wingetを活用したWindows開発・研究環境構築ガイド
【概要】本記事では、Microsoftが提供するコマンドラインパッケージマネージャーwingetを活用し、Windows環境における開発・研究に必要なソフトウェアを効率的にインストールする方法を解説する。
【目次】
- Windowsシステムの基本操作について
- wingetの準備(インストール確認)
- 基本開発ツールのインストール
- C++開発環境の構築
- Python開発環境の構築
- データサイエンス・機械学習ライブラリのインストール
- 主要エディタのインストール
- その他便利なツール・アプリケーション
- パッケージの一括更新
- 参考文献・関連リンク
【サイト内のWindowsセットアップ関連ページ】
- Windows 11インストールガイド: 別ページ »で説明
- Windows システムの基本操作ガイド: 別ページ »で説明
- Windows 11の基本設定、おすすめソフトウェア: 別ページ »で説明
- Windows のまとめ: 別ページ »で説明
- Windows上のLinux開発環境構築ガイド:WSL 2とUbuntuのインストール・設定・運用: 別ページ »で説明
- Windows の種々のソフトウェアのインストール: 別ページ »で説明
【外部リソース】
- Windows 11のディスクイメージのダウンロードのページ: https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows11
- Rufusのページ: https://rufus.ie/ja/
1. Windowsシステムの基本操作について
Windowsシステムの基本操作ガイドを、別ページ »で説明している。
2. wingetの準備(インストール確認)
最近のWindows 10およびWindows 11では、winget(Windows Package Manager)は標準で含まれているため、通常は別途インストールする必要はない。
wingetは、コマンドラインからアプリケーションの検索、インストール、更新、アンインストールを簡単に行えるようにするツールである。
インストールされているか確認するには、コマンドプロンプトまたはPowerShellを開き、以下のコマンドを実行する。
winget --version
バージョン番号が表示されれば、wingetは利用可能である。エラーになる場合や古いバージョンのWindowsを使用している場合は、Microsoft Storeから「アプリ インストーラー」をインストールまたは更新すること。
(参考)Windowsでのwingetのインストール手順(古い環境向け): 別ページ »
3. 基本開発ツールのインストール
3.1 Gitのインストール
管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、以下を実行する。
REM Gitをシステム領域にインストール
winget install --scope machine --id Git.Git -e --silent
REM Gitのパス設定
set "GIT_PATH=C:\Program Files\Git\cmd"
if exist "%GIT_PATH%" (
echo "%PATH%" | find /i "%GIT_PATH%" >nul
if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%GIT_PATH%" /M >nul
)
3.2 CMakeのインストール
管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、以下を実行する。
REM CMakeをシステム領域にインストール
winget install --scope machine --id Kitware.CMake -e --silent
REM CMakeのパス設定
set "CMAKE_PATH=C:\Program Files\CMake\bin"
if exist "%CMAKE_PATH%" (
echo "%PATH%" | find /i "%CMAKE_PATH%" >nul
if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%CMAKE_PATH%" /M >nul
)
3.3 7-Zipのインストール
管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、以下を実行する。
REM 7-Zipをシステム領域にインストール
winget install --scope machine --id 7zip.7zip -e --silent
REM 7-Zipのパス設定
set "SEVENZIP_PATH=C:\Program Files\7-Zip"
if exist "%SEVENZIP_PATH%" (
echo "%PATH%" | find /i "%SEVENZIP_PATH%" >nul
if errorlevel 1 setx PATH "%PATH%;%SEVENZIP_PATH%" /M >nul
)
4. C++開発環境の構築
4.1 Visual Studio Community 2022のインストールと設定
Visual Studio Communityは、Microsoftが提供する無料の統合開発環境(IDE)である。C++、C#、Pythonなど多くの言語に対応し、コードエディタ、デバッガ、ビルドツールなどが統合されている。
【関連する外部ページ】
Visual Studio Communityの公式ページ: https://visualstudio.microsoft.com/ja/vs/community/
Visual Studio Community 2022のインストール手順
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- インストールコマンドの実行
以下のwingetコマンドで、Visual Studio Community 2022本体と、C++デスクトップ開発に必要な基本的なコンポーネントをインストールする。
