:2212.04356, 2022.
https://cdn.openai.com/papers/whisper.pdf
【サイト内の関連ページ】
- マイクに話しかけた言葉を,リアルタイムにAIが認識(whisper, whisper_mic, Python を使用)(Windows 上)別ページ »で説明
【関連する外部ページ】
- Paper with Code のページ: https://paperswithcode.com/paper/robust-speech-recognition-via-large-scale-1
- Introducing Whisper のページ: https://openai.com/index/whisper/
- GitHub のページ: https://github.com/openai/whisper
【関連項目】 mallorbc の whisper_mic
前準備
Build Tools for Visual Studio 2022 (ビルドツール for Visual Studio 2022)または Visual Studio 2022 のインストール(Windows 上)
【インストールの判断】 Build Tools for Visual Studio は,開発ツールセットである. Visual Studio は統合開発環境であり,いくつかの種類があり,Build Tools for Visual Studioの機能を含むか連携して使用するものである.インストールは以下の基準で判断してください:
- Build Tools for Visual Studio の機能のみが必要な場合
- Visual Studio の機能が必要である,あるいは,よく分からない場合
Visual Studio 2022 をインストールする際に,「C++ によるデスクトップ開発」を選択することで, Build Tools for Visual Studio 2022 の機能も一緒にインストールされる.
不明な点がある場合は,Visual Studio 全体をインストール を行う方が良い.
Build Tools for Visual Studio 2022 のインストール(Windows 上)
- Windows で,コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)
次のコマンドを実行
次のコマンドは,Build Tools for Visual Studio 2022と VC2015 再配布可能パッケージをインストールするものである.
- Build Tools for Visual Studio 2022 での C++ によるデスクトップ開発,CLI,ATL,MFC のインストール(Windows 上)
- Visual Studio Installer の起動
起動方法: スタートメニューの「Visual Studio Installer」を選ぶ.
- Visual Studio Build Tools 2022 で「変更」を選ぶ.
- 「C++ によるデスクトップ開発」をクリック.そして,画面右側の「インストール」の詳細で「v143 ビルドツール用 C++/CLI サポート(最新)」,「ATL」,「MFC」をチェックする.その後,「変更」をクリック.
- Visual Studio Installer の起動
Visual Studio のインストール(Windows 上)
- Windows で,コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)
次のコマンドを実行
- コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)
- インストールコマンドの実行
winget install Microsoft.VisualStudio.2022.Community --scope machine --override "--add Microsoft.VisualStudio.Workload.NativeDesktop Microsoft.VisualStudio.ComponentGroup.NativeDesktop.Core Microsoft.VisualStudio.Component.VC.CLI.Support Microsoft.VisualStudio.Component.CoreEditor Microsoft.VisualStudio.Component.NuGet Microsoft.VisualStudio.Component.Roslyn.Compiler Microsoft.VisualStudio.Component.TextTemplating Microsoft.VisualStudio.Component.Windows.SDK.Latest Microsoft.VisualStudio.Component.VC.Tools.x86.x64 Microsoft.VisualStudio.Component.VC.ATL Microsoft.VisualStudio.Component.VC.ATLMFC" winget install Microsoft.VisualStudio.2022.Community --scope machine Microsoft.VCRedist.2015+.x64
インストールされるコンポーネントの説明:
NativeDesktop
:C++によるデスクトップアプリケーション開発のためのワークロード一式NativeDesktop.Core
:C++デスクトップ開発に必要な基本コンポーネント群VC.CLI.Support
:マネージドコードとネイティブコードの統合開発を可能にするC++/CLIサポートCoreEditor
:コード編集,デバッグ,検索などの基本機能を提供するVisual StudioのコアエディタNuGet
:.NETライブラリの依存関係を管理するパッケージ管理システムWindows.SDK.Latest
:Windows 向けアプリケーション開発用SDK(Software Development Kit)VC.Tools.x86.x64
:32ビット及び64ビット向けC++コンパイラとビルドツールVC.ATL
:Windowsコンポーネント開発用のActive Template LibraryVC.ATLMFC
:デスクトップアプリケーション開発用のMicrosoft Foundation Class Library
システム要件と注意事項:
- 管理者権限でのインストールが必須
- 必要ディスク容量:10GB以上
- 推奨メモリ:8GB以上のRAM
- インストール過程でシステムの再起動が要求される可能性がある
- 安定したインターネット接続環境が必要
追加のコンポーネントが必要な場合は,Visual Studio Installerを使用して個別にインストールすることが可能である.