winget install Microsoft.VisualStudio.2022.Community --scope machine --override "--add Microsoft.VisualStudio.Workload.NativeDesktop --add Microsoft.VisualStudio.ComponentGroup.NativeDesktop.Core --add Microsoft.VisualStudio.Component.VC.Tools.x86.x64 --add Microsoft.VisualStudio.Component.Windows10SDK --includeRecommended" -e winget install Microsoft.VCRedist.2015+.x64 --scope machine -eインストールされる主なコンポーネント
- Microsoft.VisualStudio.Workload.NativeDesktop:C++によるデスクトップ開発ワークロード
- Microsoft.VisualStudio.Component.VC.Tools.x86.x64:C++コンパイラとビルドツール
- Microsoft.VisualStudio.Component.Windows10SDK:Windows向けアプリケーション開発用SDK
- Microsoft.VCRedist.2015+.x64:Visual C++再頒布可能パッケージ
システム要件と注意事項
- 管理者権限でのインストールが必須である。
- 十分なディスク空き容量(数十GB)が必要である。
- インストールには時間がかかり、安定したインターネット接続が必要である。
- インストール完了の確認
インストールされたか確認するには、wingetコマンドを使用する。
winget list Microsoft.VisualStudio.2022.Community
4.2 コンパイラの動作確認
- Visual Studioのx64 Native Tools コマンドプロンプトを起動する。
起動方法:Windowsのスタートメニューで「Visual Studio 2022」フォルダ内の「x64 Native Tools Command Prompt for VS 2022」を探して起動する。
- テキストエディタを起動し、簡単なCプログラムを作成する。ここではホームディレクトリに
hello.cという名前で保存する。cd %HOMEPATH% notepad hello.c
- メモ帳で以下のコードを記述し、保存する。
#include <stdio.h> int main() { printf("Hello, World!\n"); // 64bit環境でコンパイルされているか確認するためsize_tのサイズを表示 printf("sizeof(size_t) = %zu\n", sizeof(size_t)); return 0; } - x64 Native Tools コマンドプロンプトで、以下のコマンドを実行する。
結果として、「Hello, World!」と「sizeof(size_t) = 8」(64bit環境の場合)が表示されれば、C++コンパイラは正しく動作している。
cd %HOMEPATH% cl hello.c .\hello.exe
5. Python開発環境の構築
5.1 Pythonのインストール
① インストールするPythonのバージョンの確認
Pythonのバージョンは、利用したいライブラリ(特にTensorFlowやPyTorchなどの機械学習フレームワーク)がサポートしているかを確認して選択することが重要である。各ライブラリの公式ドキュメントで推奨バージョンを確認すること。
本記事執筆時点では、Python 3.10または3.11が多くのライブラリでサポートされており、安定した選択肢である。常に最新の互換性情報を確認するようにする。
② Pythonのインストール手順
【Pythonのインストールでの注意点】
- 64-bit版をインストールすること。
- インストール場所:wingetで
--scope machineオプションを指定すると、システム全体にインストールされる。 - Path環境変数への追加:インストール後に手動で追加する必要がある場合がある。
- 複数バージョンの共存:
pyランチャーを使うことで、py -3.10 script.pyのように実行するバージョンを切り替えられる。
【手順】
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 次のコマンドを実行して、Python LauncherとPython 3.10をシステム全体にインストールする。
winget install --scope machine --id Python.Launcher -e winget install --scope machine --id Python.Python.3.10 -e --silent reg add "HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\FileSystem" /v LongPathsEnabled /t REG_DWORD /d 1 /fインストール後、新しいコマンドプロンプトを開き、
python --versionやpy --listでインストールされたか確認する。 - Path環境変数への追加確認と設定
新しいコマンドプロンプトで
pythonと入力してPythonインタプリタが起動するか確認すること。起動しない場合は、手動でPathを設定する。管理者権限のPowerShellで以下を実行する。