- インストール完了の確認
winget list Microsoft.VisualStudio.2022.Community
トラブルシューティング:
インストール失敗時は,以下のログファイルを確認:
%TEMP%\dd_setup_<timestamp>.log %TEMP%\dd_bootstrapper_<timestamp>.log
- Visual Studio での C++ によるデスクトップ開発,CLI のインストール(Windows 上)
- Visual Studio Installer の起動
起動方法: スタートメニューの「Visual Studio Installer」を選ぶ.
- Visual Studio Community 2022 で「変更」を選ぶ.
- 「C++ によるデスクトップ開発」をチェック.そして,画面右側の「インストール」の詳細で「v143 ビルドツール用 C++/CLI サポート(最新)」をチェックする.その後,「インストール」をクリック.
- Visual Studio Installer の起動
Python 3.10,Git のインストール(Windows 上)
Pythonは,プログラミング言語の1つ. Gitは,分散型のバージョン管理システム.
【手順】
- Windows で,コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)
次のコマンドを実行
次のコマンドは,Python ランチャーとPython 3.10とGitをインストールし,Gitにパスを通すものである.
次のコマンドでインストールされるGitは 「git for Windows」と呼ばれるものであり, Git,MinGW などから構成されている.
winget install --scope machine Python.Launcher winget install --scope machine Python.Python.3.10 winget install --scope machine Git.Git powershell -command "$oldpath = [System.Environment]::GetEnvironmentVariable(\"Path\", \"Machine\"); $oldpath += \";c:\Program Files\Git\cmd\"; [System.Environment]::SetEnvironmentVariable(\"Path\", $oldpath, \"Machine\")"
【関連する外部ページ】
- Python の公式ページ: https://www.python.org/
- Git の公式ページ: https://git-scm.com/
【サイト内の関連ページ】
【関連項目】 Python, Git バージョン管理システム, Git の利用
Build Tools for Visual Studio 2022,NVIDIA ドライバ,NVIDIA CUDA ツールキット 11.8,NVIDIA cuDNN 8.9.7 のインストール(Windows 上)
【サイト内の関連ページ】 NVIDIA グラフィックスボードを搭載しているパソコンの場合には, NVIDIA ドライバ, NVIDIA CUDA ツールキット, NVIDIA cuDNN のインストールを行う.
- Windows での Build Tools for Visual Studio 2022 のインストール: 別ページ »で説明
- Windows での NVIDIA ドライバ,NVIDIA CUDA ツールキット 11.8,NVIDIA cuDNN v8.9.7 のインストール手順: 別ページ »で説明
【関連する外部ページ】
- Build Tools for Visual Studio 2022 (ビルドツール for Visual Studio 2022)の公式ダウンロードページ: https://visualstudio.microsoft.com/ja/visual-cpp-build-tools/
- NVIDIA ドライバのダウンロードの公式ページ: https://www.nvidia.co.jp/Download/index.aspx?lang=jp
- NVIDIA CUDA ツールキットのアーカイブの公式ページ: https://developer.nvidia.com/cuda-toolkit-archive
- NVIDIA cuDNN のダウンロードの公式ページ: https://developer.nvidia.com/cudnn
PyTorch のインストール(Windows 上)
- Windows で,コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)
- PyTorch のページを確認
- 次のようなコマンドを実行(実行するコマンドは,PyTorch のページの表示されるコマンドを使う).
次のコマンドを実行することにより, PyTorch 2.3 (NVIDIA CUDA 11.8 用)がインストールされる. 但し,Anaconda3を使いたい場合には別手順になる.
事前に NVIDIA CUDA のバージョンを確認しておくこと(ここでは,NVIDIA CUDA ツールキット 11.8 が前もってインストール済みであるとする).