powershell -Command "$InstallPath = 'C:\Program Files\Python310'; $ScriptsPath = Join-Path $InstallPath 'Scripts'; $EnvPath = [System.Environment]::GetEnvironmentVariable('Path', 'Machine'); if (-not ($EnvPath -split ';' -contains $InstallPath)) { [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('Path', \"$EnvPath;$InstallPath\", 'Machine'); Write-Host \"Pathに$InstallPathを追加しました。\" }; if (-not ($EnvPath -split ';' -contains $ScriptsPath)) { [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('Path', \"$EnvPath;$InstallPath;$ScriptsPath\", 'Machine'); Write-Host \"Pathに$ScriptsPathを追加しました。\" }; Write-Host '新しいプロンプトで有効になります。'"実際のインストールパスを確認してコマンド内の
$InstallPathを修正すること。変更を有効にするには、コマンドプロンプトやPowerShellを新しく開く必要がある。
【関連する外部ページ】
- Python公式サイト:https://www.python.org/
【サイト内の関連ページ】
- Python詳細ガイド:別ページ »
- WindowsでのPython 3.10インストール(wingetを使用しない場合):別ページ »
- WindowsでのAnaconda3のインストール:別ページ »
5.2 pipとsetuptoolsの更新
pipはPythonのパッケージインストーラーである。最新版に保つことが推奨される。
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 次のコマンドを実行して、pipとsetuptoolsを最新版に更新する。
python -m pip install --upgrade pip setuptools
【pipの使い方】
- パッケージのインストール:
python -m pip install パッケージ名 - パッケージのアンインストール:
python -m pip uninstall パッケージ名 - インストール済みパッケージ一覧:
python -m pip list - パッケージの更新:
python -m pip install --upgrade パッケージ名 - 複数バージョンPython利用時:
py -3.10 -m pip install パッケージ名のようにバージョンを指定する。
5.6 仮想環境の利用について
Pythonで開発を行う際、プロジェクトごとに独立した環境(仮想環境)を作成することが強く推奨される。これにより、プロジェクト間で異なるバージョンのライブラリが必要になった場合でも、依存関係の衝突を防ぐことができる。
Python 3.3以降では、標準でvenvモジュールが提供されている。
- 仮想環境の作成
プロジェクト用のディレクトリを作成し、その中で以下のコマンドを実行する。
cd path\to\your\project\directory python -m venv venvこれにより、venvというサブディレクトリが作成され、Pythonインタプリタやライブラリが格納される。
- 仮想環境の有効化(Activate)
作成した仮想環境を使用するには、有効化する必要がある。
コマンドプロンプトの場合:
.\venv\Scripts\activate.batPowerShellの場合:
.\venv\Scripts\Activate.ps1有効化されると、プロンプトの先頭に(venv)のように仮想環境名が表示される。
- 仮想環境の無効化(Deactivate)
仮想環境での作業が終わったら、以下のコマンドで無効化する。
deactivate
本記事の以降のpip installコマンドは、原則として、プロジェクトごとに作成した仮想環境を有効化した状態で実行することを推奨する。
5.3 主要Python開発環境(Jupyter、Spyder等)のインストール
データ分析や科学技術計算でよく使われる対話的な開発環境をインストールする。
- 仮想環境を作成し、有効化する。
- 次のコマンドを実行して、Jupyter Notebook、JupyterLab、Jupyter Console、Spyderなどをインストールする。
python -m pip install jupyterlab notebook jupyter-console spyder matplotlib numpy pandas
5.4 PyCharm Community Editionのインストール
PyCharmはJetBrains社が開発する高機能なPython IDEである。Community Editionは無料で使用できる。
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 次のコマンドを実行する。
winget install --id JetBrains.PyCharm.Community -e
(参考)WindowsでのPyCharmのインストールと設定詳細:別ページ »
5.5 動作確認(Jupyter Qt Console)
インストールした開発環境が起動するか確認する。
- 仮想環境を有効化した状態でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- Jupyter Qt Consoleの起動チェック
次のコマンドを実行し、Jupyter Qt Consoleが起動すれば確認完了である。
jupyter qtconsole
起動したコンソールで、簡単なPythonコードを実行して動作を確認する。
import numpy as np import matplotlib.pyplot as plt %matplotlib inline x = np.linspace(0, 6, 100) plt.plot(x, np.sin(x)) plt.show()
6. データサイエンス・機械学習ライブラリのインストール
6.1 基本ライブラリ(numpy、scikit-learn、matplotlib等)
データ分析や機械学習で頻繁に使用される基本的なライブラリをインストールする。
- 仮想環境を作成し、有効化する。
- 以下のコマンドを実行する。
python -m pip install numpy scipy pandas matplotlib seaborn scikit-learn scikit-image - 簡単な動作確認
Pythonインタプリタを起動し、ライブラリがインポートできるか確認する。
python import numpy as np import sklearn print(f"NumPy version: {np.__version__}") print(f"Scikit-learn version: {sklearn.__version__}") print(np.sin(np.pi / 2)) exit()
6.2 ディープラーニング環境(TensorFlow、PyTorch)
6.2.1 NVIDIA GPU環境設定(GPU利用者向け)
ディープラーニングの計算をNVIDIA GPUで高速化するためには、GPUドライバ、CUDAツールキット、cuDNNライブラリが必要である。CPUのみを使用する場合は、このセクションは不要である。
重要:TensorFlowやPyTorchなどのフレームワークは、特定のバージョンのCUDAおよびcuDNNとの互換性がある。使用するフレームワークのドキュメントで、推奨されるCUDAとcuDNNのバージョンを必ず確認すること。
a. NVIDIAドライバのインストール
NVIDIAドライバは、GPUをOSが認識し、その性能を引き出すための基本ソフトウェアである。
- GPUの確認
搭載されているNVIDIA GPUのモデル名を確認する。コマンドプロンプトで以下を実行する。
wmic path win32_VideoController get name - ドライバのダウンロードとインストール
NVIDIA公式サイトのドライバダウンロードページから、お使いのGPUモデル、OSに適合する最新のドライバをダウンロードし、インストーラの指示に従ってインストールする。
https://www.nvidia.co.jp/Download/index.aspx?lang=jp
(参考)NVIDIAドライバのインストール詳細:別ページ »
b. NVIDIA CUDAツールキットのインストール
NVIDIA CUDAツールキットは、GPUを使った汎用並列計算を行うための開発環境であり、コンパイラ、ライブラリ、APIを含む。
【インストール前の確認・注意点】
- 対応バージョンの確認:使用するTensorFlow/PyTorchが要求するCUDAバージョンを確認すること。
- Visual Studio:CUDAツールキットはC++コンパイラを必要とするため、事前にVisual Studioがインストールされている必要がある。
- CUDAツールキットのダウンロード
NVIDIA公式サイトのCUDA Toolkit Archiveページから、必要なバージョンのインストーラをダウンロードする。
- インストール
ダウンロードしたインストーラを実行し、指示に従う。
- 環境変数の設定
通常、CUDAインストーラによってシステム環境変数
CUDA_PATHやPathが自動的に設定される。設定されない場合は手動で追加する必要がある。 - 動作確認
新しいコマンドプロンプトを開き、以下を実行してCUDAコンパイラのバージョンが表示されるか確認する。
nvcc --version
c. NVIDIA cuDNNのインストール
NVIDIA cuDNNは、畳み込みニューラルネットワークなどのディープラーニング演算をCUDA上で高速化するためのライブラリである。
【インストール前の確認・注意点】
- 対応バージョンの確認:使用するTensorFlow/PyTorchが要求するcuDNNバージョンを確認すること。
- NVIDIA Developer Program:cuDNNのダウンロードには、NVIDIA Developer Programへの無料登録が必要である。
- zlib DLLの依存関係:新しいバージョンのcuDNNは、zlibwapi.dllというファイルに依存している。事前にzlibをインストールしておく必要がある。
- (依存関係)zlibのインストール
管理者権限でx64 Native Tools コマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行する。
cd %HOMEPATH% rmdir /s /q zlib git clone https://github.com/madler/zlib.git cd zlib mkdir build && cd build cmake .. -G "Visual Studio 17 2022" -A x64 -DCMAKE_INSTALL_PREFIX=C:\zlib cmake --build . --config Release --target INSTALLインストールしたzlibのDLLにPathを通す。管理者権限のPowerShellで以下を実行する。
powershell -Command "$EnvPath = [System.Environment]::GetEnvironmentVariable('Path', 'Machine'); $NewPath = 'C:\zlib\bin'; if (-not ($EnvPath -split ';' -contains $NewPath)) { [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('Path', \"$EnvPath;$NewPath\", 'Machine'); Write-Host 'Pathに C:\zlib\bin を追加しました。' }" - cuDNNのダウンロード
NVIDIA cuDNNのダウンロードページにアクセスし、インストール済みのCUDAツールキットのバージョンに適合するcuDNNライブラリのZipファイルをダウンロードする。
- cuDNNファイルの配置
ダウンロードしたcuDNNのZipファイルを展開し、展開したフォルダ内のbin、include、libの中身を、CUDAツールキットのインストールディレクトリにある同名のフォルダにそれぞれコピーする。
- 動作確認
where cudnn64_8.dllを実行して、CUDAのbinディレクトリ内のDLLが見つかるか確認する。where cudnn64_8.dll