PyTorch で,GPU が動作している場合には,「torch.cuda.is_available()」により,True が表示される.
python -m pip install -U --ignore-installed pip python -m pip uninstall -y torch torchvision torchaudio torchtext xformers python -m pip install -U torch torchvision torchaudio numpy --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu118 python -c "import torch; print(torch.__version__, torch.cuda.is_available())"
Anaconda3を使いたい場合には, Anaconda プロンプト (Anaconda Prompt) を管理者として実行し, 次のコマンドを実行する. (PyTorch と NVIDIA CUDA との連携がうまくいかない可能性があるため,Anaconda3を使わないことも検討して欲しい).
conda install -y pytorch torchvision torchaudio pytorch-cuda=11.8 cudnn -c pytorch -c nvidia py -c "import torch; print(torch.__version__, torch.cuda.is_available())"
【サイト内の関連ページ】
【関連する外部ページ】
Whisper のインストール(Windows 上)
FFmpeg のインストール(Windows 上)
Windows での FFmpeg のインストール(Windows 上): 別ページ »で説明
Whisperのインストール(Windows上)
- Windows で,コマンドプロンプトを管理者権限で起動する(例:Windowsキーを押し,「cmd」と入力し,「管理者として実行」を選択)。
- Whisper本体をダウンロードしてインストールします。以下のコマンドを実行してください。
(注意:環境によっては依存関係のあるFFmpegのインストールも別途必要になる場合があります。)
python -m pip install -U openai-whisper
- (オプション)動作確認用ファイルの準備
ここでは例として、ホームディレクトリに必要なファイルをダウンロードします。Whisperの公式リポジトリをクローン(複製)することで、テスト用の音声ファイルなどを取得できます。
まず、ホームディレクトリに移動します。
cd /d c:%HOMEPATH%
もし以前に同じ名前の 'whisper' ディレクトリが存在する場合は、以下のコマンドで削除します。(注意:このコマンドは 'whisper' フォルダとその中身を完全に削除します。必要なファイルが含まれていないか確認してください。)
rmdir /s /q whisper
公式リポジトリをクローンします。
git clone --recursive https://github.com/openai/whisper.git
コマンドラインでのWhisperの基本的な使い方
インストールが完了したら、コマンドラインからWhisperを使ってみましょう。先ほど(オプションで)ダウンロードしたテスト用音声ファイル (`jfk.flac`) を使って、基本的な文字起こしを試してみます。
基本的なコマンドの書式は以下の通りです。
whisper <音声ファイルパス> --model <モデルサイズ> --language <言語>
- <音声ファイルパス>:文字起こししたい音声ファイルのパスを指定します。(例: `%HOMEPATH%\whisper\tests\jfk.flac`)。MP3, WAV, M4A, MP4など様々な形式に対応しています。
- --model <モデルサイズ>:使用するモデルのサイズを指定します。
tiny
,base
,small
,medium
,large
(または `large-v2`, `large-v3` など最新版) があります。モデルが大きいほど精度は高くなりますが、計算リソース(メモリ、時間)も多く必要になります。tiny.en
,base.en
,small.en
,medium.en
といった英語専用モデルもあります。 - --language <言語>:音声の言語を指定します(例:
English
,Japanese
)。指定しない場合、Whisperが自動検出を試みますが、明示的に指定する方が確実です。対応言語は多数あります(例:Chinese
,German
,Spanish
,Russian
,Korean
,French
など)。
- 次のコマンドを実行して文字起こしを行います。
実行すると、文字起こし結果がコンソールに表示され、同時に音声ファイルと同じディレクトリにテキストファイル(`.txt`, `.vtt`, `.srt`など)としても保存されます。
smallモデル, English で実行する場合:
whisper %HOMEPATH%/whisper/tests/jfk.flac --model small --language English
largeモデル, Japanese で実行する場合(もし日本語音声ファイルがあれば):
(注意:jfk.flacは英語の音声ファイルのため、Japaneseを指定しても英語として認識される可能性が高いです。日本語の音声ファイルでお試しください。)whisper <日本語音声ファイルのパス> --model large --language Japanese
(例:`%HOMEPATH%/whisper/tests/jfk.flac` を large, Japanese で実行した場合の表示例)
whisper %HOMEPATH%/whisper/tests/jfk.flac --model large --language Japanese
- (補足)音声ファイルの再生
Windowsでは、コマンドプロンプトから以下のようにパスを指定して実行すると、関連付けられたアプリケーションで音声ファイルが再生される場合があります。(環境によります)
あるいは、エクスプローラーでファイルを直接ダブルクリックして再生することもできます。
%HOMEPATH%\whisper\tests\jfk.flac
4. PythonプログラムからのWhisper利用
コマンドラインだけでなく、PythonスクリプトからWhisperライブラリを直接利用することも可能です。これにより、他のプログラムと連携させたり、より複雑な処理を行ったりすることができます。ここでは、ファイル選択ダイアログで選んだ複数の音声ファイルを順番に文字起こしする簡単な例を示します。
- Pythonスクリプトの作成
まず、作業用のディレクトリに移動し、テキストエディタでPythonスクリプトファイルを作成します。ここでは例として、先ほど `git clone` した `whisper` ディレクトリ内に `small.py` という名前で作成します。(別の場所、別のファイル名でも構いません)
Windows で コマンドプロンプト を起動し、以下を実行します。
cd /d c:%HOMEPATH%\whisper notepad small.py
- プログラムコードの入力
開いたエディタ(メモ帳)に、以下のPythonコードをコピー&ペーストして保存します。
このプログラムは、公式の GitHub のページ: https://github.com/openai/whisperで公開されているサンプルコードを参考に、ファイル選択機能などを追加したものです。
import whisper # 使用するモデルをロード(初回はダウンロードが実行される) # "tiny", "base", "small", "medium", "large"などを指定可能 model = whisper.load_model("small") # ファイル選択ダイアログ表示のためのライブラリをインポート import tkinter as tk from tkinter import filedialog # ファイル選択ダイアログの準備 root = tk.Tk() root.withdraw() # 空のTkinterウィンドウを非表示にする # ファイル選択ダイアログを開き、複数選択を可能にする fpaths = filedialog.askopenfilenames() # 選択された各ファイルに対して処理を実行 for fpath in root.tk.splitlist(fpaths): print("Processing file: ", fpath) # 文字起こしを実行(言語を日本語に指定) # 必要に応じて language="english" などに変更 result = model.transcribe(fpath, language="japanese") # 結果のテキスト部分を表示 print("Transcription:") print(result["text"]) print("-" * 20) # ファイルごとの区切り線
コードの簡単な説明:
import whisper
: Whisperライブラリを使えるようにします。model = whisper.load_model("small")
: 使用するWhisperモデル(ここでは "small")をメモリに読み込みます。指定したモデルがローカルにない場合、自動的にダウンロードされます。import tkinter ...
: ファイル選択ダイアログを表示するための準備です。Pythonの標準ライブラリを使用しています。fpaths = filedialog.askopenfilenames()
: ファイル選択ダイアログを表示し、ユーザーが選択したファイル(複数可)のパスを取得します。for fpath in ...
: 選択されたファイルパスのリストを一つずつ取り出し、ループ処理を行います。result = model.transcribe(fpath, language="japanese")
: 各ファイルパス (`fpath`) をWhisperの `transcribe` メソッドに渡し、文字起こしを実行します。ここでは言語を日本語 (`language="japanese"`) に指定していますが、英語の場合は `language="english"` などと指定します。言語を指定しない場合は自動検出されます。print(result["text"])
: 文字起こし結果(辞書形式)の中から、テキスト部分 (`"text"`) を取り出してコンソールに出力します。
- Python プログラムの実行
作成したPythonスクリプトを実行するには、コマンドプロンプトでスクリプトを保存したディレクトリ(この例では `c:%HOMEPATH%\whisper`)にいることを確認し、以下のコマンドを実行します。
python small.py
コマンドを実行するとファイル選択ダイアログが表示されるので、文字起こししたい音声ファイルを選択してください(Ctrlキーを押しながらクリックすると複数選択できます)。
Python実行環境について:
- Windows では通常 python コマンドを使用します。(環境によっては Python ランチャーの py コマンドも利用可能です)
- Ubuntu などのLinux環境やmacOSでは python3 コマンドを使用するのが一般的です。
Python 開発環境(Jupyter Qt Console, Jupyter ノートブック (Jupyter Notebook), Jupyter Lab, Nteract, Spyder, PyCharm, PyScripterなど)を利用すると、コードの編集や実行、デバッグがより効率的に行えます。
Python のより詳しい情報: 別ページ »
- 実行結果の確認
ファイル選択後、選択されたファイルの処理が順番に行われ、完了すると各ファイルの文字起こし結果がコマンドプロンプトの画面に出力されます。