6.2.2 TensorFlowのインストールと確認
TensorFlowはGoogleが開発した広く使われている機械学習・ディープラーニングフレームワークである。
- 仮想環境を作成し、有効化する。
- 既存のTensorFlowパッケージのアンインストール
python -m pip uninstall -y tensorflow tensorflow-cpu tensorflow-gpu tensorflow-estimator keras - TensorFlowのインストール
python -m pip install tensorflow==2.10.1
- バージョン確認
python -c "import tensorflow as tf; print(tf.__version__)"
- GPU認識確認(GPU利用時)
python -c "import tensorflow as tf; print(tf.config.list_physical_devices('GPU'))"実行結果に
PhysicalDevice(name='/physical_device:GPU:0', device_type='GPU')のような表示があれば、GPUが認識されている。
6.2.3 PyTorchのインストールと確認
PyTorchはFacebook(Meta)が開発を主導する、もう一つの主要なディープラーニングフレームワークである。
重要:PyTorchのインストールコマンドは、OS、パッケージマネージャ、Pythonバージョン、そして使用するCUDAバージョンによって異なる。PyTorch公式サイトで、自分の環境に合ったインストールコマンドを確認することが不可欠である。
- 仮想環境を作成し、有効化する。
- PyTorch公式サイトでコマンドを確認
上記のPyTorch公式サイトにアクセスし、「Get Started」セクションで環境に合った設定を選択する。
- 表示されたコマンドを実行
公式サイトで表示されたコマンドをコピーし、実行する。以下はCUDA 11.8環境向けの例である。
python -m pip install torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu118 - バージョン確認とGPU認識確認
python import torch print(f"PyTorch version: {torch.__version__}") print(f"CUDA available: {torch.cuda.is_available()}") if torch.cuda.is_available(): print(f"CUDA version: {torch.version.cuda}") print(f"GPU count: {torch.cuda.device_count()}") print(f"GPU name: {torch.cuda.get_device_name(0)}") exit()
- 動作確認
python import torch x = torch.rand(5, 3) print("Random tensor:") print(x) if torch.cuda.is_available(): device = torch.device("cuda") y = torch.ones_like(x, device=device) x = x.to(device) z = x + y print("\nTensor on GPU:") print(z) exit()
6.3 ディープラーニング応用ライブラリ
顔認識、姿勢推定、物体検出など、特定の応用に使用されるライブラリのインストール例である。必要に応じてインストールすること。
6.3.1 dlib(顔検出、ランドマーク、認識など)
DlibはC++で書かれた機械学習ライブラリで、顔検出、顔ランドマーク推定、顔認識、物体検出など幅広い機能を提供する。
【関連する外部ページ】
- Dlib公式サイト:http://dlib.net/
【インストール手順】
- 依存関係のインストール
- Visual Studio(C++デスクトップ開発ワークロード)
- CMake
- (GPUサポートを有効にする場合)CUDAツールキットとcuDNN
- pipでのインストール
仮想環境を作成し、有効化する。
python -m pip install dlib - モデルファイルのダウンロード
cd C:\path\to\your\project\models curl -O http://dlib.net/files/mmod_human_face_detector.dat.bz2 curl -O http://dlib.net/files/shape_predictor_68_face_landmarks.dat.bz2 7z x mmod_human_face_detector.dat.bz2 7z x shape_predictor_68_face_landmarks.dat.bz2 del *.bz2 - 動作確認
6.3.2 OpenPose(姿勢推定)
OpenPoseは、画像や動画から複数人の体、顔、手のキーポイントを検出できるライブラリである。
【インストール手順】
OpenPoseはビルドが複雑なため、公式が配布しているWindows向けビルド済みバイナリを利用するのが簡単である。
- OpenPose Releasesページから、お使いの環境に合った最新のビルド済みパッケージをダウンロードする。
https://github.com/CMU-Perceptual-Computing-Lab/openpose/releases
- ダウンロードしたZipファイルを任意の場所に展開する。
- 展開したフォルダ内で、
models/getModels.batスクリプトを実行し、必要な学習済みモデルをダウンロードする。 - 動作確認
cd C:\openpose .\bin\OpenPoseDemo.exe --video .\examples\media\video.avi
(参考)WindowsでのOpenPoseインストール詳細:別ページ »
6.3.3 Tesseract OCR(文字認識)
Tesseract OCRは、Googleが開発を支援しているオープンソースのOCRエンジンである。
【インストール手順】
- Tesseract本体のインストール
https://github.com/UB-Mannheim/tesseract/wikiから最新のインストーラをダウンロードし、実行する。インストール時に必要な言語データを選択すること。
- Path環境変数の設定
管理者権限のPowerShellで以下を実行する。
powershell -Command "$EnvPath = [System.Environment]::GetEnvironmentVariable('Path', 'Machine'); $NewPath = 'C:\Program Files\Tesseract-OCR'; if (-not ($EnvPath -split ';' -contains $NewPath)) { [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('Path', \"$EnvPath;$NewPath\", 'Machine') }" - Pythonラッパーのインストール
仮想環境を作成し、有効化する。
python -m pip install pytesseract Pillow - 動作確認
新しいコマンドプロンプトでtesseract --versionを実行してバージョンが表示されるか確認する。
(参考)WindowsでのTesseract OCR 5.xインストール詳細:別ページ »
6.3.4 Gymnasium(旧OpenAI Gym)(強化学習環境)
Gymnasiumは、強化学習アルゴリズムを開発・比較するためのツールキットである。
【インストール手順】
- 仮想環境を作成し、有効化する。
- pipでインストールする。
python -m pip install gymnasium - 動作確認
python import gymnasium as gym env = gym.make("CartPole-v1", render_mode="human") observation, info = env.reset() for _ in range(100): action = env.action_space.sample() observation, reward, terminated, truncated, info = env.step(action) if terminated or truncated: observation, info = env.reset() env.close() exit()
7. 主要エディタのインストール
7.1 Visual Studio Code、Notepad++、Geany、Sublime Text
プログラミングや設定ファイルの編集に便利なテキストエディタをwingetでインストールする。
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 以下のコマンドから、必要なエディタを選択して実行する。
winget install --scope machine --id Microsoft.VisualStudioCode -e winget install --id Notepad++.Notepad++ -e winget install --id Geany.Geany -e winget install --id SublimeHQ.SublimeText.4 -e
7.2 VS CodeのPython連携と拡張機能例
Visual Studio Codeは、豊富な拡張機能により、多くのプログラミング言語に対応できる高機能エディタである。
- Python拡張機能のインストール:VS Codeを起動し、左側の拡張機能ビューで「Python(ms-python.python)」を検索してインストールする。
- Pythonインタプリタの選択:複数のPython環境がある場合、VS Codeの右下ステータスバーまたはコマンドパレットから「Python: Select Interpreter」を選び、使用するPython環境を選択する。
- ファイルの保存:Pythonファイルは拡張子.pyを付けて保存する。
VS Codeの便利な拡張機能(例)
- Japanese Language Pack for Visual Studio Code:UIを日本語化する。
- Python:Python開発サポート
- Pylance:高機能なPython言語サーバー
- Black Formatter:Pythonコードフォーマッター
- Jupyter:VS Code内でJupyter Notebookを編集・実行する。
- GitLens:Git連携機能強化
8. その他便利なツール・アプリケーション
8.1 ユーティリティ
Windowsでの開発や日常作業を便利にするツールをインストールする。
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 以下のコマンドから、必要なものを選択して実行する。
winget install --id Microsoft.WindowsTerminal -e winget install --id PaddyXu.QuickLook -e winget install --id Google.EarthPro -e winget install --id voidtools.Everything -e
8.2 データベース(PostgreSQL、DBeaver)
リレーショナルデータベースPostgreSQLと、多くのデータベースに対応したGUIクライアントDBeaverをインストールする。
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- PostgreSQLとDBeaver Community Editionをインストールする。
winget install --id PostgreSQL.PostgreSQL -e winget install --id DBeaver.DBeaverCommunity -e - PostgreSQLの初期設定とPath設定
PostgreSQLインストール後、初期設定が必要になる場合がある。psqlなどのコマンドラインツールを使用するためにPathを設定する。管理者権限のPowerShellで以下を実行する。
powershell -Command "$PgPath = 'C:\Program Files\PostgreSQL\16\bin'; $EnvPath = [System.Environment]::GetEnvironmentVariable('Path', 'Machine'); if (-not ($EnvPath -split ';' -contains $PgPath)) { [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('Path', \"$EnvPath;$PgPath\", 'Machine') }"新しいコマンドプロンプトでpsql --versionを実行して確認する。
8.3 画像・動画・音声関連
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 以下のコマンドから、必要なものを選択して実行する。
winget install --id ImageMagick.ImageMagick -e winget install --id VideoLAN.VLC -e winget install --id Audacity.Audacity -e winget install --id OBSProject.OBSStudio -e
8.4 ゲーム・3D関連
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 以下のコマンドから、必要なものを選択して実行する。
winget install --id EpicGames.EpicGamesLauncher -e winget install --id BlenderFoundation.Blender -e winget install --id ISTI-CNR.MeshLab -e
8.5 Java開発環境
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- OpenJDKをインストールする。
winget install --id Microsoft.OpenJDK.17 -e - JAVA_HOMEとPathの設定確認
新しいコマンドプロンプトを開き、以下を実行して確認する。
java --version echo %JAVA_HOME%コマンドが認識されない場合は、手動で設定する。管理者権限のPowerShellで以下を実行する。
powershell -Command "$JavaPath = 'C:\Program Files\Microsoft\jdk-17.0.8.1'; [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('JAVA_HOME', $JavaPath, 'Machine'); $EnvPath = [System.Environment]::GetEnvironmentVariable('Path', 'Machine'); $JavaBinPath = Join-Path $JavaPath 'bin'; if (-not ($EnvPath -split ';' -contains $JavaBinPath)) { [System.Environment]::SetEnvironmentVariable('Path', \"$EnvPath;$JavaBinPath\", 'Machine') }"
8.6 R環境
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- R本体をインストールする。
winget install --id RProject.R -e - 動作確認
新しいコマンドプロンプトでR --versionを実行してバージョンが表示されるか確認する。
8.7 Android開発
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- Android Studioをインストールする。
winget install --id Google.AndroidStudio -e - 初期セットアップ
Android Studioを初めて起動すると、セットアップウィザードが開始される。指示に従って、必要なSDKコンポーネントやエミュレータなどをダウンロード・設定すること。
9. パッケージの一括更新
wingetでインストールしたパッケージは、以下のコマンドで一括して更新できる。
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows Terminalを開く。
- 更新可能なパッケージを確認する。
winget upgrade - 全てのパッケージを更新する。
winget upgrade --all注意:
--allオプションは便利であるが、意図しないバージョンの互換性の問題を引き起こす可能性もある。重要なソフトウェアについては、更新前に変更内容を確認するか、個別にwinget upgrade パッケージIDで更新することをお勧めする。
10. 参考文献・関連リンク
- winget documentation: https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/package-manager/winget/
- Visual Studio documentation: https://learn.microsoft.com/ja-jp/visualstudio/windows/
- Python documentation: https://docs.python.org/ja/3/
- NVIDIA CUDA documentation: https://docs.nvidia.com/cuda/index.html
- TensorFlow documentation: https://www.tensorflow.org/overview
- PyTorch documentation: https://pytorch.org/docs/stable/index.html